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日常生活から生まれる製作・造形のヒント探し【主任コラム】

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日常生活から生まれる製作・造形のヒント探し【主任コラム】
認定こども園で全体主任を担当されていた筆者による、主任だからわかる、主任にしかわからない視点からのエピソード満載のコラムです。今回は製作・造形の際に気を付けたいポイントについてご紹介します。

造形活動のねらい 

この時期は、作品展・生活発表展などをおこなう幼稚園や保育園、こども園も多いのではないでしょうか。私が勤めていた園でも先月、生活展があり見に行って来ました。 

この園での生活展とは主に1学期からおこなってきた造形活動を中心に展示し、「クラスの遊び」といってこの時期辺りにクラスで盛り上がった遊び、またタイムリーに盛り上がっている遊びを紹介するという形で行っています。 

それぞれ学年によって展示の仕方は違うのですが、例えば年少児では1人3作品を選び3連の作品として展示します。すると1学期では緊張が伝わってきた絵の具の筆の運び方が、3学期には豪快になっていて気持ちを解放しながら絵の具で描くことを楽しんでいる様子が伝わってきます。

そこには、「人と比べないその子らしい表現」というのを保護者に伝えたい保育者の思いもあります。造形活動は保育者ひとりひとりが思いやねらいを持って積極的に行い、そこに子どもたちの自由でのびのびとした表現が現れるのです。 

そんな今回は、絵画活動や製作活動について具体的な事例を用いて紹介していきたいと思います! 

題材は身の回りにたくさんある! 

雨の日をテーマにした造形

天気の移り変わりや自然からの恵みに目を向ける

例えば、梅雨の時期。連日雨が降り、なかなか外遊びができない事がありますよね。「早く晴れないかな」そんな子どもの言葉を受け、「早くおひさまが出てくるように太陽を描こう!」と大きい紙いっぱいに太陽を描いたことがあります。 

 あるときは、園庭を眺め、「すごい雨だね」と友だちと言い合う子どもたち。 その姿を見て、「今日はたくさん雨が降って いるね、雨ってどんな音がするのかな?」と音に注目して、「ザーザー」「ポタポタ」と子どもたちと声に出しながら雨を表現して描いたこともありました。 
かぼちゃをテーマにした造形
また、畑で大事に育てたかぼちゃが収穫できたとき、「みんなで食べる前に描いて残 しておこう!」と年長児のクラスで野菜を描いたこともありました。これはどれも計画的なものですが、中には、計画していないことを造形活動に取り入れることもたくさんありました。 

あるとき、園長先生が、元気がなくなったひまわりを畑から持ってきたことがありました。大きなひまわりを見て子どもの心の動きを感じたので絵の具を用意すると、何人もの子がひまわりをのびのび描き始める姿がありました。 

そこには「元気になってね」の思いが込められていました。このように計画していない造形もやってきました。造形活動や製作 活動のテーマとなることは私たちの身の回りにたくさんあることを改めて感じます。 
パーソナライズ_9万件訴求

子どもたちがワクワクする導入とは 

大根農家をイメージした先生

導入は説明よりもワクワク感を!

1つ目で述べたように、子どもの心が動いた瞬間を捉えて絵画や製作をすることは大切なことですが、準備のことも考えると全てがそのようなシチュエーションでできるわけでもありません。 

私自身もさまざまな造形活動に関する研修を受けてきて、歳児によって合っているテーマや技法などを考慮して、こちらから題材を提供することは多くあります。肝心なのはこころだと思います。正直テーマはなんでもいいと思っています。子どもがどれだけワクワクするか、やってみたいと思えるかが大切だと思います。 

私の勤務していた園では、11月頃になると園長先生が近所の農協で葉が立派な大きな大根を買ってきてくれます。何に使うかという と、子どもたちが絵を描くために使います。 

“描く”ことに苦手意識を持つ子が多い年中児。年中児担任から、製作や造形活 動で「描けない」と言う子どもたちに対してどのようにアプローチしてくか相談をのることも多くありました。 

そんな中、 この大根というテーマは、子どもたちにとって、色も形も分かりやすく、描き終わった時に達成感を味わえます。ある保育者は畑仕事をしている人になりきって手ぬぐいを頭に巻き、カゴを背負い、大きなカブならぬ大きな大根を 抜いた振りをして子どもたちを驚かせます。またある保育者は子どもがじっくりと大根を観察できるように触れるよう に時間を取ります。子どもの背よりも大きい紙にでものびのびと描く姿が見られました。 

どんな道具、素材を使う? 

お絵かきに使う道具

子どもに何を体験してほしいかで使う道具も変わってくる

絵の具、筆、クレヨン、紙粘土、造形活動ではさまざまな道具や素材があります。 

私が年長児を担当していた時、クラスでお米を育てる活動をしていました。お米が立派に実り、収穫を喜び描く活動をする際に、何を使って描くか迷いました。そのときに、お米を描く上でどこに注目してほしいかを考えました。 

お米の特徴は、たくさんの穂だということで、それをよく観察してほしいと思いました。そうすると、クレヨンや筆ではなく、鉛筆がいいと思い鉛筆で表現することにしました。 

また、クラスでザリガニを飼っていた時、大きなハサミが取れてしまっていたことがありました。「なんでだろう」という子どもたちの思いを造形で残そうと、大きな白ダンボールに絵の具でザリガニを描くことにしました。 

違う年には、ザリガニのお腹にいっぱいの卵を発見したことがありました。今しかないこの瞬間を造形で表現することにしましたが、描く経験はたくさんしていた子どもたち。紙粘土で表現してみることにしました。 

ザリガニをよく見ると体がいくつかのパーツでできていることに気付いたり、お団子のように粘土を丸めて卵を表現している姿を見て、立体にすることの面白さを私自身も感じました。 

展示の仕方も大事なポイント! 

白い画用紙に絵を描いた時に、台紙の色を何色にしたら子どもの描いた絵が映えるかな? と考えて台紙をつけたり、筍から竹になる様子を見守っていた成長の過程を子どもの背よりも高い模造紙に描いた時にはクラス内での展示に留まらず、共有スペースの玄関ホールの2階から吊し迫力あるように展示したり、いろいろな工夫をしながら展示していました。 

美術館に行ったり、買い物に行った際、「あ、この展示の仕方素敵だな!」と日常生活からもヒントをもらいながら保育者自身も楽しんでセンスを磨いていました。 

新人の先生は「何をやったらいいか分かりません」と悩む姿も見られます。そんなときは先輩がやっている造形活動で「楽しそうだな!」と思うものをやってみるようにアドバイスをすることもあります。まずは保育者自身が楽しんで行う気持ちが大切だと思います。 

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鈴木 友佳

この記事を書いた人

鈴木 友佳

短期大学卒業後、幼保連携型認定こども園に入職し、現在14年目になります。
6年目からは担任を持ちながら学年主任を経験し、現在は全体主任として乳児、幼児クラスのフォローや、会議や園内研修でファシリテーターの役割もしています。

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