保育現場に人がいない。その先にあるもの

そんな声を、保育の現場から聞かない日はありません。実際、保育士不足は深刻な社会課題としてメディアにも取り上げられています。その背景には、さまざまな要因が考えられます。
- 保育士養成校の入学者数の減少
- 賃金や待遇に対する不安定さ
- 長時間労働・書類業務の多さ
- 責任の重さに対する支えの少なさ
- 「子どもが好きだけでは務まらない」という現実
嘆く前に、現場ができること
「待遇が悪いから」「もっと園長が動くべき」「求人は管理職の責任」。人がいない理由として、そんな声が現場で聞かれることもあるかもしれません。もちろん、組織として労働環境を整えることは必要不可欠です。けれど、本当にそれだけで良いのでしょうか?
人材不足は、誰か“上の人”の責任にして終わって良い話ではありません。保育現場にいる一人ひとりにも、未来の人材と出会い、育てていく責任があるはずです。
嘆くのは簡単。けれど、変える努力は、現場からでもできます。「人がいない」と口にする前に、自分の姿勢やかかわり方を問い直したことはあるでしょうか? 実は、新しい人材が入る“きっかけ”を作るのは、現場の保育士自身なのです。
その一つが、実習生や中高生の職場体験とのかかわり。未来を育てる種は、現場にしか蒔けないのです。
出会っているのは未来の保育士

つまり、保育者が与える印象は、学生の進路に直結しているのです。
大切なのは、実習生はまだ「迷いの中にいる存在」であるということ。だからこそ、私たちが今どうかかわるかが、未来の人材の行方を左右します。それくらいの影響力を、現場は持っているのです。
また、未来の人材は保育学生だけではありません。例えば、中学生の職場体験なども、実はとても重要な“種蒔き”の場です。
まだ将来の方向性が明確でない中学生たち。多くの体験を吸収するこの時期に、「保育って楽しそう」「やりがいがある」と思えたかどうかは、かかわった保育者の姿にかかっています。
それを“ただのお手伝い”で終わらせてしまえば、種は芽吹きません。5年後、10年後に保育の道を目指して戻ってきてもらえるか。そのために今、何を伝えるかが問われているのです。
保育職の魅力を伝える力とは
私たちは、実習生や中高生に、保育の魅力を伝えられているでしょうか?- 保育とは何か
- 保育者の役割とは何か
- 子どもの最善の利益とは何か
- 保護者支援とは何か
もし、少しでも言葉に詰まる自分がいるのなら、それは必ず学生にも伝わっています。姿勢も、空気も、背中も…すべてが、次世代のロールモデルになるのです。
実習記録は評価だけでなく、未来を紡ぐ時間

私が日々発信している、実習記録や指導案の重要性。それは、ただの「評価の材料」ではありません。それは、現場でしかできない「対話」の時間であり、「保育の専門性を伝え、未来へ受け渡していく場」でもあります。
養成校から届く実施要項には、「記入方法は貴園の指導方法に準じる」とあります。つまり、実習記録の書き方は全国で統一されている訳ではなく、園ごとにその視点や意味が異なるのです。
だからこそ、保育者がその園ならではの専門性をもって、“記録の意味”を伝える必要があります。
「書けていない」「理解できていない」と突き放すのではなく、どう書けるようになっていくかを共に考える。記録もまた、保育と同じように“育つプロセス”です。その育成にどうかかわるかが、保育者に問われているのです。
保育者が“語る力”を持つために

まずは、保育の魅力を“語る”には、自らの保育実践が問われるということを認識することが必要です。
- 日々の保育で、子どもの姿をどれだけ丁寧に捉えているか
- 信頼される園・保育者として、保護者とどんな信頼関係を築いているか
- 保育計画を基に、どんな実践へと繋げているか
- 環境構成にはどんな意図があるか
- 援助や配慮に、専門性がにじんでいるか
最新の保育を学んでいる学生に対して、現場の保育者もまた学び続け、保育実践をアップデートし続けている姿勢を見せることも必要です。
おわりに

実習生に、「ここで働きたい」と思ってもらえるか。中学生に、「保育って楽しそう」と感じてもらえるか。そのかかわり方一つで、芽が育つことも、枯れてしまうこともあります。
実習記録の添削、指導案の確認や指導、新任や若手職員への声かけ、中学生へのまなざし、そのどれもが未来をつくっている“育成”の時間です。
「人が足りない」と嘆く前に、どれだけ自分が未来に手を伸ばしているか、どれだけ本気で育成に向き合っているか。それを、未来の保育者たちは見ています。
伝える力、語る力は、保育の魅力そのものです。だからこそ私たちは、ただ教えるのではなく、語れる保育者でありたい。日々の実践に誇りを持ち、その専門性を誰かに“伝える”ことができるかどうかが、これからの保育を支える鍵となるのです。
伝える力を身に付け、人材育成不足を現場から変えてみませんか。
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