熱中症の原因
最初に、熱中症になる原因について子どものならではの特徴や、環境面から確認していきましょう。①子どもならではの特徴

人間の身体の機能には、熱がこもると皮膚の表面から熱を逃がし、汗を蒸発させて体温を下げる働きがあります。しかし子どもに関しては、この体温調整機能が未熟であることから、暑さを感じてから汗をかくまでに時間がかかるため、熱中症のリスクが高くなります。また、子どもは全身に占める水分の量の割合が高く、代謝が活発である点からも注意が必要です。
②環境面

周囲に屋根や樹木など日陰になる場所がなく、日差しが照り付けている環境の場合は特に注意が必要です。子どもは遊びに夢中になり、身体の異変に気付かないこともあります。
また大人と比べて身長が低い子どもは、地面から受ける太陽光の反射の影響も大きくなります。地面に近いところの気温が上昇するとともに照り返しの影響を受ける子どもたちは、かなりの暑さにさらされています。そういった視点から注意することが必要です。

熱中症の症状
熱中症の症状には、大きく分けて「熱失神」「熱けいれん」「熱疲労」「熱射病」の4つがあります。高熱とそれに伴う意識障害が見られる場合は、早急な対応が必要です。子どもの異変にいち早く気付き、どのような対応が必要なのか判断できるように、それぞれの症状を知っておくことが大切です。①熱失神の症状
炎天下や蒸し暑い環境になると、身体は体温を下げるため血管を広げ、熱を下げようとします。血管が広がることで、体温を下げることが期待できますが、一方で脳への血流が減少するため血圧が低下してしまいます。脳への血流が減少すると、めまい・唇のしびれ・顔面蒼白などの症状が見られます。②熱けいれんの症状
大量の汗をかくと、水分とともに塩分(ナトリウム)が失われます。水分を補う際に塩分が含まれない飲み物を飲むと、血液中の塩分(ナトリウム)濃度が低下し、筋肉の収縮に必要な塩分(ナトリウム)が不足します。その結果、手足のしびれや足がつるといった症状を引き起こします。こちらは、発熱の際に起こる「熱性けいれん」とは異なります。③熱疲労の症状

大量の汗をかいて、水分と塩分(ナトリウム)が過剰に失われ、水分がとれない状況が続くと脱水に陥ります。脱水により体内の水分量が減少すると、循環する血液量が減るため、頭痛・吐き気・倦怠感などが起こります。
④熱射病の症状
熱射病は熱疲労が重症化した段階で、とても危険な状態です。身体にこもった熱をうまく拡散できなくなり、40℃以上の高熱・発汗停止・意識低下障害や異常行動などの症状が見られます。ショック状態(※)になる場合もあるので注意が必要です。※ショック状態とは
血液の循環が悪くなり、全身の組織に十分な酸素が届かなくなる状態です。ショックの原因には、血液量の減少・血管の過度な拡張などがあります。ショックは重篤な状態で、放置すると死に至ることもあります。
熱中症の対応
ご紹介したように、熱中症の症状には軽度から重度のものまであります。意識がなく痙攣しているなどの重篤な症状がある場合は、すぐに救急車を呼びましょう。到着を待っている間も、身体を冷やし続けることが大切です。ここでは応急処置と予防策について見てみましょう。熱中症の応急処置
- 涼しい場所に移動する
- クッションなどで足を高くし、頭が低くなるように寝かせる
※足を高くすることで、脳への血液の循環を保つことができます - 意識があり、誤嚥(飲み込んだ物が誤って肺に流れてしまうこと)のリスクがなければ水分補給をさせる
- 衣服をゆるめ、身体の熱を発散させる
- 氷のうや市販の保冷まくらなどで動脈の流れる首・脇の下・太ももの付け根を冷やす
※動脈(流れが早く太い血管)を冷やすことで、冷却された血液がすばやく身体を循環し、体温上昇を抑えることができます

予防・対策
熱中症は予防できる病気です。特に意識したい熱中症対策について解説します。①暑さ指数(WBGT)を確認する
暑さ指数(WBGT)とは、熱中症を予防することを目的とした指標です。数値によって注意すべき日常生活や運動の指針が分かるほか、熱中症の警戒レベルを把握することができます。園ではWBGTを確認してから活動内容を決定し、暑い日は無理をせず、外遊びを控えることも大切です。

②水分補給
「喉が渇いた」と感じた時は、既にかなり水分が失われた状態です。喉が渇く前に少しずつ水分と塩分を補給させ、すぐに水分補給ができる環境にしておきましょう。活動の前後はもちろん、活動中にも水分摂取の時間を設けると良いでしょう。一日に必要な水分量は、乳児では120~150ml/kg、幼児では90~100ml/kgが目安になります。指標の一つとして、こまめな水分摂取を心がけましょう。

③日陰・屋内で休憩する
子どもは大人に比べて照り返しの影響を強く受けていることに留意し、適度に日陰で休憩する時間を作りましょう。
屋内でもエアコンや扇風機を活用し、涼しい空気が循環できるよう温度は22~26℃、湿度は40~60%に保てるようにすると良いでしょう。
保護者への連絡
熱中症は、症状が軽く見えても時間の経過で重症化する場合もあります。いつもと様子が異なる場合は、子どもの対応と合わせて保護者に連絡しましょう。保護者は、子どもがどのような状態でいるのか不安になっていることも考えられます。「いつ」「何をしていた時に」「どのような状態になったのか」について詳細に伝えるようにしましょう。
★ 熱中症の症状と応急処置をポスターにしました ![]()
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季節に合わせた対応を
季節の移り変わりを楽しみながら、子どもは成長していきます。季節に合わせて必要な対策や対応をとり、子どもたちがいきいきと楽しく、安全に過ごすことができるようにしたいですよね。日頃から園内で話し合い、充実した園生活が送れるよう支援していきましょう。>>この記事へのご意見・ご感想をお寄せください
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