今回のお悩み:気持ちの切り替えが難しい子どもの対応
えだまめあみ(保育士/10年目) さんからの質問
1歳児担当の小規模保育園の保育士です。 手洗いの時間になっても壁を横目でみて走っている子がいます。なかなか、そこから手洗いには行けず、行動を制止されると、現実逃避をして保育士とは反対の方に顔を向けたりしています。
そのうち保育士が手遊びを始めると笑ってやろうとします。気持ちの切り替えが難しい場合、どのように声をかけてあげると良いのでしょうか?
専門家からえだまめあみさんへの回答
ご質問をいただきありがとうございます。1歳児クラスの子どもたちは、自分のやりたいことを優先し、他者からの声かけにそえるかどうかは、その内容が自分にとって興味のあることという段階です。また、1歳児クラスという集団では、生まれ月によっても発達の段階は大きく違うでしょう。このお子さんの場合、おそらく手遊びは大好きなので参加し、手洗いは好きではないからやりたくないといった感じでしょうか?
行動の理由を考えてみよう
さてここで考えなければいけないのは、なぜ手洗いをしたくないのかという行動の理由を考えることが大切です。文章からでは少ない情報にはなりますが、この範囲で予想を立ててみましょう。- 行動の理由その1:手に過敏さをもっていることから、水に触れることが痛いと感じ、嫌がっている。
- 行動の理由その2:壁を見ながら走ることで目からの刺激を楽しみ、目遊びという感覚遊びに没頭し切り替えることが出来ない。
行動の理由その1:手に過敏さを持っている場合
行動の理由その1の場合、感覚の過敏さは以前のコラムでもお伝えしているように生理的欲求と同レベルであることから、我慢させることは出来ません。そのため、不快さを取り除くまたは避ける必要があります。しかし、外遊びの後等、手が汚れた状態をそのままにしておくことも出来ません。ここで大切なのは、やらなければならない「手洗い」という行動を、いかに別のアイデアで代替えできるかという大人側の思考の柔軟性です。 例えば、触覚的な過敏さをもっているお子さんは冷たい水だと「痛い」と感じることがあります。その場合は、あらかじめぬるま湯を容器に準備しておき、水ではなくぬるま湯で手を洗えるようにする。または、蛇口から出る水流が痛いかもしれないと仮定し、たらいに入れたぬるま湯で手を洗えるようにするのも良いかもしれません。
行動の理由その2: 手洗いよりも楽しい感覚遊びから切り替えられない場合
はじめに1歳児の社会性の発達でもお伝えしたように、自分のやりたいことが第一優先なので、このお子さんのやりたいことを手洗いにしてしまえば良いわけです。例えば、手遊びが好きということなので、手洗いの手遊び歌を替え歌等でつくり歌に合わせて手洗いをする、または自分の手を洗うのは嫌でもキャラクターの指人形等を準備して「●●マンをゴシゴシしてあげようねー」とフィギアに泡をつけた状態で本児の前に見せます。
手洗い場まで誘導し、●●マンをあらっているつもりがいつの間にか自分の手も洗っていたなど、手洗いをルールではなく、遊びにしてしまうという支援が良いかと思います。
アイデアでカバーすることも
ルールにそって行動することがまだ難しい1歳児さんには、手が汚れているから洗わなくてはいけないという考え方ではなく、手洗い場が楽しそうだから思わず手を洗いに行きたくなるという考え方で関わっていくと良いと思います。また、感覚の理由、切り替えの理由どちらでもお手拭きで先生がさっと済ませるということも一つのアイデアだと思います。
行動には必ず理由がある
人間の行動には必ず理由があります。やらない理由は何なのかを考えると共に、その子が好きなこと、興味あることは何かをよく観察し、興味や好きを組み合わせていきながら、子ども自身が自らチャレンジしてみたくなる環境を整えることが大切だと思います。手遊びは好きという、その子が好きなことも理解出来ている先生ですから、きっとこの子の興味に合わせたあたたかな支援ができると思います。トライアンドエラーを繰り返しながら、前進していってほしいと思います。応援しています。
井上さんに直接聞いてみたい発達支援のお悩み募集中
普段の保育で感じている発達支援のお悩み、井上さんに質問してみませんか? このコラムも実際に寄せられた質問にお答えしています。ほいくisでは、保育者のみなさんが抱える発達支援のお悩みを募集し、児童発達支援管理責任者/保育士/発達支援専門士として自治体とともに現場の保育士さんと一緒に発達支援を考える井上さんに回答いただく企画が好評です。あたたかい目線でいつも保育者に寄り添う井上さんのコラムは、現場の保育者の方からも非常に好評です。ぜひみなさんが感じていること、相談したいことがありましたら以下のバナーをクリックして相談を教えてください。

◆関連記事












