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「こども家庭庁」発足で保育はどう変わる?【保育をアップデート】

「こども家庭庁」発足で保育はどう変わる? 【保育をアップデート】
令和5年(2023年)4月1日、国の子ども政策の司令塔となる新たな行政機関「こども家庭庁」が正式に発足しました。保育分野に関しては、管轄省庁や役割が再編されるという大きな変革のタイミングとも言えます。今回の「保育をアップデート」では、「こども家庭庁とは何か?」「保育はどう変わるのか?」について考えていきます。

「こども家庭庁」とは

「こども家庭庁」のタイトルが入った積み木
「こども家庭庁」は、令和5年(2023年)4月1日に発足した、国の子ども政策の司令塔となる新たな行政機関。総理大臣直属の機関として内閣府の外局に位置付けられ、子ども政策担当の内閣府特命担当大臣と、こども家庭庁長官がかじ取りを担っていくことになります。

設立の背景

厚生労働省の庁舎前の看板
厚生労働省が2023年2月に公表した人口動態統計速報で、2022年(令和4年)の出生数が統計開始以降初めて80万人を割り込み、過去最少を更新したことが報道されました。このように急激に進む少子化の問題を始め、虐待やいじめ、ひとり親家庭、貧困、ヤングケアラーなど、国の将来を担う子どもを巡っては、さまざま問題が山積しています。

しかしこれまで、子ども関連の政策は各府省庁で管轄が分かれており、縦割りの弊害も指摘されていました。一元的な対応を求める声が挙がる中で浮上してきたのが、「こども家庭庁」に繋がる構想でした。

例えば幼児教育・保育施設の管轄に関しては、厚生労働省が管轄する保育所(保育園)と、幼稚園を管轄する文部科学省、認定こども園を管轄する内閣府の3つに分かれていました。当然、それぞれの施設で制度は異なり、保育・教育の内容についてもそれぞれの指針・要領で分かれています。こども家庭庁設立の大きな目的の一つは、これらの縦割りによる弊害を解消・是正を目指すことにありました。子ども関連政策を漏れなくカバーしていこうという「幼保一元化」の考え方です。

結果的には、保育所(保育園)と認定こども園等のみこども家庭庁に移管となり、幼稚園については引き続き文部科学省の管轄に留まることになりました。完全な幼保一元化の実現とはなりませんでしたが、子ども政策の調整については、こども家庭庁と文部科学省が連携・協議をしていくとされています。

体制・組織

こども家庭庁の役割を示した図
こども家庭庁に業務が移管されることに伴い、厚生労働省の「子ども家庭局」や内閣府の「子ども・子育て本部」からの異動も含めて内部部局で350人、総勢430人規模の職員が配置されました。庁内には、大きく分けて3つの部門が設置されています。

長官官房(企画立案・総合調整部門)
  • こどもの視点、子育て当事者の視点に立った政策の企画立案・総合調整(こども大綱の策定、少子化対策、こどもの意見聴取と政策への反映等)
  • 必要な支援を必要な人に届けるための情報発信や広報等
  • データ・統計を活用したエビデンスに基づく政策立案と実践、評価、改善 など 
成育局
  • 妊娠・出産の支援、母子保健、成育医療等基本方針の策定
  • 就学前の全てのこどもの育ちの保障(就学前指針(仮称)の策定)、認定こども園教育保育要領、保育所保育指針の双方を文部科学省とともに策定
  • 相談対応や情報提供の充実、全てのこどもの居場所づくり
  • こどもの安全 など
支援局
  • 様々な困難を抱えるこどもや家庭に対する年齢や制度の壁を克服した切れ目ない包括的支援
  • 児童虐待防止対策の強化、社会的養護の充実及び自立支援
  • こどもの貧困対策、ひとり親家庭の支援
  • 障害児支援
  • いじめ防止を担い文部科学省と連携して施策を推進 など
これら3つの部門が連携していくことにより、子どもや家庭に関わるさまざまな課題に取り組んでいくことになります。

