食事の場面で見られる特徴
保育園や幼稚園での食事場面において、発達の偏りをもつお子さんの気になる様子として「偏食」というものは注目されていますが、「摂食」(食事をとること)という部分でのお子さんの関わりは園を訪問していても少ないと感じます。例えば
- 「詰め込み食べ」と言われるように、口の中に入れた食材を飲み込む前に次から次に新たな食材を口に入れていく様子
- 一口量が分からない為に食材をかじりとることが出来ずに、無理にほおばる様子
- 咀嚼が難しく、ほとんど噛まずに飲み込む様子
- 咀嚼しながら口の中で上手に食材をまとめて飲み込むことが出来ずに、いつまでも口の中に残ってしまう様子
- 食材の一部分が口の中に残り続けてしまう様子
食事の場面での発達レベルに合わせた環境整備
保育園では、クラスの年齢にあわせて食材を食べやすい形状や固さにされていると思います。しかし、いつもお伝えしているように発達レベルに合わせた環境を整えることの重要さを今一度確認してみると良いでしょう。
認知の発達への支援は少しずつ広まってきています。また、歩行等、身体的な機能面の運動発達についても配慮は行われている現状が見受けられます。
しかし、食事という口の中の見えにくい部分の配慮はどうでしょうか? 乳児クラスから幼児クラスになると途端にみんな一緒の形状、固さになっていないでしょうか?
特に4,5歳児になると、形状を別にしている園は少ないのではないでしょうか?
詰め込み食べは、次々と送りこまれる食材で食道が塞がり窒息の危険があります。食事は楽しい時間でありながら、子どもの命を守る保育士さんの立場として安全を提供しなければなりません。
具体的な支援方法
では、どのように支援していけば良いのでしょうか?例えば、つめこみ食べのお子さんは、おそらく食べることが大好きで目の前にあるおいしい食材を早く口に入れたいという衝動性をコントロールすることも難しさや、口の中の感覚の鈍感さから、パンパンに詰め込むことで初めて食材があると感じているのかもしれません。
食事場面での支援は、食べて良い量だけをお皿に出しておくことをおすすめします。目の前に見えることで、あるのに食べられない、食べるのを我慢しなければならないのは、まだ幼児さんには難しいでしょう。
次々に口に入れたいという衝動性を我慢出来ない場合には、1回の量を小さくしてあるものを、お皿にいくつものせておき、全部口に入れたとしても一口量になるように調整しておくと良いでしょう。
また、医療機関等で言語聴覚士により摂食指導を行っているところもありますので、そこで訓練を受けることもできます。また、支援者向けの摂食指導の研修もありますので、保育士さんの立場で学ぶことも良いと思います。
井上さんからアドバイス
口腔内の発達は、食事だけでなく言葉の明瞭さにもつながる大切な視点です。言葉の明瞭さは、他者とのコミュニケーションが円滑に行われ、やりとりの楽しさや自分の思いを言葉にのせて伝わったことの達成感の経験に繋がり、次への意欲につながります。食事の場面だけでなく、遊びの場面から身体の大きな部分、微細な部分と口腔機能を育てるあそび(シャボン玉や風船ふくらませ、吹き絵、手遊びあっぷっぷ)を通して運動発達の基礎が出来ることを日頃の保育の視点に入れていただけることを期待しています。
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