保育園生活における「できる」と「できない」の捉え方
保育園生活では、子どもたちを集団で見るために、皆が一緒に動けることが求められがちです。しかし、子どもたちの発達にはもともと個人差があり、さらに一人の子どもの中にも得意なことと苦手なことの差が大きい場合があります。おしゃべりができるからといって、必ずしも円滑にコミュニケーションが取れるとは限りません。また、運動が得意だからといって、全身を協調させて動かすことも得意とは限りません。
子ども一人ひとりをよく理解しながら関わることがどれほど大切かは、私のコラムを読み続けてくださっている先生方なら、きっと理解されていることでしょう。
今日はさらに一歩踏み込み、「できる」と「できない」の両極端だけで物事を捉えないという考え方をお伝えします。
「できる」に潜む「がんばらないとできない」
「できない」ということに関しては比較的見てわかりやすいことかと思います。例えば、はさみが使えない、文字が読めない等、他にもさまざまな「できない」があるかと思います。こうした場合、たくさんの経験をしながら本人の発達を下支えしながら待つということをいつもお伝えしています。一方で、「できる」ことにも注目する必要があります。「できる」という中には「がんばらないとできない」が含まれています。例えば、文字を簡単に書けるのと、頑張らないと書けないのでは、「できる」という枠の中でも本人の疲労度、負荷のかかり方は大きく違います。後者の方は「何とか出来る」と表現されることが多いでしょう。
見過ごされがちな「がんばらないとできない」のリスク
この「がんばらないとできない」を見過ごしてしまうと、「がんばり続けないとできない」状態になり、結果として子どもに過度な負担がかかります。それが長く続くと、最終的に意欲そのものを失ってしまうこともあります。大人でも「がんばらないと出来ないこと」と「簡単にできること」では、モチベーションは大きく変化し、簡単にできることはすぐに取り組んだり、頑張らないと出来ないことは後回しにすることが日々起きているのではないでしょうか?
このように、大人は自分自身で環境を調整しながら、簡単にできることとがんばらないと出来ないことの量をその時々でやるかやらないかを決定しています。
しかし、子どもたちの生活の流れは、大人が決めたルールの中で行われることが多く、子どもたちが「がんばらないと出来ないことを」大人側から見た「できる」の枠に入れていないでしょうか?
井上さんからアドバイス
私のコラムでは、いつも子どもを主役に考え子どもたちの行動の意味を通訳する代弁者であることを心がけています。コラムを読み続けてくださっている先生方にも私と同様にいつも子どもの味方であり、行動の意味を伝える良き通訳者であって欲しいと思います。子ども一人一人を深く知り、多様な発達が当たり前になる社会になることを願っています。私たちに出来ることは小さなことかも知れませんが、皆さんが学び続け、実践し続けることでその社会が必ず叶うものになると信じています。
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