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ひといちばい敏感な子「HSC」。保育者に持ってほしい関わりの視点とは【後編】

耳をおさえる子ども
近年よく耳にするようになった「HSC」。ひといちばい敏感な子として、人の気持ちを自分のことのように感じ取ってしまったり、音やにおいに敏感だったりする特性があります。第2回目は、前回に引き続きHSC子育てカウンセラーの高野あゆみさんに、保育者としての関わりのポイントなどを伺いました。

HSCで重要な関わり

第1回目の「【前編】子どもの5人に1人。子育てカウンセラーに訊く、「HSC」とは?」では、HSC(=Highly Sensitive Child/ひといちばい敏感な子)によく見られる傾向や見極め方などをHSC子育てカウンセラーの高野あゆみさんに教えていただきました。
   
HSC子育てカウンセラーの高野あゆみさん
(写真:HSC子育てカウンセラー 高野あゆみさん)

後編では、HSCの子どもとの関わりのポイントや、保育者に欠かせない保護者との連携についてご紹介します。

保護者との連携のポイント

保護者、子どもと話す保育士
保育者として、保護者に子どもの状況を伝えることも大切な役割のひとつです。もし園にHSCと思われる子がいた場合、どう伝えていけば良いのでしょうか。

さりげなく伝える

子どもの状況を伝えることは大切ですが、医師による診断などではないためなかなか伝え辛いことですよね。

「保護者の中には、HSCのことを知って『救われた!』と感じる方もいれば『うちの子はそうじゃありません』と抵抗を示す方もいます。そんな中で直接的に『お子さんHSCですよ』と伝えるのは難しいですよね。

そのため、ここでは“さりげなく伝える”ことがポイントです。例えば保護者向けの本棚があれば今月のおすすめの本としてHSCの本を置いたり、先生たちが研修で学んだことを“HSCについて学びました”とおたよりにして出すなど、全体に向けて発信していくといいかもしれません」

まずは保護者にもHSCの知識をつけてもらうことが、理解の第一歩かもしれませんね。

こまめな連携を

保育者、保護者間で子どものHSCについて共通の認識を持った後は、こまめな連携が大切なポイントになってくると高野さんは言います。

「うちの娘の場合は保育士さんが毎日『こういう場面で、こういう流れで、お友だちがこう言ってこうなりました』ということを細かくお話ししてくれました。こんな対応をしたら良かった、ということも園と家庭で共有し合っていました。

日々の生活の中の細やかな連携は、子どもにとって良いだけでなく保護者にとっても話せる場になってホッとします」

子どもを共に保育する立場として、悩みや喜びを共有することはとても大切なことですね。


保育者としてすべきこと

おもちゃで遊ぶ子どもと保育士
5人に1人と言われるHSC。もしかすると園の中にも該当する子がいるかもしれません。また、これから先そのような子どもに出会うかもしれません。そのようなとき、保育者がすべきことは何でしょうか?

個々のペースを尊重する

高野さんは、保育者として大切にしてほしい対応のポイントは2つあると考えています。それは、無理強いしないこと」「その子のペースを尊重すること

集団活動をしているとどうしても全体での進みを重視してしまいますが、個々のペースを受け止め尊重していくことが大切。HSCに限らず、普段の保育から忘れずに心に留めておきたいことですね。

園内での連携

園の職員全体での理解や情報共有なども大切なポイントになるようです。

「こんな刺激に敏感、こういう場面で癇癪を起こしやすい、こういう対応をすると良い、などを園内で共有してもらえると良いですね。分かってくれている人がいるだけで子どもも安心します」

担任だけでなく他のクラスの職員も情報を知っておくことで、HSCの子は園内に自分の安心できる場所を見つけられるのかもしれません。園全体で見守っていく姿勢を持てると良いですね。

保育者が抱える疑問と解決方法

Q&Aの写真
HSCの子どもと向き合う中で、保育者が抱えやすい悩みもあります。実際に保育園に研修に行った際、高野さんが現場の保育士さんから受けた質問と回答を教えていただきました。

判断するのが難しい

HSCの見極めとして23のチェックリストをご紹介しましたが、それでも園で見極めるのはなかなか難しいですよね。

「私の考えでは、無理に判断をする必要はないと思っています。本人が苦しんでいる、園生活の中で困難を感じる、そんなときに『もしかしたらHSCかもしれないな』と先生が知っているだけで違うはずです。

