MENU

こども誰でも通園制度を解説|目的と内容・課題【2026年4月施行】

4
「こども誰でも通園制度」と書かれた積み木
2026年(令和8年)4月から本格的に実施される「こども誰でも通園制度」。保育所や認定こども園などの施設で、保護者の就労の有無に関わらず0~3歳未満の子どもの定期的な預かりが可能になります。今回は、制度の概要や意義、保育現場での課題を解説します。

制度の目的と創設の背景

おもちゃで遊ぶ乳幼児
「こども誰でも通園制度」は、保護者の就労状況にかかわらず0歳6カ月〜3歳未満の子どもを一定時間預けることができる制度で、正式名称は「乳児等通園支援事業」と言います。令和5年度(2023年度)からモデル事業が全国各地で実施され、令和8年度(2026年度)より本格的に全国での導入が開始されます。名称が少し長いこともあり、保育関係者の間では「誰通(だれつう)」と省略して呼ばれることもあります。

制度の創設は、2023年(令和5年)6月に政府が公表した「こども未来戦略方針」において発表されました。この中では、0~2歳児の約6割が未就園児であり、その家庭の多くが孤立した育児の中で不安や悩みを抱えていることが背景として挙げられています。そのことを踏まえて、制度創設の目的を「全てのこどもの育ちを応援し、こどもの良質な成育環境を整備するとともに、全ての子育て家庭に対して、多様な働き方やライフスタイルにかかわらない形での支援を強化するため(※)」としています。

※出典:「こども誰でも通園制度」について~基礎資料集~/こども家庭庁 成育局 保育政策課 >>詳細はこちら

それでは、この制度の意義について子ども・保護者・事業者の三つの視点に分けて見てみましょう。

子どもにとっての意義

普段、保育施設に通っていない子どもが登園することにより、さまざまな人と関わる機会が得られます。

専門的な知識を持つ保育者のもと、同年齢の子どもと触れ合うことができ、さまざまな経験を重ねることで物や人への興味が広がります。これらの経験により、社会情緒的な発達が促されることが期待されています。

保護者にとっての意義

チャイルドシート付の自転車で通園する親子
専門的な知識を持つ保育者と関わることで、保護者の孤立感や、子育てに対する不安感の解消に繋がります。子どもへの接し方を客観的に捉え直すきっかけとなり、親としての自信回復や成長も期待できるでしょう。

また、地域の社会的資源と繋がるきっかけにもなります。

事業者にとっての意義

保育施設などの事業者は、地域社会との関係が深まり、子育て家庭を支援する社会資源として、新たな役割や可能性を見出すことに繋がります。

また、定員確保が難しい施設において、専門性の高い保育者を確保しながら事業を継続・発展させていく可能性が広がります。

出典:こども誰でも通園制度の実施に関する手引/こども家庭庁 >>詳細はこちら

制度の概要

ここからは、こども誰でも通園制度の概要を見ていきましょう。

対象

生後6か月から3歳未満の乳幼児で、保育所、認定こども園、幼稚園などに通っていない子どもが対象です。保護者の就労状況に関わらず、すべての子育て家庭が利用できます。

利用時間

カレンダーと時計と砂時計
月あたりの一定時間(10時間)を上限として、1時間単位で利用できます。1回あたりの利用時間や利用日の設定は自治体や実施施設によって異なります。月に数回、数時間ずつといった利用が想定されています。

利用料

保護者が支払う利用料は、子ども一人につき1時間あたり300円程度が標準で、食費などの実費負担は施設によって異なるため確認が必要です。生活保護世帯や非課税世帯は、利用料が減免になる制度もあります。

保護者の利用方法

「How to use」と書かれた用紙とペン
利用を希望する保護者は、以下の手順で申請を行います。
  1. 自治体に利用認定の申請を行う
  2. 実施施設から預ける園を選ぶ
  3. 施設と面談の上、利用日を予約する
令和7年(2025年)3月には、こども家庭庁から「こども誰でも通園制度総合支援システム」がリリースされました。このシステムにより、保護者はオンラインで認定申請や利用予約の手続きができるようになりました。施設側も利用者情報の管理が効率化され、事務処理の負担軽減が期待されています。

出典:こども誰でも通園制度/こども家庭庁 >>詳細はこちら

一時預かりとの違い

AとBの選択肢のどちらを選ぶか迷っている女性
こども誰でも通園制度に関するよくある疑問の一つとして、「地域子ども・子育て支援事業(13事業)」の中で行われている「一時預かり事業」との違いがあります。

