今回は、子どもたちが大好きなシャボン玉です。発達障害のある子どもにとっては、楽しく遊べると同時に、療育の観点からもいろいろな意義があります。具体的な遊び方と遊んでいるときに意識しておきたい意義、遊び方のポイントを解説します。
1.シャボン玉遊びの遊び方

●ストロー式:ストローの先にシャボン液をつけ、ストローを吹いてシャボン玉を作る
●リング式 :リング状のシャボン玉器をシャボン液に浸してそれを大きく振ってシャボン玉を作る
他に、ピストル型や電動式のものなどもあります。
「シャボン玉セット」の使用上の注意にしたがって、誤飲などに気をつけて遊びます。
2.シャボン玉遊びの意義

発達障害のある子どもの中には、さまざまな視覚刺激や聴覚刺激に反応してしまい、一つのものを見つめたり、ターゲットとするものを目で追う経験に乏しい子どもがいます。
シャボン玉遊びでは、そのような子どももシャボン玉を「じっと見る(固視)」「飛んでいく軌道を目で追う(追視)」経験をたくさんすることができます。
②共同注意
共同注意とは、「2人の人が同じものを見ること、注目すること」です。例えば、保育士が空を飛ぶ飛行機を見上げ、「ほら、飛行機だよ」と言い、子どもが同じ飛行機を見上げて、「本当だ!飛行機だ!」と言うようなことです。
共同注意は、ことばの獲得の上でとても大切な行動で、定型発達児の場合、8~10か月の頃から始まります。
しかし自閉症スペクトラム障害の子の場合、「ほら、〇〇だよ」という人の投げかけに応じて、その時自分が注意を向けているものから注意の方向を変えて、別のものを見る、他の人と同じものに注目することが難しい、つまり共同注意が難しいことが多くあります。
この点、シャボン玉遊びは自閉症スペクトラム障害の子どもの興味を引くことが多く、共同注意を得やすいのです。子どもと周囲の人が同じシャボン玉に注目し、シャボン玉遊びを一緒に楽しむことができるようになります。
③ことばの理解を促す
子どもと大人が同じものを見る。その時、大人が見ているものや事柄について、ことばを添えることで、子どもはことばを覚えます。
例えば、しゃがんでじっと蟻を見ている子どもに対して、「“アリ”いたね」と大人がことばを添えることで、子どもは「あれは、“アリ”っていうんだな」と覚えるのです。
次に、蟻が歩く様子を見ている子どもに「アリさん、歩いているね」と大人が言うことで子どもは「ああいう様子を“アリが、あるく”と表現するのだ」と知ることができます。
④要求を引き出す
シャボン玉を吹くことができない子どもの場合、「もっとシャボン玉遊びをやってほしい」という要求を引き出すことができます。ひとり遊びが多く、なかなかやり取りの経験ができない子どもの場合、「やってほしい」という要求表現を引き出すことができる貴重な機会が作れます。
⑤模倣(まね)を引き出す
例えば子どもは、母親が黄身が壊れないように卵の殻を割る様子を見て、それを「まね」することで、卵を割る難しさやコツを学びます。
このように、私たちは周囲の人を「まね」することで、日常生活動作や遊び方などさまざまなことを学ぶのです。
しかし発達障害のある子の場合、「まね」をあまりしないので、その結果、日常生活動作の獲得が難しかったり、いろいろな遊びを覚えたりすることができず、遊びがどうしてもワンパターンになっていることが多くあります。
「まね」は大切だとはわかっていても、なかなか「まね」してもらうことができない。けれども、子どもがシャボン玉遊びに興味があれば、「まね」を引き出すことができます。興味があること(=自分もシャボン玉が作れる)ならば、子どもはそれをしている人の行動を一生懸命「まね」するからです。
3.遊び方のポイント|具体的な声かけと注意点

関わる人は、子どもと視線が合うような高さまで体を低くします。そして最初に「見てー」と、子どもの注目を得ることばかけをします。
②シャボン玉をじっと見ることができる時間を十分にとる
シャボン玉をゆっくり膨らませます。そうすることで、子どもがシャボン玉をじっと見る時間を取ります。
③子どもの視線を追いながら、ことばを添える
子どもの視線を追いながら子どもの関心を推し量り、子どものことばの理解に応じたことばを添えます。
・「シャボン玉だね」ということばを聞かせる
・シャボン玉がふくらむ様子にびっくりしている子どもには「大きいね」「びっくりしたね」ということばをかける
・飛んでいく様子を目で追う子どもには、「ふあふあふあふあ」や「飛んで行ったね」と言ってみる
子どもの興味やことばの理解に合わせたことばかけがとても大切です。
④要求を引き出す
シャボン玉が消えてなくなった「後」も重要です。
子どもが「シャボン玉もっとやって」と思っているかどうかを観察します。ここでは時間をゆっくり取ってください。
「もっとやってほしい」という意図で子どもが視線を向けてきたら、まずニッコリと笑顔で応じてください。
そして、「やる?」と聞いて、子どもの「やってほしい」という要求表現を引き出します。要求表現は、「ウン」や「はい」という返事や手を上げる、コクンとうなずく、人差し指を立てた「もう一回」というサイン、先生へのハイタッチ、お願いのポーズなど、子どもが表出しやすいもので良いのです。
子どもが要求表現の動作を覚えていない時は、先生がモデルを示して(例えば「もう1回ねと言いながら人差し指を立てる」など)、子どもがそれを「まね」したら、シャボン玉を吹くという約束にしてもいいです。
⑤「まね」を引き出す

ただ、ストロー式だと、子どもの中にはストローを「吹く」ことができず、シャボン玉液を吸ってしまう子どももいます。そのような場合は、リング式を使います。
このタイプのシャボン玉は、振り方が多少違っていてもシャボン玉ができます。根気強く「こうやるんだよ」とやり方を見せて、「まね」を引き出してください。
最後に

シャボン玉遊びは楽しいです。関わる大人がポイントを踏まえて関わることで、シャボン玉遊びは子どもにとってもっと楽しく、そして子どもの成長につながるものになります。シャボン玉遊びの意義やポイントを踏まえて、大人も子どもと一緒にシャボン玉遊びを心から楽しんでください。「シャボン玉、楽しいね。」「シャボン玉、きれいだね」「シャボン玉、おもしろいね」そんな時間を共有してほしいと思います。
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