HSCと判断したからこうしなきゃいけないとか、これはしなくていいとかではなく、子ども一人ひとりの違いを受け止めることが一番重要だと考えています」

“HSCだから”と判断することで対応を考えるのではなく、目の前の子どもの状況に合わせた保育をするという考えで向き合っていきたいですね。

チャレンジも大切だけど…

「無理強いをしない」「その子のペースを尊重する」という2点を大切にというのはもちろんですが、チャレンジをして成長する体験を積ませていくことも保育者の大切な役割ではないかと疑問が挙がったそうです。

「その通りで、チャレンジと体験はとても大切です。しかしその前に、チャレンジをするには土台が必要だと思っています。子どもがチャレンジに向かえない場合は、まず保育者との間に信頼関係が築けているか、子どもが安心してチャレンジできる環境が整えられているか、ということを見直してほしいです」

気持ちを受け止めて待ってくれる先生たち、失敗しても大丈夫と思える環境は、子どもにとって大きな支えとなりますね。

目に見えないから難しい

HSCは目にはっきり見えるものではなく、検査などで分かるものでもないため対応が難しいと感じている先生も多いようです。

「現場の先生から、『外からはっきりと分かるものでないため、その子だけ別の対応をすることが難しいです』と相談を受けたこともあります。しかし目に見えるかどうか、診断されるかどうかではなく、くり返しになりますが個々に合った必要な配慮をしていくことが大切です」

HSCについて知ることを機に、一人ひとりの違いを受け止め認めていくことの大切さを考えられると良いですね。

今、保育者に伝えたいこと

笑顔の子ども達
HSCについて学び、さまざまな場所で発信している高野さん。今HSCの子どもと向き合っている、そしてこれからHSCの子どもに向き合うかもしれない保育者の方々に伝えたいことをお聞きしました。

視点を変えて向き合って

高野さんは、「HSCの子どもと出会ったとき、『なんでこの子は他の子と同じことができないんだろう』と考えるのではなく、『どうしたらこの子の才能を伸ばせるのか』を考えることにエネルギーを使ってみてください」と話してくれました。

できないことに目が行きがちですが、個々の特性をプラスに変えて活かしていくにはどうするかという視点に変えていくことが、保育者に求められることかもしれません。

愛情を注ぐ関わりを

「『あなたはそのままで良いんだよ』ということをたくさん伝えてあげてください。気持ちを汲んでもらえたり、愛情に満ちた関わりを受けていると良いところがたくさん出てきます。

保育園に通う時期は、人格形成をする大事な時期だと言われてますよね。1日の大半を過ごす保育園で、保育者の皆さんは子どもの人生を大きく左右する大切な存在です。HSCという気質を持った子がいることを知り、受け止める関わりを大切にしていってくださいね」

HSCの子どもは、養育者から受けた関わりがその後の成長に大きく影響しやすいそうです。保育者の皆さんの愛情を持った関わりが、子どもの自信や幸せに繋がっていきます。保育では子どもの気持ちを受け止めることが大切だと言われていますが、今一度そのことを胸に刻んでおきたいですね。

子どもを理解して受け止める

高野さんのお話しの中でくり返し挙がったのは一人ひとりの違いを受け止めること。HSCかどうかが問題なのではなく、さまざまな子どもがいる中でそのような気質を持った子もいるという認識を持つことが一番大切なことかもしれません。

目の前の子どもたち一人ひとりの違いや個性を理解し、受け止め、愛情をたくさん持って向き合っていきたいですね。

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【プロフィール】
高野 あゆみ(たかの あゆみ)
7歳・4歳の子を育てる母。HSC子育てカウンセラー。
娘の登園渋りがきっかけでHSCを知り、10年勤めた会社を退職。HSCの親子が心の底から自分らしくいられる世界を目指して、2018年10月に『HSC幸せ子育てサロン』を立ち上げ。親御さん向け個別相談セッション、保育園・幼稚園・教育機関向け勉強会などの活動を行っている。
心理カウンセラー、チャイルドカウンセラー、家族療法カウンセラー、保育士資格保有。
【HSC幸せ子育てサロン】http://hsc-kosodate.com/
【Insta】https://www.instagram.com/aym_1130/
※2020年秋以降、恵比寿にて「HSCの作品展」を開催予定!詳細はこちら。

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