保育士等キャリアアップ研修とは
「保育士等キャリアアップ研修」は、2017年(平成29年)4月1日に厚生労働省が定めた「保育士等キャリアアップ研修ガイドライン」に基づく制度です。保育現場でリーダー的役割を担う人材を育成するため、研修の受講を条件として新たに「副主任保育士」「専門リーダー」「職務分野別リーダー」の役職が設置されました。
所定の研修を修了し、要件を満たすことで「処遇改善等加算Ⅱ」の対象者となり、役職によって月5千円~最大4万円の手当が支給されます。 これまで、保育施設の役職は概ね園長・主任に限られていました。役職に就任できるのはほんの数名程度。その他の保育士は、任される仕事や責任は年々増えるものの、役職がつかないため給与の大幅アップは期待できません。
こうした状況は保育士のモチベーションの低下と共に早期離職にもつながり、保育園は常に保育士不足に悩まされることになりました。
今回の制度導入によりキャリアの選択肢が大きく広がり、それに見合った手当も支給されることで、若手や中堅保育士の定着と専門性の向上につながることが期待されています。
保育士等キャリアアップ研修の内容
キャリアアップ研修は6つの専門分野別研修と、「マネジメント研修」および「保育実践研修」で構成されています。各分野の研修時間は15時間以上と定められており、講義の受講およびレポートの提出が必要です。研修を修了すると、全国で有効な修了証が発行されます。
研修分野
研修分野と内容を簡単に見ていきましょう。研修分野 | 研修内容(概要) |
---|---|
①乳児保育 | 0~3歳未満児への適切な保育や実践方法 |
②幼児保育 | 3歳以上児への適切な保育や幼児教育の実践方法 |
③障害児保育 | 障害児保育への理解と適切な保育の実践方法 |
④食育・アレルギー対応 | 食育、アレルギーへの理解および実践方法 |
⑤保健衛生・安全対策 | 保健衛生、安全管理への理解および実践方法 |
⑥保護者支援・子育て支援 | 保護者支援・子育て支援への理解および実践方法 |
マネジメント研修 | 組織運営の理解、マネジメント・リーダーシップの実践方法 |
保育実践(※) | 主体的な保育を展開するための知識および実践技術 |
研修を何個受けるのかは、目指す役職によって異なります。
- 副主任保育士・・・①~⑥のうち3つ以上+マネジメント研修
- 専門リーダー・・・①~⑥のうち4つ以上
- 職務分野別リーダー・・・①~⑥のうち1つ以上(自分が担当する分野)
参考資料:保育士等キャリアアップ研修の実施について/厚生労働省
研修対象者と要件
研修に適する保育経験年数の目安は、副主任保育士・専門リーダーは概ね7年以上、職務分野別リーダーは概ね3年以上とされています。あくまでも目安ですので、保育施設の人員状況によっては3年未満の方でも受講は可能です。勤務先の指示に従いましょう。
役職に就任するための要件はこちらです。
役職名 | 要件 | |
---|---|---|
副主任保育士 | ・職務分野別リーダーの経験 ・3つ以上の分野+マネジメント研修を修了 |
保育施設から任命を受けること |
専門リーダー | ・職務分野別リーダーの経験 ・4つ以上の分野を修了 |
|
職務分野別リーダー | ・1つ以上の分野を修了 |
研修を修了すれば誰でも役職に就任できるわけではありません。園から任命を受ける必要がありますので、注意しましょう。
研修の実施主体
各都道府県または各都道府県の指定研修機関が実施します。研修形式
各都道府県や指定研修機関により形式はさまざまですが、近年はeラーニングやZoomのオンライン形式が主流となっています。【例】
- eラーニング12時間(動画視聴)+Zoomオンライン3時間(演習やワーク)
【例】
- 対面型研修(7.5時間)×2日間
研修受講料
各都道府県が定める「受講料免除者」に該当すれば無料で受講できます。指定研修機関を利用する場合は、無料~数万円と差があります。各都道府県の公式サイトから確認しましょう。
【東京都の例】丸がついている施設で働く保育士は受講料が免除される ※出典:東京都保育士等キャリアアップ研修/東京都
手当はいくら加算される?
キャリアアップ研修を修了し、要件を満たすと毎月5千円~最大4万円の処遇改善手当が支給されます。ただし、国から保育施設へ一律に支給されたのちに分配されるため、各保育施設によって支給金額が異なる部分があります。
役職名 | 処遇改善手当(月額) | 支給に関する規定 |
---|---|---|
副主任保育士 | 最大4万円 | 全額支給は最低1名以上 |
専門リーダー | ||
職務分野別リーダー | 5千円以上 | 対象者全員に全額支給 |
副主任保育士・専門リーダー
役職の対象者は、園長・主任を除く職員のうち概ね1/3の割合と定められています。対象者のうち、月額4万円全額支給が確定しているは1名のみです。残りの対象者への配分は保育施設に一任されています(5千円以上4万円未満)。
職務分野別リーダー
役職の対象者は、園長・主任を除く職員のうち概ね1/5の割合となります。対象者すべてに毎月5千円以上が支給されます。具体的に毎月いくら支給されるのかは、勤務先の保育施設に確認しましょう。
※参考資料:「技能・経験に応じた保育士等の処遇改善について」「令和2年度における処遇改善等加算の運用の改善」/内閣府
保育士等キャリアアップ研修を受講するメリット
キャリアアップ研修は、演習やディスカッション、事例をもとにしたワークなど、受講者が主体的に学べる構成となっています。楽しみながら保育の知識や実践方法を学べるため、得た知識や技術を現場ですぐに活かせる点がメリットです。
役職を得るので責任も大きくなりますが、その分しっかり手当も受け取れるので、やりがいも感じられるでしょう。
研修の修了証は効力がなくなることはありません。産休や育休で長いブランクが空いても、専門性を証明する手立てとして有効に活用できるのも嬉しいポイントです。
研修の申込み方法
各都道府県や指定研修機関の公式サイトから申し込みが可能です。すでにキャリアアップ研修を推進している保育施設では、該当者に受講の指示があります。指定された申し込み方法で手続きを行いましょう。
個人での申し込みもできますが、園を通すことで研修時間が勤務時間とみなされ、交通費や受講料・テキスト代などが支給されることもあります。
まずは、勤務している保育施設に確認してみてくださいね。
研修でキャリア形成を
保育士等キャリアアップ研修制度は、保育士のキャリア形成や待遇アップのためには欠かせない制度です。チャンスがあるなら積極的に挑戦していきましょう。新卒や経験の浅い保育士さんも、将来的な目標として考えておくとキャリアプランが明確になりますよ。【関連記事】