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支援が必要な子どもと活動を分けたがる担任とのクラス運営について|発達支援のお悩み相談室

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支援な子どもと活動を分けたがる担任とのクラス運営について
「発達支援の現場から」のコラムで好評の児童発達支援管理責任者/保育士/発達支援専門士である井上さんが、今回はクラスの活動と支援の必要な子どもを分けたがる担任と副担任のかかわり方についてのご相談に回答します。

今回のお悩み:支援の必要な子どもがいるクラス運営について

かぼちゃんさん(パート保育士/8年目)さんからの質問

認定こども園で働いているパート保育士です。

年少さんを新任の先生が主担任(正規職員)私が副担任という立場で働いています。

クラスには明らかに療育が必要と思われる男の子(Aくん)がいます。(活動の切り替えが難しい、多動など)しかし、現在のところ保護者の理解が得られず療育には行けていません。

その子を含めてのクラス運営のやり方について悩んでいます。

主担任の先生は全体での活動や活動の切り替えの時にそれが出来ないAくんにつられてしまう子どもがすごく気になるので、「一旦、活動の切り替えの前にAくん外に連れ出したい。」それを続けてみて、「Aくん以外の子どもたちがつられなくなるまで成長できたらAくんは連れ出さずに一緒にクラスで過ごす。」という考えでした。

そこで、副担任の私がAくんを活動が切り替わる前に外に連れ出せるように声かけを行いますが、活動の切り替えが難しいAくんはすぐにYESとは言わず、結局は好きなおもちゃなどで誘導して外に連れ出すことになっています。

主担任の話によるとAくんを外に連れだすことで、Aくん以外の子ども達は落ち着いて活動の切り替えができているそうです。

しかし、私はそのやり方に違和感を感じています。

Aくん以外の子ども達のことを考えるとAくんがいない方が落ち着いて活動ができる環境がつくれることは良いと思います。しかし、Aくんのことを考えると、外に出たくもないのに、おもちゃでつられて外に出されて集団から外されること。まず、その時点でAくんの成長要因を奪っていると感じます。

Aくんは他の子と同じタイミングでの活動は難しいですが、待ってあげたら最終的には席に座ったり、楽しく活動に参加することが出来ることもあります。

私が主担任であればAくんがクラスにいるのであれば、Aくんを外に出さずに一緒に伸ばしてあげたいです。しかし、副担任でパートという立場から、新任とはいえ、主担任の意見を主にクラス運営をするべきだとも思います。

しかし、この違和感を抱えたまま保育の仕事をすることがしんどいと感じます。
その思いを主担任に伝えるべきか迷っています。
専門家の方の意見を聞くことができると嬉しいです。
どうぞよろしくお願いいたします。



専門家からかぼちゃんさんへの回答

ご質問をいただきありがとうございます。文章を読み、先生のA君を大切にする想いを感じ、今回の回答に選ばせていただきました。
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クラス運営に柔軟性をもたせるためにできること

先生が書いてくださった文章から、クラス内には発達のアンバランスさをもつ子どもたちが他にもいることが予測出来ます。まずは子どもたちの発達は元々多様であり、みんなが一緒のペースで同じ発達をたどるのではないということを理解することが大人側に必要なことなのかなと感じます。

その価値観を身につけられると、クラスの活動を考える時に果たして皆が一緒に出来るのだろうか? そうすることがよいことなのだろうか? という考えが生まれるでしょう。

活動の工夫例

では活動を分けて行う時、どの様な方法があるかをご紹介いたします。

①同じ活動を時間を分けて小グループで行う

これは、例えばクラスを2グループまたは3グループに分けて活動を時間差または同時間で行うということです。

この方法は、1グループが少ない人数で行えることで、子どもたちが困ったときに先生にすぐに聞くことが出来る距離で行うことができます。また、先生にとっても一人一人を丁寧に見ることが出来ます。

一人の先生が見れる人数で行い、その他のお子さんたちは外遊びや自由遊びを行い、もう一人の先生や他クラスと合同で遊ぶことで大人の目も確保することが出来ます。また、同時間で別グループで行うことも可能であれば子どもたちにとっては、集中しやすい環境で安定して活動に参加することも出来ます。

② グループを分けて違う活動を行う

お子さんがなぜ一つの活動を一緒に行うことが出来ないかという理由の一つに、多様な発達があります。社会性、感覚、理解、様々な発達の段階を一歩ずつ進んでいる子どもたちは発達の途中。その発達の違いに合わせて、グループの活動の内容を分けるという方法です。

大人側の価値観が子ども一人一人を大切にするということが備わっていれば、違う活動を行うことに違和感はなく、何より子どもたちが「楽しかった。また、やりたい!」と達成感を感じ、次への意欲を育てることが出来るでしょう。

Aくんの活動切り替えの工夫

事前にA君が切り替えておく

今回の情報から、A君は切り替えが苦手で時間はかかるものの、活動には参加できることも多いということですので、A君の切り替えタイミングを他のお子さんよりも早くスタートしてみてはいかがでしょうか?

