外国籍の方が多くなってきたのはどうして?

それには2つの要素があります。1つは日本政府の方針による留学生や技能実習生受入による増加。そしてもう1つはグローバル化による自然発生的な増加です。
保育施設でも、外国籍の子どもが通っている園が多くなってきたのではないでしょうか。
外国籍の子どもたちを受け入れるときに知っておくといいこと
外国籍の子どもたちを受け入れる際、その保護者がどのような経緯で日本に来ているのかなどの背景を行政の担当者や保護者へ聞くことは、子どもたちを園生活を支えるなかでとても重要です。日本に来ている理由や日本語の理解力
保護者や子ども自身が簡単な日本語がわかるのか、全くわからないのかによって対応も変わってきます。できるだけコミュニケーションを図るために来日に関する制度や仕組みを事前に知っておくと良いでしょう。国費留学
国が費用を負担して主に国公立大学へ受け入れる制度のことです。 国費留学生の多くは日本語を一定期間学び、それから学部や大学院で学びます。日常会話や読み書きができる場合も多いです。私費留学
留学にかかる費用を自己負担して、行う留学です。受け入れる大学は国公立から私立大学、専門学校や日本語学校と多岐にわたります。学びながら日本語を習得する場合も多いため日本語の習得にも個人差があります。日本にある企業に就職、赴任
赴任先として日本に来日し、企業で働きます。日本語を企業内で学ぶプログラムもある場合も多く、日本語でのコミュニケーションも取りやすい場合とあまり日本語を必要としないため日本語がわからない場合も多く、簡単な挨拶などでしかコミュニケーションが取れない場合とがあります。家族への帯同
留学生や研修生、企業の招聘のご家族に付いてきている家族の場合、就業する人以外は日本語がわからない場合も多く、また、日本のコミュニティとの接点が少ないので日本語でのコミュニケーションが難しい場合も多くあります。サポートしてもらえる家族や仲間の有無
外国籍の家族の中には、園との窓口は全てお父さんという場合も少なくありません。そのお父さんも日本語が十分に伝わらない。また、家族の中でだれも日本語がわからないという場合もあります。そのときに、家族の中や近所、親しい人で助けてもらえる人がいるのかも聞いておくのも一つです。どうしても大切なことを伝えたい時など心強い味方になってくれます。 ただ間に人が入ることによってのトラブルも想定しておいた方がよいでしょう。
外国籍の皆さんのコミュニティではクチコミや紹介がとても力を持っています。なので、在園児の保護者が知人に園を紹介している場合も多くみられます。
英語がすべての共通言語ではない
相手が日本語がわからないとき、私たちはつい英語で話しかけてしまいます。「英語だったら通じるかもしれない」という思い込みが原因です。世界は広いので英語が通じない場合も多くあります。その際には翻訳アプリを使ってもいいでしょう。しかし、子どもたちがいつの間にか習得するように、簡単な日本語でのコミュニケーションをしているうちに保護者の方も段々と日本語に慣れてくれるはずです。
「持ってきてください」を「明日、私にください」とジェスチャーと用紙を受け渡ししながら言うと伝わるかもしれません。日本語教室の基本はですます調を基調とした「簡単な日本語で話す」ことだそうです。ガイドラインも公表されていますので、簡単な日本語で伝えることを心がけてみてください。
参考)在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン >>詳細はこちら
事例で考える常識と価値観の違い

ところかわれば常識や生活習慣も変わります。外国籍の子どもをサポートしているご縁で、私が実際に見たり聞いたり、対応したりした事例をご紹介します。
対応や関わりについてはその国、習慣、文化などを配慮する必要があります。あくまでも過去にあった事例を特定できないよう多少の脚色をしていますのでご了承ください。
また、この事例の対応でなくてはならないということではなく、あくまでも皆さんの園でこのような場合どう対応しますか? という考えのきっかけの一つとして参考になれば幸いです。
事例①水筒の中身はお茶?
あるとき、知り合いの園長から外国籍の保護者へ話が伝わらずに困った。という話を聞きました。水筒にお茶を入れて持ってくるようにと英語で伝えたところ、ミルクティーが入っており飲む頃には傷んでしまって飲めなかったというのです。聞けば、保護者の国籍を聞くとインドでした。インドで「Tea(ティー)」と言えばミルクティーやチャイ(ミルクティーにスパイスを入れたもの)です。その話をすると「お母さんの理解や言葉の問題じゃなかったかもしれない」と気づいたようです。
「Tea」と言えばミルクティーという認識の国もあるため、緑茶なら「ジャパニーズグリーンティー」、普通の紅茶なら「ストレートティー」、砂糖を入れないなら「ウィズアウトシュガー」と伝えるといいというお話をしました。
今までの経験から、麦茶は「むぎティー」で通じる方が多い気がしますが「水」をおすすめします。水であっても毎日水筒を洗って欲しいことも必ず付け加えてお知らせしてください。
事例② お昼ご飯は毎日マカロニ
宗教上の理由でお弁当を持ってきている5歳児。その子は、毎日塩胡椒で味付けしたのマカロニを持ってくるけど全く食べません。食べないのは困ったということで、実際に保護者に給食の様子を見学してもらい、日本のお弁当を実際に見てもらったり、普段の食事の内容からどんなものならお弁当箱に入れられるのかを話したりと翻訳アプリを使って一緒に考えました。
料理が苦手なのかな?、給食の意義が伝わってないのかな? と思っていたのが、実は「園でどんなものを食べたらいいのかわからない(お弁当というものがよくわからない)」という理由からでした。思い込みではなく、何か困っているかもしれないという視点で関わってみたからこそわかったことでした。
事例③ おやつを持ってくるのはいいけど
事例②と同じように宗教上の理由で給食を食べないという選択をしていた3歳児。細かい禁止事項もあるため園ではおやつの提供もしていないということでした。お弁当はサンドイッチやプチトマトを入れてくれるのですが、おやつにはポテトチップス一袋、まるごとのりんご、チョコレート菓子を持ってきます。しかも、友だちにもわけてあげてしまい、やめるようにつたえても何度言っても「みんなで食べてください」と言って改善してくれないと困っていました。
そこで、園で提供するおやつは、栄養の面から果物等が適していること、誤嚥などを防ぐために果物も小さくカットする必要があること、アレルギーがある子もいるため管理していない食品の受け渡しは禁止していることをおうちの方に伝え、なぜダメと言っているのかを理解してもらうことにしました。
何度言っても伝わらないのは、「なぜそうなのか」というポイントが相手に伝わっていないからかもしれませんね。
困ったら一緒に解決していくを基本スタンスに

育った環境や国によって認識も常識も全く違うということを知る
外国籍の子どもたちでも通常受け入れている子どもたちでも大切にする部分での変わりはありません。子どもたちが園で楽しく過ごせるよう、困っていたら一緒に解決していく、その気持ちがとても大切です。一方で、できないことは「できない」とはっきり伝えることもとても重要です。柔らかい表現で伝えるとかえって伝わりにくくなります。 なぜできないのかの理由も伝えるといいでしょう。
昨今、外国籍の子どもたちと家族は増えていく傾向にあります。園の関わりや取り組み方によっては多文化共生・異文化理解が自然と子どもたちの中に育まれる機会になってきます。情報を共有して色々な機関や団体、人たちと助け合い、より良い保育を目指していきたいですね。
【関連記事】













