子どものことを深く考えるうえで必要な「なぜ?」
巡回相談や保育所等訪問支援で先生方からよく出る言葉のなかに、なぜその子がこういう行動をとるのだろうかという問いに対して、「不安だから」という回答があります。私がいつも子どもたちの行動をみて考えることは「なぜ、そうしているのか」という行動の理由です。子どもをより深く理解するには、この「なぜ?」が重要なのです。そしてその「なぜ?」の答えに「不安」という理由は回答にはなっていないと考えています。不安なのには必ず理由があるからです。ここまで考えないと、解決策に具体的な方法が見えてきません。その結果、不安だから抱っこするなど、とてもぼんやりしたものになってしまいます。
子どもたちはなぜ不安なのか?
涙やパニックの理由が、不安の先に必ずあります。例えば、お母さんと離れたことが不安でいつお迎えにくるか見通しがつかないという理由なら、「給食食べて、お昼寝して、おやつを食べたら迎えにくるよ」と声をかけたり、お迎えの時間を時計の短針と長針の数字部分にシールを貼って可視化したりと先の見通しを伝えます。
見通しを立てても大好きなお母さんの顔が見えないことが涙の理由だった場合には、お子さんの発達段階が「対象の永続性」(目の前にその物がなくても、どこかには存在しているということ)が理解出来ないものとして、お母さんの顔写真を撮り、その子にいつでも見えるようにしておくことで涙を流さなくなったこともありました。
初めての集団生活のなか、音の過敏さがあり人の多さでザワザワした環境が不安の理由だった場合には、個室を準備して静かな空間を整えることで解消できたこともあります。
大事なのはもう一歩先の理由

その時に必要なことは理論に基づいた知識です。学びを深めれば深めるほど「○○だから」の部分に特性の知識が入れられ、解決につながることが多くなります。
井上さんからアドバイス
答えはいつも子どもが出してくれます。その時の状況次第で答えが変わることもあります。そのためにもいくつもの支援のアイデアの引き出しを増やしておける大人側の柔軟な思考と知識が必要です。発達支援の学びは自分の人間力への学びとつながっています。多様な発達を受け入れるということは、多様な考えの大人同士の関わりにも良い方向へと変化をもたらします。私たち大人は、多様な発達の子どもたちから、人間にとって社会にとって大切なことは何なのかを学ばせてもらっていると私は考えています。
これからの時代を支えていく子どもたちに、私たちの凝り固まった価値観を植え付けるのではなく、100人いれば100通りの価値観をもった子どもたちが育ってくれると良いと私は考えています。そんな主体的な保育ができる保育士さんたちは是非自分に自信をもっていただきたいと思います。
集団を見ながらも多様な個性を大切にする。答えのない道のりに不安になることもあるかと思いますが、学びを止めずに前進し続けてもらいたいと思います。私も心から応援しています。
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