きっと、みんなが切り替えたから、次の場面にいかないといけないという理解ではなく、次の内容が楽しそうであれば切り替えるというタイミングだと思います。

例えば、先にA君に「次の場所で○○が出来るよ、行ってみようか」という切り替えを促し、みんなより一足先に次の活動の場所でブロックや粘土、お絵かき等本人が好きな遊びをして待つということをやってみてはいかがでしょうか?

大切なポイントは粘土やスライムなど、手洗い場にいくと再度切り替えが必要になるため、あらかじめおしぼり等を準備しておき、手洗い場にいかなくてもすむなどできるだけスムーズに次の活動へ移れる環境を整えるのが大切です。

主担任との話し合い方

1. 「Aくんもクラス全体も大切にしたい」という共通の想いを確認

毎日A君に関わる先生は、A君にとって何かよい方法はないだろうか? 主担任の先生にどうしたら理解してもらえるだろうか? しかし、大人同士の関係性を崩すこともできない。とお悩みになられているのではないでしょうか?

先生も主担任の先生も、子どもたちを大切にしたいという想いは共通のものだと思います。そこを言語化した上で、一度話し合ってみてはいかがでしょうか。

2. 解決策を一緒に考える

話し合う上で大切にしてほしいことは、先生方どちらも悪者にしないということと、A君自身も悪者にしないということです。

よい方法が見つからないのは、支援の知識やアイデアが足りないだけで、ヒューマンエラーにせずシステムエラーで考えるということです。支援やクラス運営の良いアイデアや知識がでない時には他の先生方も巻き込んで考えてみてはいかがでしょうか?3人寄れば文殊の知恵です!

きっと新任の先生で毎日必死に、子どもたちとどう過ごしていったらよいのかいろいろと考えていることでしょう。そういった労いの言葉かけも忘れずに話し合ってみることをおすすめいたします。

井上さんよりアドバイス

発達のアンバランスさをもつ子どもたちが、幼稚園、保育園という集団生活の中でつまづいているとき、大人が出来ることは何でしょうか?

障がいとは本人の中にあるものではなく、本人と社会との壁が出来たときに初めてその壁が障がいとなると私は考えています。壁を作らせてしまう社会の側がその壁をどう取り払うかを皆で考えながら一つ一つ、知識とアイデアで乗り切れたらきっと素敵な社会になると思います。

先生方ひとり一人の力がいつか大きな力となることを信じています。日々の子どもへの想いは必ずその子への成長につながります。応援しています。

井上さんに直接聞いてみたい発達支援のお悩み募集中

普段の保育で感じている発達支援のお悩み、井上さんに質問してみませんか? このコラムも実際に寄せられた質問にお答えしています。ほいくisでは、保育者のみなさんが抱える発達支援のお悩みを募集し、児童発達支援管理責任者/保育士/発達支援専門士として自治体とともに現場の保育士さんと一緒に発達支援を考える井上さんに回答いただく企画が好評です。

あたたかい目線でいつも保育者に寄り添う井上さんのコラムは、現場の保育者の方からも非常に好評です。ぜひみなさんが感じていること、相談したいことがありましたら以下のバナーをクリックして相談を教えてください。
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井上 綾乃(いのうえ あやの)

この記事を書いた人

井上 綾乃(いのうえ あやの)

合同会社シャインキッズ 代表
管理者兼児童発達支援管理責任者/保育士/発達支援専門士

発達支援センターでの実践や短大非常勤講師の経験を積み、自ら法人を立ち上げ、児童発達支援管理責任者(保育士と)して療育の現場で活動中。子どもをプログラムに合わせるのではなく、子どもに合わせた療育プログラムを行いながら、「楽しい」と感じる事で発達する支援を実践。現在では自治体の保育園巡回相談、保育ゼミ講師、依頼を受けての保育園、幼稚園研修講師等人材育成も行っている。

<シャインキッズホームページ>
https://shine-kids.com/
<遊んで発達 シャインキッズ井上チャンネル>
http://www.youtube.com/@user-nt6dp8ji5c/

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