36の基本動作とは
現代社会が便利になっていく一方で、子どもが体を動かす機会が減少しています。幼児期の運動は心身の発達に極めて重要であり、保育園や幼稚園、認定こども園などの施設では、子どもたちが遊びを通して、多様な動きを経験する場を設けることが求められています。文部科学省が平成24年(2012年)に策定した「幼児期運動指針」では、3歳から就学前の幼児は、「様々な遊びを中心に、毎日、合計60分以上、楽しく体を動かすことが望ましい。」と明記されています。
そして令和2年(2020年)には、ミズノ株式会社がスポーツ庁から委託を受け、子供の運動習慣アップ支援事業として「運動あそびBOOK」を作成しています。これは、幼少期に身につけたい36の基本動作とその動きを取り入れた運動遊びを紹介しています。
36の基本動作は新たに計画した遊びの中で体験を促すこともできますが、実はこれまでの保育の中で、必要な動きの多くが既に取り入れられています。今回は、保育園で定番の遊びや日々の生活の中で見られる基本動作について、改めて振り返ってみましょう。
出典:幼児期運動指針/文部科学省
https://www.mext.go.jp/a_menu/sports/undousisin/1319771.htm
出典:運動あそびBOOK/美津濃株式会社
https://www.mext.go.jp/sports/content/20200814-spt_kensport01-000009406_2.pdf
「36の基本動作」 3つの分類
36の基本動作は、「平衡(バランス)」、「移動」、「操作」の3つの系統に分類されています。まずは、1つずつ見ていきましょう。【平衡系】体のバランスをとる動き

- たつ
- おきる
- まわる
- くむ
- わたる
- ぶらさがる
- さかだちする
- のる
- うく
【移動系】体を移動する動き

移動系動作は、次の9種類です。
- あるく
- はしる
- はねる
- すべる
- とぶ
- のぼる
- くぐる
- はう
- およぐ
【操作系】用具などを操作する動き

- もつ
- ささえる
- はこぶ
- おす
- おさえる
- こぐ
- つかむ
- あてる
- とる
- わたす
- つむ
- ほる
- ふる
- なげる
- うつ
- ける
- ひく
- たおす
遊びの中で見られる36の基本動作
「36の基本動作」は、新しい運動を取り入れるための指標ではありません。通常の遊びや生活の中で経験し、獲得していくものです。既に保育の中で取り入れている動きもたくさんあります。ここからは、保育園で定番の遊びとの繋がりを見ていきましょう。
鬼ごっこ
鬼ごっこといえば、「はしる」という動きをイメージする方も多いですが、それだけではありません。鬼から逃げる際に遊具の下を「くぐる」、段差から「とぶ」といった動きも見られます。ひとつの遊びの中に複数の動きが混ざり合っていることが分かります。砂遊び
砂遊びでは、スコップで「ほる」、バケツに入れて「はこぶ」、砂を入れた型抜きを上から「おす」など、操作系の動きが詰まっています。腕や手首、指先まで、さまざまな場所を動かす遊びです。固定遊具
滑り台では「のぼる」や「すべる」、うんていやジャングルジムでは「のぼる」「ぶらさがる」「わたる」などの動きがセットになっています。ブランコでは「つかむ」や「こぐ」といった経験ができます。新聞遊び
室内で定番の新聞紙遊びも、丸めて「なげる」、集めて「はこぶ」、棒にして「ふる」という体験が行えます。36の基本動作には含まれていませんが、「ちぎる」という動きにも指先を使います。マット遊び
マット遊びでは、「まわる」「はう」「とぶ」などといったさまざまな動きを体験できます。室内では動きが小さくなりがちですが、マット遊びを通じて多様な動きを体験する機会を作ることができます。生活の中で見られる36の基本動作
遊びだけでなく、生活の中でもさまざまな動きを経験していくことができます。保育園の生活の中から基本動作をピックアップしてみましょう。移動
例えば、他の保育室や園庭に移動する際、子どもは「あるく」だけでなく、段差を「のぼる」などの動きもしています。また、テープなどで線を引いておけば「わたる」や「とぶ」などの動きを引き出すこともできます。給食当番
給食の配膳当番では、食器を「もつ」「わたす」「はこぶ」などの動きがあります。机に置く時や友だちに渡すときなど、食器類を落とさないように、注意を払って動きをコントロールしていることでしょう。午睡準備
午睡の準備では、布団やコットを「もつ」「はこぶ」といった動作があります。友だちと一緒に運ぶ時は、「ささえる」「わたす」といった別の動きも加わります。年少の時は一人では難しくても、年長になったら軽々と運ぶなどといった成長の変化も感じられます。36の基本動作を保育で生かす方法
36の基本動作を日々の保育に生かしていくことで、子どもの発達を保証していきたいですね。その視点を明日から取り入れていく上で、意識したい3つのポイントを紹介します。子どもの動きをよく観察する
36の基本動作を意識しながら、子どもたちの姿をよく見てみましょう。漠然と「ジャングルジムで楽しそうに遊んでいるな」と見ているのと、「今、『のぼる』という体験をしているな」と見るのでは、子どもの発達を見る視点が大きく異なります。子どもの姿から育ちに必要な動作を読み取る力は、保育士の専門性を高めることにつながります。保護者にも「のぼる力がついてきましたね」と具体的に発達を伝えることができるようになります。
環境作りで子どもの動作を育む
観察の結果、「あの子はバランスをとって『わたる』ことが苦手だな」と感じれば、低めの平均台を用意したり、ラインカーで線を引いたりして、楽しみながら動作を体験できる環境を設定しましょう。また、「なげる」「あてる」などの体験が少ないと感じれば、ドッヂボールなどの遊びを計画するのもおすすめです。注意点として、一つ一つの動きを直接体験するのではなく、子どもが「やってみたい」と思える環境や遊びを用意することが大切です。
ノルマにしない
36の基本動作は、動きのチェックリストであって、子どもに課すノルマではありません。「全部経験させなきゃ」と焦る必要はありません。子どもが保育園で行う遊びや生活の中で、自然と多様な動きができるよう、環境を整える目安にしましょう。幼児期は、「体を動かすって楽しい」と感じられる機会をたくさん作っていきたいですね。
普段の保育の中で子どもの動きを見直してみよう
36の基本動作は、子どもにさせるための活動ではなく、いつもの保育の中で子どもの体験や育ちを見つけていくための指標です。「操作系の遊びが少ないかも」と気付けば、環境を見直すきっかけにもなります。豊かな環境と見守りの中で、子どもの多様な動きを育んでいきましょう。□■この記事を読んだあなたにおすすめ■□