一時預かり事業は保護者のニーズに応じて利用するものですが、こども誰でも通園制度は子どもの成長・発達を支援することを目的としています。また、一時預かりは自治体ごとの事業ですが、こども誰でも通園制度は令和8年度から国で実施する給付制度となり、全国どの自治体でも共通で実施されます。
article_15

保育現場での課題

制度の導入にあたり、保育現場ではいくつかの課題が指摘されています。一つひとつ見てみましょう。

保育者の確保

こども誰でも通園制度の利用者を受け入れるためには、適切な保育者の配置が必要です。特に保育士不足が深刻な地域では、実施施設の確保が難しいことが予想されます。

業務負担増

腕を組んで考え事をしている保育士
通常の保育業務に加えて、こども誰でも通園制度の利用者の対応が必要になります。また、初めて施設を利用する子どもの受け入れ準備、保護者との面談、個別の記録作成など、新たな業務が発生します。

「こども誰でも通園制度総合支援システム」など、関連業務のICT化により事務処理の効率化が進められていますが、現場での運用については、慣れるまでに時間が必要です。

安全面

不定期にさまざまな子どもが利用するため、一人ひとりの特性やアレルギー情報などを正確に把握するなど、安全に気を配る必要があります。

情報共有の仕組み作りや、緊急時の対応マニュアルの整備が欠かせません。チェックリストの活用や、申請時の情報収集を丁寧に行うなどの工夫も必要でしょう。

保護者とのコミュニケーション

親御さんとコミュニケーションをとる保育士
短時間・不定期の利用になると、保護者とコミュニケーションを取る時間が限られます。そのため、子どもの様子の伝え合いが不十分だったり、保護者との信頼関係が築き辛かったりすることも予想されます。

連絡帳を準備したり、送迎時に丁寧な話をしたりと、安心して園を利用できるような工夫が必要です。

保育の連続性・質の担保

「QUALITY」と書かれた積み木
月に数回・数時間の利用では、園生活に慣れることが難しい子どももいます。また、次の利用日まで日数が空いてしまうと、子どもの発達過程が見えず、適切な保育が困難になることも考えられます。

丁寧な引き継ぎを行ったり、子どもの状態に合わせた臨機応変な対応を行ったりすることで、保育の質を保つ工夫が求められます。

事務処理の煩雑化

事務作業で忙しそうな女性
こども誰でも通園制度を利用するためには、認定申請、利用申請、利用予約といった複数の手続きが必要になります。それぞれの段階で書類の確認や情報管理が発生し、事務処理の煩雑化が予想されます。

「こども誰でも通園制度総合支援システム」の導入により、ペーパーレス化やデータの一元管理が進めば、将来的には事務負担の軽減が期待できますが、初期段階ではある程度事務処理の負担が発生するでしょう。

保護者にとっては預けられる時間が短い

月10時間という上限は、保護者にとって十分とは言えない場合もあります。就職活動中の保護者や、定期的な通院が必要な保護者など、もう少し長い時間の利用を求めている方もいるでしょう。今後、利用時間の長さについても検討が進むことが予想されます。

一方で、先行して行われてきたモデル事業での実践を通じて、現場ではさまざまな工夫も生まれています。マニュアルの整備、職員間の連携強化、ICTツールの効果的な活用などにより、課題を乗り越えようとする動きも各地で見られています。こういった保育現場の声に耳を傾け、制度の改善に繋げていくことが国には求められています。

地域の子育て家庭を支えよう

こども誰でも通園制度は、すべての子育て家庭を支える新たな取り組みです。保育施設としては、実践していく上での課題も多くありますが、改善を重ねていくことで、より良い支援体制が整っていくことを期待したいですね。

【関連記事】

4
article_10
佐野 きこ(さの きこ)

この記事を書いた人

佐野 きこ(さの きこ)

現役保育士。
現在は子どもだけでなく、保育士や保護者など、子どもに関わる人をサポートする仕事がメイン。子どもも保護者も保育士も、みんなが笑顔になれる保育を目指している。
座右の銘は「保育士は、保育のプロである」
保育の専門家として、わかりやすく保育を語れるよう奮闘中。
家庭では、2人の息子のお母さん。

3分でわかる保育知識関連記事
ほいくisメンバーに登録(無料)