HSCは5人に1人

近年ネットニュースや新聞などで取り上げられることもあり、「なんとなく耳にしたことがある」という方もいるかもしれません。
HSCとは、「Highly Sensitive Child」の略称で、日本語では“ひといちばい敏感な子”。実は子どもの15~20%、30人クラスのうち5、6人にひとりいると言われています。
今回は、ご自身のお子さんがHSCだと知ったことをきっかけに、情報発信や相談セッション、勉強会などさまざまな活動を行っているHSC子育てカウンセラーの高野あゆみさんに、その概要や向き合い方などを教えていただきました。

HSCの特徴とは
HSCが5人に1人となると、園の中にも「もしかすると?」と感じる子がいるかもしれません。“ひといちばい敏感な子”とは、実際にどのような特徴が見られるのでしょうか。発達障害ではない

発達障害なのかと疑問を感じる方もいるかもしれませんが、これは別物であると高野さんは話します。
「『発達障害ではないと言われたけど、何かある気がする』とモヤモヤした保護者の方がHSCを知って、『これだ!』と思うことが多いんですよ」
では、発達障害とは具体的にどのようなところが違うのでしょうか。よく似ていると言われる特徴の違いを聞いてみました。
ADHD、自閉症スペクトラム症との違い
「似ていると言われるのは ADHDと自閉症。ADHDとHSCはすぐに気が散ってしまうという点で混同されやすいですが、両者の違いは“穏やかで慣れた環境にいる時に、集中したり意思決定したり出来るかどうか”です。前者はこのようなことが苦手な傾向がありますが、後者は得意とします。また、自閉症とHSCは感覚が敏感という点で混同されやすいですが、両者の違いは“場の 空気や人の気持ちを察知できるかどうか”です。自閉症の子はそれが苦手な傾向にありますが、 HSC の子は場の空気を汲み取ることに長けている傾向があります」
参考:『ひといちばい敏感な子』/エレイン・N・アーロン/1万年堂出版
発達障害との違いが分かったところで、実際に保育園に通う年齢の子どもたちにどのような傾向が見られやすいのか具体例を聞いてみました。
5つのよく見られる傾向と対応方法

ケース1:登園渋りが激しい
「保護者の方との朝のお別れを引きずりやすいことがあります。朝離れるのを嫌がり泣くことはごく自然ですが、HSCの場合はかなり強くその傾向が見られます。場合によっては切り替えができずに何時間も泣いている、食事やお昼寝もできない、登園渋りが何か月も何年も続くということがあります。これには特効薬のようなものはなく、いろいろ試すことが必要だと思いますが、私がHSCの娘に効果があったと感じた対応のひとつは抱っこです。娘は、信頼関係が築けている先生に抱っこしてもらうことで安心したそうです。もちろんそれでも暴れたりするのですが、気を許している先生だからこそ感情を出し切ることができます。
もうひとつの対応としては、子どものお気に入りグッズを持たせることですね。園によってそれを良しとするかどうかもあると思うのですが、例えば鞄に入れておけば、何かあったときその中にあると思うだけでも安心材料になります」
ケース2:他の子が叱られているとダメージを受ける
「HSCは共感力がとても強いので、相手の感情が流れ込んできたり同化して考えてしまうこともあります。他の子が叱られているときに、叱られた本人はケロッとしているのにHSCの子がビクビクしてしまうとか。これに対してはHSCに限ったものではありませんが、大声で威圧的に叱ることを避けましょう。HSCの子は状況をよく観察していて、守るべきルールや調和をとても大切にします。静かに落ち着いたトーンで話せばしっかり伝わりますよ」
ケース3:たくさん人がいると疲れやすい
「感覚が敏感なので、たくさんのお友だちが遊んでいる場所ではいろいろな情報が入ってきてストレスを感じやすいことがあります。急に泣き出したり怒ったり、お友だちとトラブルを起こすこともあります。そういう場合は、ひとりになれる静かなスペースを園の中に作るといいですよ。園によっては場所がなかったり人員配置の問題なども出てくるかもしれませんが、カーテンの裏でもいいんです(笑)。その子がひとりになって落ち着ける場所を確保することが大切です」
ケース4:給食が苦手