出典:こども家庭庁組織体制の概要/こども家庭庁

基本方針と役割

こども家庭庁が掲げるスローガンとして「こどもまんなか」があります。これは、

『常にこどもの最善の利益を第一に考え、こどもに関する取組・政策を我が国社会の真ん中に据えて(「こどもまんなか社会」)、 こどもの視点で、こどもを取り巻くあらゆる環境を視野に入れ、こどもの権利を保障し、こどもを誰一人取り残さず、健やかな成長 を社会全体で後押し。』

※出典:こども政策の新たな推進体制に関する基本方針のポイント~こどもまんなか社会を目指すこども家庭庁の創設~(令和4年/厚生労働省)

という、子ども政策に関する基本方針を反映した言葉。今後は、この考え方を基に、さまざまな政策が提案されていくことになります。

政策の実効性を担保するものとして、こども家庭庁には「勧告権」が与えられています。これは、各省庁などに対し、必要に応じて政策の改善を求めることができる権利です。どのような場面でこの勧告権が使われるのかについては、今後注目すべきポイントだと言えます。

参考:こども家庭庁HP

保育現場への影響と今後の課題

こども家庭庁が創設された経緯や役割を踏まえて、実際の保育現場にどんな影響が出てくるのか考えてみましょう。

配置基準の見直しと待遇改善

積み木で遊ぶ子どもたちと保育士
近年発生している保育現場での事故や不適切保育の問題に関連して、配置基準の見直しを始めとする保育現場の環境改善や保育の質の担保に関する議論が活発化しています。これらの問題は、こども家庭庁が取り組むべき課題として、その対応が注目されます。

配置基準の見直しに関しては、政府が2023年3月31日に発表した「次元の異なる少子化対策」のたたき台(試案)の中に項目が盛り込まれました。これによると、保育士1人が担当する子どもの人数を、1歳児が現行の6人から5人に、また4・5歳児は30人から25人に減らす方針となっています。
 
<配置基準の見直し案>
保育士1人が担当する子どもの数
・1歳児 6人→5人
・4~5歳児 30人→25人
また、この試案の中では保育者の処遇改善についても挙げられています。保育の質の担保にとっては前向きな検討と言えますが、一方で保育現場の人材確保の難しさは依然としてあるため、どのような影響が出てくるかは注視していく必要があります。

参考:こども・子育て政策の強化について(試案)/こども家庭庁

指針・要領の整合性が図られる

地図とコンパス
設立の背景でも説明した通り、従来は厚生労働省の管轄だった保育所(保育園)と、同じく内閣府が管轄だった認定こども園が、こども家庭庁の管轄となりました。一方で、文部科学省が管轄している幼稚園については、そのまま継続となっています。

これまでそれぞれの施設に対応していた保育・幼児教育の指針・要領については、「認定こども園教育保育要領、保育所保育指針の双方を文部科学省とともに策定(こども家庭庁)」とある通り、こども家庭庁が主導する形でそれぞれの基準の整合性が図られていきます。

今後は、「子どもたちがどの施設でも等しく保育・教育を受けられる」という観点から、各指針・要領でより統一的な考え方で整備が進んでいくことが考えられます。

参考:こども家庭庁組織体制の概要/こども家庭庁

財源の確保が今後の課題

子ども関連政策の今後の大きな課題が財源の確保です。岸田総理による「将来的な子ども関連予算倍増」という発言もありましたが、直近では、2023年6月に閣議決定される経済財政運営の指針(骨太の方針)にどの程度反映されてくるかに注目が集まっています。

こども家庭庁の今後に注目

さまざまな課題を抱えながらも、第一歩を踏み出した「こども家庭庁」。保育・幼児教育の分野についても影響は少なくありませんが、まずは前向きな一歩と捉えて今後もその動向に注目していきたいと思います。

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ほいくis(ほいくいず)編集部

この記事を書いた人

ほいくis(ほいくいず)編集部

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