エピソード記録とは
日々子どもの様子や状態を記録するものとして、日誌や連絡帳などがあります。それらは1日どんなことをして遊んでいたか、なにができるようになったかなど、比較的おおまかな記録になっていることが多いですよね。それに対して“エピソード記録”は、ある一場面を切り取って、詳しく子どもの様子や感じ取った心情、そしてそれを見た保育士自身の心情を言語化していくものです。エピソード記述とも言われています。
エピソード記録のメリットは?
一見すると「日誌と一緒で良いのでは?」「わざわざ書く意味は?」と、少し面倒に感じてしまうかもしれませんが、実は良い面がたくさんあります。子どもの成長が見えやすい
ある一場面に注目して記録をすることで、子どもの成長が見えやすくなります。例えばお友だちとのままごとでの出来事を切り取った場合、最初は頑なに道具を貸そうとしなかった子どもが、あることをきっかけに自ら貸す姿が見られたとします。このとき、子どもの心の中でなにか変化があったはずですよね。ひとつの遊びの中でも、子どもの成長が詰まっていることに気付くことができます。子どもへの理解が深まる
では、上で挙げた例の中で、子どもがお友だちに道具を貸そうと思ったきっかけは何だったのでしょうか。保育士はエピソード記録をする中で、そのことを考える必要があります。すると、自然に子どもの心の内を考えることになり、理解が深まっていきます。保育を振り返ることができる
エピソード記録には、そのとき保育士はどのような対応をしたのかまで書いていきます。書きあがったものを改めて読んでみたり、園内で話し合ったりすることで、保育を振り返ることができます。そこから「次はこんな声かけが良いのではないか」「ここはこうすると子どもの主体性が育つのではないか」など、次の保育につなげていくことができますね。エピソード記録の書き方
エピソード記録を書くときには、3つのポイントがあります。- 背景
- 具体的なエピソード
- 考察
また日誌と大きく違うところとして、考察を入れるという部分があります。エピソード記録には、「保育士が何を感じたのか」「子どもの言動を受けての想いや考え、願い」などを書いていきましょう。ここには、「このような声かけをしたけれど、あれで良かったのか…」という悩みや失敗も入れてOKです。
エピソード記録の実例<2歳児クラス>
2歳児クラスでままごとをしていたときのことです。園で誕生日会を行ったことをきっかけに、誕生日パーティーが流行っていて、
みんなでままごとのケーキを集めてパーティーごっこをしていました。
Hくんは自分がケーキを作って私に渡したい、と思ってくれていたようで、
ままごと道具の中にあるケーキのパーツを全て集めて
ケーキを作り始めました。
そこにMちゃんがやってきて、「みんなで!」と言って
Hくんからケーキを取り上げてしまいます。
Mちゃんはみんなで一緒にケーキを作りたかったのです。
もちろんHくんは使っていたものをとられたことに怒ってケンカが始まり、
とってはとられての繰り返しでお互いに譲りません。
最初はケガだけはないように見守っていたものの、
落ち着く様子がなかったので声を掛けました。
「先生はみんなで仲良く作ったおいしいケーキが食べたいなあ。
ケーキだけじゃなくて、いろんなご飯も食べたいな」
するとHくんがMちゃんに、「はんぶんこ」と言って
ケーキのパーツの半分を渡しました。
それを受け取ったMちゃんは、「一緒に作ろ」と言ってHくんの手を引いて
キッチンまで行き、なにやらふたりでご馳走を作っている様子。
ままごとの食材は半分に切れるので、必ずどれも半分ずつにして
一緒にお皿に盛り付け、私のところまで運んでくれました。
なんと最後には、お片付けまで協力して行ってくれたのです。
あのとき「貸してあげて」「一緒に遊んでね」という
直接的な声かけではなく、
間接的に「仲良く作ってほしい」という言葉をかけたことで
その意味をしっかりと理解してお互いに協力する姿が見られました。
子どもは大人が思う以上に言葉の意味を理解し、
自分たちでどうしたら良いのか考える力が育っているのだと感じた場面でした。
保育をより良くするために
エピソード記録は、保育をより良くしていくために有効です。「面白い」「すごい」と感じたことがあったら、メモをとっておくと忘れずに言語化することができますよ。エピソード記録を通して、子どもの育ちや持っている力に触れてみてくださいね。【その他保育知識のおすすめ記事はこちら】