その子がどんな刺激を苦手だと感じるかはそれぞれなので、無理に食べさせることを避けてほしいと思います。何が嫌だったのか聞いたり、保護者の方に家ではどうしているのか聞くのも良いですね」
ケース5:イベントが苦手
「このケースには苦手とする理由が2タイプあります。ひとつめは、行事などでいつもと違う雰囲気をプレッシャーに感じてしまうタイプ。運動会で隅の方にいるとか、避難訓練の緊迫した空気が怖いとか。出来るだけ本番前にイメージが湧くように、当日どのように物事が進むのか見せてあげると良いですよ。また、『困ったときは〇〇先生のところにおいで』という逃げ道を用意してあげましょう。
もうひとつは、そもそもなぜこのイベントをしなくてはいけないのかという本質的なことに疑問を持つパターンです。大人もハッとするような質問をしたりします。この場合は、保護者とも相談しながらその子なりの参加の仕方を工夫してみてください。みんなと同じことをするのではなく、いろいろな参加の仕方があると思います」
HSCの見極め方

見極めるための基準として、HSCの提唱者であるエレイン・N・アーロン博士は23のチェックリストを挙げています。
1、すぐにびっくりする
2、服の布地がチクチクしたり、靴下の縫い目や服のラベルが肌に当たったりするのを嫌がる
3、驚かされるのが苦手である
4、しつけは、強い罰よりも、優しい注意のほうが効果がある
5、親の心を読む
6、年齢の割りに難しい言葉を使う
7、いつもと違う臭いに気づく
8、ユーモアのセンスがある
9、直感力に優れている
10、興奮したあとはなかなか寝つけない
11、大きな変化にうまく適応できない
12、たくさんのことを質問する
13、服がぬれたり、砂がついたりすると、着替えたがる
14、完璧主義である
15、誰かがつらい思いをしていることに気づく
16、静かに遊ぶのを好む
17、考えさせられる深い質問をする
18、痛みに敏感である
19、うるさい場所を嫌がる
20、細かいこと(物の移動、人の外見の変化など)に気づく
21、石橋をたたいて渡る
22、人前で発表する時には、知っている人だけのほうがうまくいく
23、物事を深く考える
13個以上に「はい」なら、お子さんはおそらくHSCでしょう。しかし、心理テストよりも子どもを観察する親の感覚の方が正確です。たとえ「はい」が1つか2つでも、その度合いが極端に強ければ、お子さんはHSCの可能性があります。
チェックリストで必ずしもHSCであるかどうかという確実な判断を出せるとは限りませんが、ひとつの基準として知っておくといいかもしれません。
HSCを知ろう
まずは、HSCについて知ることから始めてみましょう。気になるときには一度チェックリストを参考にしてみるといいかもしれません。次回は保育者には欠かせないHSCの子どもを持つ保護者との関わり方や、HSCの子どもとの関わりで大切なポイントをご紹介します。
高野 あゆみ(たかの あゆみ)
7歳・4歳の子を育てる母。HSC子育てカウンセラー。
娘の登園渋りがきっかけでHSCを知り、10年勤めた会社を退職。HSCの親子が心の底から自分らしくいられる世界を目指して、2018年10月に『HSC幸せ子育てサロン』を立ち上げ。親御さん向け個別相談セッション、保育園・幼稚園・教育機関向け勉強会などの活動を行っている。
心理カウンセラー、チャイルドカウンセラー、家族療法カウンセラー、保育士資格保有。
【HSC幸せ子育てサロン】http://hsc-kosodate.com/
【Insta】https://www.instagram.com/aym_1130/
※2020年秋以降、恵比寿にて「HSCの作品展」を開催予定!詳細はこちら。
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