水遊び・プール中の事故事例
毎年夏になると、水遊びやプール中の事故のニュースを耳にします。保育園や幼稚園の活動中の事故も例外ではありません。「平成28年7月11日、栃木県那須塩原市内の認定こども園においてプール活動中の5歳児が意識不明となる事故が発生した。同事故について、「認定あけぼのこども園プール事故検証委員会5 報告書」(平成29年3月)によれば、事故発生時には、現場で保育教諭2名が監視の役割を担っていたが、2名とも事故発生の瞬間を見ていなかったこと、事故発生に至る背景として、当該園におけるプール活動に関する危機管理体制及び安全対策が必ずしも十分に整備されていなかったこと等が指摘されている。」
出典:教育・保育施設等におけるプール活動・水遊び に関する実態調査 P2/消費者安全調査委員会
この他にも、「保育士ひとりで指導、監視、片付けを並行して行っていた」「適切な救命措置を行うことができる者がいなかった」などの事例も挙げられています。
このような現状を把握したうえで、保育士がどのようにプール活動などを行うべきなのか考え直してみましょう。
ガイドラインをチェック
指導者と監視者を分ける
水遊びやプールを行う際は、子どもたちにプールの指導をする職員、活動には加わらず監視をする職員を明確に分けます。スポーツ庁の資料によると、「監視をする保育者は監視以外の業務を絶対に行わない」とされています。監視中に子どもたちに「一緒に遊ぼう」と声をかけられたり、つい気になって活動に参加したくなってしまうかもしれません。しかし、“帽子をかぶる”“ビブスを着る”などして役割を明確にし、子どもたちには「今日は先生は、みんなが元気に遊んでいるか見ている人だよ」と事前に説明をしておくと良いでしょう。
職員全員で共通意識を持つ
活動に関わる職員全員で、リスクや注意するポイントについて把握しておきましょう。内閣府は、注意すべきポイントとして以下を挙げています。- 監視者は監視に専念する。
- 監視エリア全体をくまなく監視する。
- 動かない子どもや不自然な動きをしている子どもを見つける。
- 規則的に目線を動かしながら監視する。
- 十分な監視体制の確保ができない場合については、プール活動の中止も選択肢とする。
- 時間的余裕をもってプール活動を行う。
応急手当や緊急対応を学ぶ
心肺蘇生法やAEDの使い方などの緊急時の対応などは、職員全員が正しく行えるように訓練をしておきましょう。「事故なんて起こるはずがない」と考えず、いつ何が起きても慌てないように日常的な取り組みが大切です。今回のガイドラインについての概要と、水遊び中の重大事故を未然に防ぐための対策を解説したセミナーはこちら
幼児の特性と危険箇所
特性とリスク
- 幼児は頭が大きく重たいため、転倒しやすい
- 腕力が弱いため、体を支えたり起き上がることが難しい
- うつぶせになった場合、鼻と口が水没して溺れることがある
- 対処能力が未発達で、気管内に水が入るともがくことなく溺れることがある
- 小さいプールは幼児が密集して、倒れたときに発見が難しい場合がある
危険箇所
常設のプールだけでなく、ビニールプールや水遊びの際にも確認するべき箇所があります。- 排水溝のフタが閉まっているか
- プールの底や周辺のタイル、コンクリートが破損していないか
- 洗浄器は清潔かつ正常に動いているか
- プールサイドに不要な物はないか
- 子どもの数とプールの広さは適切か
- プールサイドが滑りやすくなっていないか
プールに入る前の注意点
水質・水温チェックを行う
プールに子どもたちが入る前に、水温や水質のチェックを必ず行いましょう。晴れていても、場合によってはプール活動に適していないこともあります。また塩素消毒を実施することも忘れずに。約束事を事前にチェックする
プールに入る前に、子どもたちと約束事を確認しておきましょう。例えば「プールサイドは走らない」「プールの中でお友だちを押さない」など、安全に楽しむために必要な約束を子どもたちと一緒に考えてみても良いでしょう。熱中症に注意する
プール開きをする前に、熱中症対策をしておきましょう。水の中だと涼しい感覚になり、つい長時間遊んでしまったり、休憩をとらずに炎天下の中で水遊びをしてしまったりすることも。日除けを設置したり、水分補給の場所を作ったりしておきましょう。安全な環境確保を
水遊びやプールは、職員全員の安全への意識が重要です。安全確認や必要に応じた研修・訓練などを怠らず、楽しく活動ができる環境確保を行いましょう。参考:教育・保育施設等における事故防止及び 事故発生時の対応のためのガイドライン/内閣府
参考:水遊びでの事故事例と防止対策/文部科学省スポーツ庁
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