今回のお悩み:常にマイペースで園生活になじめない3歳児について
Aさん(一般保育士/13年目)さんからの質問
グレーゾーンの子ども3歳児(男の子)
何もかもがイヤな時期のようで、気に入らない事があると部屋から出ていって、自分から落ち着く場所へ向かっています。保護者が迎えにきても、素直に帰れず、走って部屋に戻って行き、この間は帰るまでに30分かかり、それでも無理矢理帰っていきました。
常にマイペース。時間を決めても、自分が納得しないと次に進めません。午睡時間は、静かにする事もできず、じっとする事も出来ず、彼にとっては苦痛の時間でしかないと思い、園長と対応を考えているところです。日々の生活全て、他の子どもも巻き込む事になるので、対応に悩んでいます。よろしくお願いします。
専門家からAさんへの回答
保育園という集団生活の中で、他のお子さんとの発達の違いに先生方もどう対応して良いのか戸惑われている様子ですね。このお子さんは、社会性の未熟さから、集団の流れに沿うことやルールを守るということは難しい発達の段階であることが読み取れます。また、気持ちのコントロールを行うことが難しいため、他者もしくは集団の中で自分の意が通らなかった際に、怒りの感情がこみ上げ、部屋から出るという手段をとっている様子です。
ギリギリセーフのラインをつくる
このお子さんがとっている怒りの感情がこみ上げた際、その場から離れるという行動は、怒りを他者に向けていないという良い行動と捉えることが出来ます。ただ、保育園の環境では人的配置でその子に人をつけられないことや、施設上の構造からお子さんの様子が視野に入らない場所になり安全を確保出来ないということが考えられます。
この場合、その場から離れるという行動は承認し、離れる場所を「どこでも好きなところへ」ではなく、「○○くんが落ち着くこの場所へ」に変換していけるとよいでしょう。
カームダウンスペース
そのお子さんがイライラしたときに、その場から離れたくなる理由は自分の気持ちを切り替えるためには、多くの聴覚的、視覚的刺激があるお部屋から離れ静かで誰もいない場所に行くことが落ち着くということを本人自身が感覚的に経験から学習した結果ではないでしょうか?このイライラした気持ちから○○があると落ち着くという経験を少しずつ「部屋の外」から「部屋の中のカームダウンスペース」に変化させていけると良いと思います。
※カームダウン(calm down):感情や気持ちをなだめる、気分を落ち着かせるという意味
カームダウンスペースのつくり方
カームダウンスペースは、嫌なときに行く場所というよりは「リラックスできる大好きな場所」と感じられるように配慮しましょう。例えば、イライラしたからその場にいくのではなく、イライラしていなくても普段からその場所が使えて、そこにいると何だか気持ちが落ち着き、リラックスできる大好きな場所というイメージです。
具体的には、その子がお部屋から離れるという手段をとっているということは、視覚的、聴覚的にざわざわした刺激をシャットアウトしたいという理由が考えられますので、視覚刺激の排除にはテントや本棚等で仕切られた空間を設定すると良いでしょう。
また、その中には本人の大好きなリラックス出来る感覚グッズを置いておくと良いでしょう。例えば、ドロップモーションやスクイーズ、ハンディ扇風機等で高まったイライラの感情が感覚グッズで落ち着くことが期待できます。
井上さんよりアドバイス
その子にとって今大事なことは、イライラしないことではありません。イライラすることは誰にでも起きる感情です。このお子さんにとって今経験をしてほしいことは、その負の感情から戻るための自分に合った手段を知ることです。その為に、保育園内でのギリギリセーフのラインを探し、提供することをおすすめします。カームダウンスペースが自分にとって心地よい場所だと感じられるようになり、イライラしたら気持ちを切り替えにいくことから次第にイライラして爆発しそうになったら、自ら「リラックスのお部屋にいってきます」など伝えに来られると良いですね。
井上さんに直接聞いてみたい発達支援のお悩み募集中
普段の保育で感じている発達支援のお悩み、井上さんに質問してみませんか? このコラムも実際に寄せられた質問にお答えしています。ほいくisでは、保育者のみなさんが抱える発達支援のお悩みを募集し、児童発達支援管理責任者/保育士/発達支援専門士として自治体とともに現場の保育士さんと一緒に発達支援を考える井上さんに回答いただく企画が好評です。あたたかい目線でいつも保育者に寄り添う井上さんのコラムは、現場の保育者の方からも非常に好評です。ぜひみなさんが感じていること、相談したいことがありましたら以下のバナーをクリックして相談を教えてください。

◆関連記事











