映画『こどもかいぎ』とは
子どもに限らず、大人にも起こる日々のちょっとしたすれ違いやケンカ。そこにはもしかしたら「対話」が足りないのかもしれません。映画『こどもかいぎ』は、人とのつながりが重要な現代社会で、「子どもたちの声に耳を傾け、子どもたちの目線で世界を見ることが、社会が抱える課題を解決するヒントになるのではないか?」、そう考えた豪田トモ監督による注目のドキュメンタリー最新作です。約4年にわたる歳月を経てできあがった、対話を通して子どもたちの「本音」を聴くことができるこちらの映画。保育現場を追ったドキュメンタリー作品としても、とても興味深い作品です。保育園の中で繰り広げられている「こどもかいぎ」の様子はどんなものなのか? 保育士目線でレポートします。
保育士が見た『こどもかいぎ』

答えを出さない「こどもかいぎ」
「こどもかいぎ」は、ひとりの保育士と5~6人の子どもたちが輪になり、その日のテーマについて思うままに話します。テーマは何でもOK。作品中では、子どもたちから出る素直な疑問を受け止め、そこから更にテーマを広げながら“かいぎ”が進められていきます。途中、集中力が切れて遊び始めたり、お友だちが話していても聴いていなかったり…そんな子どもらしい姿も見られます。しかし、一度スイッチが入ると子どもたちは大人顔負けの集中力を発揮。
「なんで生まれてきたの?」
「なんで雨って降るの?」
「死ぬってどういうこと?」
大人になると「当たり前」のように感じている身の回りのさまざまなことに対して、子どもたちの素直な考えが飛び交います。子どもらしい可愛い意見が出たかと思えば、大人が思わずハッとするような一言が出ることも。
「こどもかいぎ」は、子どもたち同士が対話をするだけでなく、大人である保育士が子どもたちの心に普段どれだけ向き合えているのかを知る場であるのかもしれませんね。
【こどもかいぎのルール】
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「こどもかいぎ」だから言える子どもの本音

「笑って許すの」
大人になると、簡単なことほど難しくなってしまうこともありますが、子どもたちの純粋でまっすぐな気持ちに胸が熱くなりました。
ある “かいぎ” では、アンリちゃんという女の子から、お友だちのミチカちゃんに対して「ミチカちゃんに怒られることが嫌だ」という率直な意見が出ました。そのときのアンリちゃんの表情から、きっと初めてこの不満を口にしたのだろうと感じられました。
アンリちゃんのこの不満は、保育士のユミコ先生がしっかりと受け止めてくれます。そしてアンリちゃんは不満だけでなく、「ミチカちゃんのこんなところが好き」という気持ちも話してくれます。
このアンリちゃんの言葉からは、「ここが嫌いだからあの子は嫌い」ではなく、人間関係の中で相手の良いところも見つけながら向き合っていくことの大切さを学ばせてもらいました。大人顔負けの深い考え方に驚かされるばかり。学びがたくさん詰まった作品です。
「ピーステーブル」でぶつかり合う

「なにが嫌だったのか」「どう感じたのか」「それを聞いてどう思うのか」など、子ども同士の本音が次々と飛び出します。そこでは、必ずしもお互いが納得して仲直り、というような解決が用意されているわけではありません。
しかし子どもたちは、自分の本音を伝えてぶつかり合うことを経て、いつの間にかまた一緒に遊んでいるのです。作中の解説では、「解決そのものではなく、そこに向かうまでのプロセスを大切にしている」という話も。
大人になるとなかなか「相手に本音を伝える」ということができなくなることもありますよね。対話することの重要性や、それによる人間関係のあり方を、改めて子どもたちに教えてもらったような気持ちになりました。
監督と「おとなかいぎ」開催!
今回の映画試写会後に、豪田監督と参加者による特別プログラムである「おとなかいぎ」が開催されました! 実際に参加者で円を作り、こどもかいぎ同様、「これから『おとなかいぎ』を始めます。よろしくお願いします」の挨拶でスタート。発言をするときは挙手をする…といった徹底ぶりで、映画に関する感想などを話し合いました。そこでは映画の制作について、豪田監督からこのようなお話も。
「数年前、新型コロナウイルスが流行したとき、映画館が潰れてしまったり緊急事態宣言で誰も映画館に来なくなってしまったりしました。そのとき、『僕らがつくる映画は求められていないんじゃないか』と思い、すでに編集は7割ほど進んでいましたがお蔵入りにしようとしていたんです」
お蔵入り寸前だったという『こどもかいぎ』ですが、どのようなきっかけで公開まで漕ぎつけられたのでしょうか? その理由は、豪田監督のお子さんの様子だったそうです。

その様子を見たときに、『この子たちは絶対に何か言いたいことがあるはずだ』と思ったんです。運動会も中止になって、遠足にも行けなくなって、お昼ご飯も黙って食べて。子どもたちは何か我慢をしているのではないかと。
そして、僕ら大人たちはそんな子どもたちの不安や不満を、ちゃんと受け止めているのかなと思いました。そのときに、やっぱりこの映画を作らなきゃいけないと決めたんです。この映画を通して、大人が子どもたちの話を聞こうと思ってもらえればいいなと」
新型コロナウイルスの流行をきっかけに完成まで駆け抜けられた『こどもかいぎ』には、監督の「子どもの声を聞きたい」という想いが詰まっています。我慢も多いこのご時世ですが、そのとき子どもたちは何を感じているのか? そんなことを対話して受け止めていくだけでも、何か変わるかもしれないと思えるお話しでした。
企画・監督・脚本:豪田トモ
命と家族をテーマとしたドキュメンタリー映画『うまれる』(2010 年/ナレーション=つるの剛士)、『ずっと、いっしょ』( 2014 年/ナレーション=樹木希林)(文部科学省選定・厚生労働省社会保障審議会特別推薦)、『ママをやめてもいいですか!?』( 2020 年/ナレーション=大泉洋)は累計 100 万人以上を動員。ともに DVD を好評販売中。 2019 年に初の小説『オネエ産婦人科』(サンマーク出版)を刊行。1児の父。
子どもの「声」を聴きたくなるおすすめ映画!

そんなときにこそ、ゆっくりと子どもと向き合うことが必要。一度対話をする時間を設けてみませんか?
映画『こどもかいぎ』は、2022年7月22日(金)よりシネスイッチ銀座ほか全国順次公開です。ぜひチェックしてみてくださいね。
映画概要

企画・監督・撮影:豪田トモ
ナレーション:糸井重里
音楽:「ビューティフル・ネーム」ゴダイゴ
推薦:厚生労働省
後援:内閣府 / 日本保育協会 / 公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン
2022年/ドキュメンタリー/88 分/カラー/ビスタ/ステレオ
配給:AMG エンタテイメント
https://www.umareru.jp/kodomokaigi/
関連イベント開催!

「日本中で子どもの発言・対話の機会を作っていきたい」
この想いを実現するきっかけとするため、新作映画『こどもかいぎ』の公開に先駆けて、記念すべき「第一回『こどもかいぎ』フォーラム」が開催されます。豪田トモ監督がファシリテーターとなり、こども政策担当大臣/衆議院議員の野田聖子さん、俳優のつるの剛士さん、玉川大学教育学部 教授の大豆生田啓友さんを迎えて開かれる『おとなかいぎ』など、興味深いプログラムが予定されています。興味のある方はチェックしてみてくださいね。
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