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スウェーデンの「子どもの権利」保育現場での取り組みをインタビュー【スウェーデンの保育】

スウェーデン在住で2児の母であり、プレスクールで保育士として働くよしざわたかこさん。スウェーデンの幼児教育を中心に保護者の目線と働く目線とを織り交ぜながら、現地のリアルな情報を紹介してもらいます。>>連載の記事一覧はこちら

今回のテーマは「子どもの権利条約」

11月20日は「世界子どもの日」。子どもの権利条約のために行動する日です。

今回は、特別ゲストとしてスウェーデンの野外保育園で保育士をされている巽 朝菜(たつみ あさな)さんをお迎えして「子どもの権利条約」を皆様と学んでいきたいと思います。
 
スウェーデンの野外保育園で保育士をされている巽さん(スウェーデンの野外保育園で保育士をされている巽さん)
「子どもの権利条約」とは?
1989年「子どもの権利条約」国連で採択された条約で、「子どもを一人の人間として認め、自己決定を含めた権利の主体として捉え、大人と同じく人として尊重され大切にされ、人権が保障されていること」を約束しています。4つの原則(生存・生命・発達の権利、子どもの最善の利益、子どもの意見の尊重、差別の禁止)のもとに54条の項目から成り立ちます。スウェーデンの学校庁は特にこの4原則を重要だとしています。

スウェーデンでの子どもの権利条約の浸透

スウェーデンは子どもの権利条約の成立に尽力した国の一つです。どのような歴史をたどってきたのでしょうか? 


1979年に世界ではじめて子どもへの体罰禁止を法律で定め、それまでの「体罰はしつけの一部」という社会全体の規範を変えていきました。

特に70年代から「子どもを一人の人間として認め、自己決定を含めた権利の主体として捉える」という子ども観へと変わっていき、そこが大きな転換点だったといえます。

2020年には、子どもの権利条約が国内で法制化され、子どもの権利の法的地位が強化されています。

巽さんの勤務先の園ではどのような取り組みをされていますか?


子どもの権利条約にまつわる活動を月1回はすることにしました。責任者を決めて、企画、活動、記録と保護者も含めた情報発信をします。

子どもの権利条約に関するたくさんの教材がユニセフやセーブザチルドレンから提供されていたり、絵本も普及しているので、それらを利用しながら子どもたちの興味に合わせた活動を進めています。

教材が普及したおかげで、小学生の8割が子どもの権利条約を知っているという調査結果もあります。それほど就学前からの取り組みは大切だといえます。 

実際に行った活動やヒントを教えて下さい。 


日々、子どもたちはたくさんの葛藤や問題に出会います。子どもと保育者はそれを取り上げ、話し合い、保育活動につなげていくことが大切です。

大人が丁寧に権利について語っても、子どもが自分のこととして捉えるのは難しいです。身近な例として色の活動を紹介します。 

「ピンクは女の子の色?」

バーバパパの絵本

ピンク色のキャップをかぶって登園したら、友だちに女の子の色だとからかわれ、ピンク色を身に着けるのを避けるようになったと保護者から報告がありました。 
 
その時にバーバパパの絵本を読み、色に性別はないこと、誰もが好きなものを選べる自由があることを話し合いました。 
 
さらに森の中にある色を自分の服に見立てて探索する活動(写真下)を通じて、一人ひとり違うということへの理解が徐々に深まっていきました。 
森をテーマにした活動の写真

私が「好きな色はみんな違うんだよね」とサムリング(※) で話すと、ある子が「好きなこともみんな違うもんね」と言った時には、とても嬉しかったです。 

(※)子どもたちが集まって輪になって座り、歌をうたったり、本の読みきかせをしたり、対話や振り返りをする時間のこと 。 
 
子どもと個別の場面で話すと、より響くとも感じます。

例えば、友だちを叩いてしまった時。「叩くのはいけないこと、あなたも誰からも叩かれない権利があるんだよ」と話すことで、子どもがハッとすることもありました。

権利を知ることに年齢の垣根はない

1〜2歳児でも活動はできるのでしょうか? 

 
もちろんです。権利について話す場にいることが重要だと考えているので、よく縦割りのサムリングを行います。彼らもそこで話されていることを聞いています。

他には、クラスの写真をパズルにして、一人ひとりの顔のピースをつなげていくと社会になることを遊びを通して学んでいきました。 
 
つけ加えると「権利」という言葉もそのまま使っています。小学校でその言葉に出会ったときに、そこで「知っている」と思うことが大切です。 

日本の保育現場でできることは?

ランタンを灯した様子

最後に、日本で子どもの権利条約の認知度をあげていくために必要なことは何だと思いますか? 

 
とにかく啓発活動です。そのために、先生たちがいつでも使える教材の開発と普及が大切な1歩だと思います。 
 
あとは、行事を通じての啓発活動です。スウェーデンでは「世界こどもの日(11月20日)」に、園で子どもたちが廃材のガラス瓶を使ってランタンを作り、夕方、地域の広場に集い火を灯すイベントが各地で開かれています。 
 
そして、私も自身のInstagramで子どもの権利条約をみんなに知ってもらうために、「#世界子どもの日」とハッシュタグをつけて投稿することを呼びかけています。 

「子どもの権利条約」のまとめ 

今回は「子どもの権利条約」のことを巽朝菜さんにお話を伺ってきました。同じスウェーデンの園ですが、巽さんの園はより意識的に「権利」や「価値」という言葉を子どもたちに向けて発信しているところに驚きました。 
 
日々の生活の中で、保育者は様々な価値観を子どもたちに発信しています。その時に、「これは子どもの権利条約の何条に当たるのかな?」と気にする視点を持つことが大切なことだと思いました。 
 
 巽朝菜(たつみ あさな)さんプロフィール
ストックホルムの森で「悪い天気なんてない。服が悪いだけ」を実践するアウトドア園にて保育士として活躍中。
国際認証エコスクール取得。
▼Instagramアカウントはこちら https://www.instagram.com/sweden_childcare/

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よしざわたかこ

この記事を書いた人

よしざわたかこ

スウェーデンの保育士。東京でOL(10年)→出産→退職→幼児教育を学ぶために再度大学生→2016年に家族でスウェーデン移住→スウェーデン語をゼロから学び、2019年5月からプレスクールに勤務中! 移住後は、スウェーデンの幼児教育事情をブログにて配信中。
<Twitter>
@swedenhoiku
<Instagram>
@sweden_hoiku

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