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先生が近付くと逃げてしまう4歳の女の子【理論解説③】

どう考える?先生が近づくと逃げてしまう4歳の女の子【理論編③】
言語聴覚士として長年児童発達支援に携わってきた原 哲也さんのコラムです。加配保育士さんへのアンケートで挙がった「気になる子」への関わり方について解説します。
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前回に引き続き、加配保育士さんから相談のあった「家ではお話をするのに、園ではひとこともお話をしない美知瑠ちゃんとの関係づくり」を考える「理論編」の3回目です。

<前回の記事はこちら>

保育士の「願い」を叶える関わり

保育室で悩む保育士
前回は、子どもの「願い」を叶える関わり「ではない」関わりについて
  1.  子どもに言うことを聞かせよう、子どもを変えようとする関わり方
  2. 子どもに流される関わり方
が、子どもの「困った行動」の原因であることがある、とお話しました。

①と②の関わり方は一見真逆のようですが、共通点があります。

それは、関わりの目的が、「保育士の」「願い」を叶えることになっている点です。

①子どもに言うことを聞かせよう、子どもを変えよう、とする関わり方
このとき、保育士の頭にあるのは「片づけさせたい」「黙らせたい」という保育士の「願い」だけで、子どもが今、何をしたいのかという視点はありません。

②子どもに流される関わり方
子どもからの拒否を恐れている関わり方であり、そこには傷つきたくない、自分を守りたいという「保育士の願い」が見えます。

その結果、子どもは「社会と折り合える自分」になれません。

保育士の「願い」ではなく子どもの「願い」を叶えてくださいと言うと…

 「困った行動」の相談を受けた保育現場でこのような関わりを見ると私は、具体的なアドバイスとともに、「『困った行動』を変えたいというのは『保育士の「願い」』です。それは棚上げして、まず子どもの「願い」を知ってそれを叶えてください。」と言います。
願いを叶えてほしい幼児
すると先生方は困惑した様子で
  • 「困った行動」はやめてもらわないと困る
  • 子どもの言い分を聞いていたら、収拾がつかない
  • 子どもが嫌でも教えなければならないことがある
  • 私は子どもにこうなってほしいという理想を持って保育をしている
などと言われます。

保育の場は「子どものための場」

保育の場は子どもたちの場
けれど、このテーマの冒頭でお話したように、保育の場は、保育士の「願い」を叶える場ではなく、徹頭徹尾、今と未来の「子どものための場」です。

だから、子どもの「尊重」「安心」「信頼」の「願い」を叶えることが最優先です。

また再々お話しているように、発達障害のある子が何かを学ぶことができるのは、信頼する相手との関係の中でだけです。そして、彼らが信頼するのは、自分の「願い」を理解し、「願い」が叶うように助けてくれる人だけなのです。

その意味でもまずは子どもを「尊重」し「安心」を保証し、それによって子どもの「信頼」を得ること、それが最優先なのです。

子どもの「願い」を叶える対応は?

では、先月の具体例でいうと、どうすることが、子どもの「尊重」「安心」「信頼」の「願い」を叶えることなのでしょう。

おもちゃを片づけない

片づけをする保育園児
<NG例>
「いつまでも、お部屋のおもちゃのお片づけできないお友だちは、明日遊ばせないよ!」

<願いを叶える対応例>
おもちゃ楽しかったね。
この箱に片づけたら明日すぐ遊べるから、ここに入れよう。
先生も一緒に片づけるよ。

<ポイント>
  • 「楽しかったね」と子どもの気持ちを「尊重」する
  • なぜ片づけるか、なぜその行動をしなくてはいけないかを子どもに伝える。:「安心」「信頼」
  • 先生も一緒に片づける、というサポーティブな関わり:「安心」「信頼」

先生のお話を聞かずしゃべっている

これからおはなしを始める保育士
<NG例>
「先生がお話しする時は、お口は??チャック!」

<願いを叶える対応例>
お話ししたいね。
でも、その前に先生からみんなに聞いてほしいことがあります。
よーく聞く時は先生を・・と目を指さす→「見る~」と子どもが言う。
お話し聞く時は?と耳を指さす→「聞く~」お口は?→「閉じる~」
みんなの話は先生のお話の後に聞くね。

<ポイント>
  • 今お話をしたいという子どもの気持ちの「尊重」
  • 何をすればよいか=「口を閉じて先生を見て聞く」をわかりやすく伝える=「安心」「信頼」
  • 自分のしたいことも尊重される(あとで話を聞いてくれる)ことを伝える=「尊重」「安心」「信頼」

ほかの子のおもちゃを奪う

お友達におもちゃを取り上げられる保育園児

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原 哲也(はら てつや)

この記事を書いた人

原 哲也(はら てつや)

言語聴覚士・社会福祉士 一般社団法人WAKUWAKU PROJECT JAPAN代表理事。児童発達支援事業所「WAKUWAKUすたじお」代表。1966年生まれ、千葉県出身。大学卒業後にカナダの障害者グループホーム勤務、東京の障害者施設職員勤務を経て、29歳から小児障害児リハビリテーション専門職として、長野県の病院や市区町で発達相談や障害児の巡回相談業務に携わる。『発達障害児の家族を幸せにする』を志に、全国を駆け回り、乳幼児期から青年期までの発達障害児と家族の応援をおこなっている

<WAKUWAKUすたじおHP>
http://www.waku-project.com/

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