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4つのポイントから見る「保育の今」|【新企画】保育をアップデート

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保育をアップデート、3月のテーマは、「保育の今」。そもそも保育とは何なのか、制度の変更や問題点につながるポイントを整理し、「保育の今」の姿についてキャッチアップしていきましょう。 

保育所における保育とは 

全ての子どもの最善の利益を守る
保育士の方であれば、資格取得の際勉強したことですし、実際に日々行っていることと思いますが、今一度ふりかえってみましょう。そもそも保育所における保育に求められるものとはなんでしょうか? 
 
厚生労働省が発表している「保育所保育指針」によると”保育所における保育”とは、全ての子どもの最善の利益のため、保育所保育指針に基づきながら行われるものであり、「各保育所は、この指針において規定される保育の内容に係る基本原則に関する事項等を踏まえ、各保育所の実情に応じて創意工夫を図り、保育所の機能及び質の向上に努めなければならない。」とあります。 
 
つまり、園によって方針は違えど、全ての子どもの最善の利益のため、国が定めた原則・指針に基づいて機能と質を向上していく姿勢が求められています。  

保育に求められるものが変化してきている 

こういった原則のもと、今の保育に求められているものは、制度的にも、世の中的にも、預ける保護者的にも大きく変わってきています。徐々に変わるものもあれば、制度として大きく変わることもあり、アンテナを常に張っていないとその変化に気づかないこともあります。 
 
今回は変わりゆく「保育の今」をさまざまな角度からご紹介します。 

 4つのポイントから見る「保育の今」

制度的な「保育の今」:保育所保育指針の改定 

保育所保育指針は、1965年(昭和40年)に制定され、直近では2018年(平成30年)4月1日に最新の指針が施行されています。保育所保育の基本的な考え方や内容を示したガイドラインですが、そもそも指針自体の理解が不十分であったり、例えばベテランの先生で、最新の内容にアップデートできていない人がいたりするのも、保育士間の意識のギャップにつながっているようです。 

大きな変更点としては以下の5つです。保育所保育士指針解説に詳しく載っていますのでこの機会に再確認しておくといいですね。 

(1)乳児・1歳以上3歳未満児の保育に関する記載の充実  
(2)保育所保育における幼児教育の積極的な位置づけ  
(3)子どもの育ちをめぐる環境の変化を踏まえた健康及び安全の記載の見直し  
(4)保護者・家庭及び地域と連携した子育て支援の必要性 
(5)職員の資質・専門性の向上 

 
>保育所保育指針解説 
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000202211.pdf  
 
大きくまとめると保育所が、今までは保育に欠ける子どもを預かる場所から、理由を問わず保育が必要な子どもを預かる場所へ福祉施設から重要な幼児教育の場所へと変化し、その役割も健康・安全対策から子育て支援までと幅広くなりました。職員のスキルアップも推奨され、保育の質や専門性向上のため研修制度の強化も追加されました。 
 
年間指導計画などを立てる際に改めて見直してみるのもいいですね。  

 保育ICTに見る「保育の今」:押し寄せるデジタル化の波 

ICTシステムを使う保育士
みなさんの園でも、園児管理や職員の勤怠管理といった、保育関連業務をサポートするシステムを取り入れているところが多いのではないでしょうか? 
 
一般企業と同様に、保育園でも「保育ICTシステム」と呼ばれる、インターネットやアプリを使って日々の業務を支援するシステムを導入することで、作業の効率化を図る園が増えています。 
 
例えば連絡帳システムや登降園管理システムなどは、保育者だけでなく保護者の負担も減らすことができます。また、ドキュメンテーションシステムを導入して園でのお子さんの様子を発信することで、他の園との差別化を図る園もあります。さまざまな目的や理由で、保育ICTシステムの普及が進んでいます。 
 
一方で、システム化にはお金も時間もかかるため導入をためらう園もあります。しかし、補助金や助成金もあるため導入のハードルが下がっており、この後解説する「2025年問題」で生き残るためにも、導入は避けては通れない課題となってきました。 

人の動きから見る「保育の今」:2025年問題 

保育園における利用児童数の推移を示したグラフ
出典:保育を取り巻く状況について/厚生労働省子ども家庭局保育課(令和3年)

 2023年初頭では、保育士が足りなくて採用できないことがニュースになっていますが、あと2年ほどすると、2025年(令和7年)には保育所の利用児童数はピークを迎え、「保育所が多すぎる」時代がやってきます

女性就業率の上昇より少子化のスピードが速く、利用児童数が減少していくのです。するとより預ける人にとって魅力的な園が選ばれ、そうでないところは定員割れ、保育士が余る時代がやってきます。 
 
今後、保育所は淘汰、経営難に陥らないために、児童と保育士を確保するべく特色を活かした運営をアピールする必要がありますし、保育士個人は、働く場所がなくなる、スキルのある人しか採用されない時代がやってくることになります。 

配置基準からみる「保育の今」:配置基準を変えるために必要なこと 

保育を取り巻くさまざまな環境が変化する中で、逆に「変化してこなかった」のが配置基準。特に4・5歳児の基準は、昭和23年(1948年)に定められて以来、70年以上も見直されることなく同じままです。 
<保育士1人が見る子どもの人数> 
・0歳児 3人 
・1歳児/2歳児 6人 
・3歳児 20人 
・4歳児/5歳児 30人 
保育士1人に対する子どもの人数は欧米の先進国と比べても多く、保育士の負担も少なくありません。近年発生している登園バス置き去り死事故や不適切保育の一因として、配置基準を背景とした「保育現場の余裕の無さ」が挙げられています。こうした状況を受けて、配置基準見直しの議論が活発化しつつあります。 
 
保育の質が問われる時代に変化していく中で、当然、配置基準も保育士がきちんと保育に向き合える内容に変化していかなければいけません。何十年も変わらなかったものを変えていくにはそれなりのエネルギーが必要ですが、まずは一人ひとりが「変えていく」ことを意識してシグナルを送り続けることが大切です。 
 
既に園や自治体レベルで国より手厚い配置基準を導入し、質の高い保育を実践しているところがあります。こういった一つひとつの活動の積み重ねから、大きな変化が生み出されていくのではないでしょうか。 
※配置基準の問題については、今後、特集記事を予定しています。  

「保育の今」から自分の保育を見つめることが大切 

今回は、保育の今をめぐるおおまかな展開をお伝えしました。 

保育をめぐる世界は大きく変わってきています。一方で全ての子どもたちが「自分たちの力で未来を創る力」を養うという保育の本質は揺るぎないものです。 
 
日常で知りたい情報だけでなく必要な情報も目にしてみるといいかもしれません。必要な情報は行政などが発行していることが多く文章が堅苦しく難しいかもしれませんが、ほいくisでもできるだけわかりやすくお届けしたいと考えています。  

次回の「保育をアップデート」は? 

次回は、4月に発足する「子ども家庭庁」についてご紹介します。いままで厚生労働省管轄だった保育園、内閣府管轄だったこども園が子ども家庭庁の管轄になります。 
 
子ども家庭庁とは何か、保育者の皆さんにとっての影響の範囲などをご紹介する予定です。 
 
保育をアップデート!みんなで保育を変えていく をキーワードにみんなで変えていきましょう。  
ほいくis(ほいくいず)編集部

この記事を書いた人

ほいくis(ほいくいず)編集部

保育・幼児教育のプロフェッショナルで構成された編集部のライティングチームが、質の高い保育を日々提供していくために必要な知識・ノウハウを発信。専門知識から保育ネタ、保育士試験関連情報、保育学生さん向けの情報まで、あらゆる分野を網羅していきます。

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