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海外の保育園の“ドキュメンテーション”を見せて!【ドイツの保育園からレポート】

ドイツの保育園の「ポートフォリオ」
<ほいくis特別企画>海外の保育現場からリアルなレポートをお届けします。今回はドイツ編(3回目)です。>>前回の記事はこちら

今回のテーマ<子どもたちの成長記録>

保育園や幼稚園で、毎日全力で遊び・学び・ものすごいスピードで成長している子どもたち。日本では、子どもたちの成長を記録する手法として「ドキュメンテーション」が有名だと思います。

今回はドキュメンテーションとはまた違った、ドイツの園で取り入れている「ポートフォリオ」というものをご紹介したいと思います。



ドイツの保育園の「ポートフォリオ」って?

ポートフォリオは、保育者によって写真+テキストでまとめられた子どもの成長記録のことです。

子ども一人ひとりのファイルを作り(写真下)、保育者はテーマごとに成長記録を作成していきます。
園児ごとの記録をまとめたファイル

どんな風に記録するの?

保育者は、日々の活動の中でその子の成長や学びを感じた瞬間にその都度撮影。月末に1ヶ月分のポートフォリオ用の写真を選定、印刷し、記録に取り掛かります。わたしの園では、ポートフォリオを記録するための時間が毎日30分設けられています。
子どもの写真と行動を記録したメモをファイリングしたページ
(写真上)たとえば、このページには女の子の慣らし保育の様子が記録されています。

写真には、女の子がボタンを缶の穴に落とす遊びに夢中になっている様子が映されています。

そして、保育者からは、こんなコメントを書いています。

「慣らし保育の最初の2日間は、パパが安全基地として〇〇君に付き添いました。〇〇君は初めて見る保育園のお部屋、他の子どもたちや先生に興味津々。ハイハイで自ら動き回り、おもちゃを探しました。なかでも、ボタンを缶の穴に落とす遊びが一番のお気に入りでした」

「ポートフォリオ」をまとめるコツ

この「ポートフォリオ」は、ドイツ全体で決められた様式や作成時の細かいルールはなく、園によってデザインやテーマはさまざまです。

私の園では以下のように、成長・学びのテーマを分けて、ポートフォリオを作っています。
ポートフォリオのテーマ 
  • 慣らし保育
  • 毎日の生活と自立
  • 全身の運動
  • 手指の運動
  • 友達関係
  • お祝いとお祭り
  • 作品
ドイツ語で「園での最初の数日間~慣らし保育~」と書かれたページ
(写真上)たとえば先程紹介したページは「園での最初の数日間~慣らし保育~」のテーマに分類され、ポートフォリオの1ページとしてファイリングされます。

写真に添える文章のポイント

写真に添える文章で気を付けているポイントは、ズバリ「評価は一切入れず、事実だけを記録する」こと。

例えばこちらのページ。
女の子の写真と行動を記録したメモをファイリングしたページ
写真は「ある女の子が徐々に着替えに興味を持ち出し、自分でズボンを脱ごうと挑戦している瞬間を映したもの」です。

保育者のコメントは女の子が主語で記されています。

「最近、君は自分で着替えることに興味を見せ始めました。靴下とズボンは一人で脱げることが多いですが、その他の着脱はまだ助けが必要です」と書いてあります。

保育者の評価は入れずに、事実だけを書いていることに気づきましたでしょうか?

「一人で、上手にズボンが履けていたよ」と書きたくなるところですが、「上手に」「きれいに」など、子どもを評価する言葉は使わないことが大事なポイント。

その子がどのような様子で・どんな行動をして・どんな反応を見せたのかなど、事実のみを学びの記録として、記していきます。

「ポートフォリオ」の作成分担は?

ポートフォリオの作成は、担当制にしている園が多いようです。

私のクラスには、10人の子どもがいるのでクラス担任の保育者3名で分担し、保育者一人あたり3〜4人の子どもを受け持ってポートフォリオを作成しています。

保育者の担当制にするメリット

保育者一人あたり3〜4人の担当制にすることで、役割分担が明確になり保育者同士のミスコミュニケーションが減ると感じます。

また、ポートフォリオの各ページのデザインの統一感が生まれるので、見栄えもよくなりますね!



保護者への「ポートフォリオ」の共有方法

保育者が日々作成したポートフォリオは、どのように保護者に共有するのか?

このポートフォリオは普段活動する保育室の棚に保管されており、子どもや保護者から要望があれば、いつでも見せることができます。

子どもへの共有

実際、子どもたちは自分や他の子どもの写真を見ることが大好き。まだ文字が読めなくても、自分の写真を見ることで自身の成長に気づき、感じることにも繋がります。

そして、自分と他の子どもが一緒に写っている写真を見たり、自分のポートフォリオと他の子のポートフォリオを見たり、それを通して保育者や他の子どもと話をすることは自他の区別の芽生えにも繋がると考えています。
自分のドキュメンテーションの冊子を読む男の子

保護者への共有

そして、保護者はポートフォリオを見て、保育園で自分の子がどのような経験・学びをしているのかを知ることができるのがメリットです。園での子どもの様子が写真付きで分かることで、家庭での子どもの援助、日々の生活のヒントを得てくれているように感じます。


このポートフォリオは、その子が保育園を卒園する時に園からのプレゼントとして家庭へ贈っています。

「ポートフォリオ」と「ドキュメンテーション」の違い

今回紹介したドイツの「ポートフォリオ」。日本では「ドキュメンテーション」の方が幅広く使われているかと思います。

この違いを、最後に考えてみたいと思います。

日本のドキュメンテーションは?

写真とテキストを使って、クラス単位で作成されることが多いかと思います。

ドイツのポートフォリオは?

写真とテキストを使うという点は共通していますが、子ども一人ひとりの記録という点が特徴です。

ドイツのお国柄や文化から、下記のような3つの要素が影響しあって‟子ども一人ひとりの記録”という形が主流になっているのではないかと思っています。
  • ドイツの園では、クラス全体で同じ活動をする時間が圧倒的に少ない
  • 1~2歳は集団よりは自分という個を育てる発達時期と捉えていること
  • ドイツの「個人主義」の文化
作成している私たち保育者も、日々の自分の保育を‟子ども一人ひとり”の単位で振り返ることができ、子どもを見る観察力の向上にも繋がっていると感じます。

これからも、子どもの身体的・内面的成長、学びを丁寧に観察・考察する着眼点を磨き続けていきたいです。

そして、保護者がポートフォリオを見た際に、子どもの成長・学びの軌跡が分かりやすく、見やすい記録の仕方をこれからも学んでいきたいと思います。
<ドイツからのレポート担当:うらら先生>
ドイツの保育園の様子をレポートしたうらら先生
日本国内の認可保育園にて約2年間勤務後、2019年に「オペア留学制度」を使ってドイツへ。1年の留学生活の後、2021年春よりドイツの大学付属の保育園で、まずは研修生として勤務スタート。研修、レポート提出を経て日本の保育士免許をドイツの保育士免許に書き換えが完了。現在は0~2歳クラスを担当する現役保育士。
▼ブログでもドイツの保育・留学・資格取得について発信中
https://odenhatamagoha.com/prof

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