過去の災害事例から学ぶ

例えば、日本は地震や津波、台風など、多くの自然災害が発生する地域であり、過去の災害からも多くの教訓を得ることができます。
特に大きな被害をもたらした災害の事例を振り返ることで、どのような対策が効果的か、またどのような準備が不足していたのかを学ぶことができます。
今回は、このような振り返りをしてみたいと思います。また同時に、保育者としてどのような心構えが必要かをお伝えします。
地震と複合災害の事例
最初に、過去に発生した地震と複合災害の事例と、そこから得られた教訓について見てみましょう。1.東日本大震災(2011年3月)

東日本大震災は、東北地方だけでなく、関東地方など広範囲にさまざまな影響を及ぼしました。そして今までこれほど大きな地震が保育中に起こった例はなく、保育現場における防災対策の必要性を強く認識させられた出来事でした。
東北地方では多くの保育施設が被害を受ける中で、避難訓練の重要性や備蓄の実施が重要な教訓として浮き彫りになりました。また、都心部では公共交通機関が使えなくなり、帰宅困難者が続出したことで、保育施設にいる子どもたちを翌日まで迎えに行くことができないという事態になりました。
このような経験から、多くの保育施設ですぐに見直されたことがあります。それは、『お昼寝にパジャマを着ない』ということです。
東日本大震災が発生した時間は、ちょうど午睡中の時間帯でした。そのため、子どもたちが園庭や高台に避難する際、パジャマで避難しなければならなくなりました。3月と言っても東北地方はまだ雪がちらつくような寒さ。そんな状況の中、パジャマで避難することに躊躇し、コートを取りに行くことで避難が遅れてしまったという施設もありました。このような教訓から、全国の保育施設でもパジャマを着ずに普段着でお昼寝をする施設が増えました。

その一方で、高台にあった幼稚園にも関わらず園バスで海の方へと走ってしまい、津波の後の火災で子どもたちが犠牲になってしまったという悲しい事例もあります。この園では、津波の避難訓練を行っていませんでした。また、園バスの災害対応について誰も判断ができなかったそうです。
災害はいつどこで起こるか分かりません。大地震であれば、大きな余震が来る可能性もあります。だからこそ、保育者は子どもたちを迅速かつ安全に避難させるための手順を熟知し、日常的に避難訓練を行うことがとても重要なのです。
2.令和6年能登半島地震(2024年1月)

また、園舎の被害が少なかった施設は、自主避難所として運営されていたところもあります。その際に役に立ったのが『備蓄品』でした。
実際に発災翌日から自主避難所として運営された認定こども園では、日ごろから水や食料を備えていたおかげで、すぐに避難者を受け入れる体制ができたそうです。また、避難所を運営するにあたり、日々の保育の延長として行っていた衛生管理のノウハウのおかげで感染症が流行せずに済んだというのも保育施設ならではないかと思います。
備蓄品で役に立ったものを挙げておきますので、参考にしてみてください。
ウエットティッシュ/紙皿/紙コップ/非常用飲料水/ポータブルトイレ/カセットコンロ/缶詰(ツナ缶やフルーツ缶など) |

参考:令和6年能登半島地震に関するこども家庭庁からのお知らせ >>詳細はこちら
台風・豪雨対策の事例
続いては、過去に発生した台風・豪雨災害の事例と、そこから得られた教訓について見てみましょう。平成30年7月豪雨(2018年7月)

災害時には「自分のところは大丈夫」という正常バイアスがかかりやすくなります。「まさかここまで水が来るなんて…」と思うことになるかもしれません。施設周辺のハザードマップは必ず確認し、最悪の場合どのくらいの被害が想定されるのか、そのような場合にはどこへ避難するのかをあらかじめ職員間で話し合っておくことが大切です。
また、保護者にも園の対策と対応方針について理解してもらうことも重要です。大雨や台風の際にはできるだけ早く迎えに来てもらえるよう伝えることや、連絡手段の再確認などを普段から行っておきましょう。
水害は、地震とは異なり、突然来るものではありません。天気予報や自治体のホームページなどで情報を得ることで、事前に対策を講じることも可能です。「まさか」の事態を避けるためにも、さまざまな想定をしながら準備をしておきましょう。
いま保育者にできること

そのような環境の中で、保育施設は子どもたちが唯一自分らしくのびのびと遊ぶことができる場所でもあるのです。
私たちもいつ能登と同じような状況に陥るか分かりません。過去の災害を教訓として、「保育者としてできることは何か?」を日々考えること。それが、子どもたちを守るためにいま必要とされていることなのではないでしょうか。
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