今回のお悩み:支援の必要な子どもがいるクラスの一人担任について
パタパタママさん(教務主任/19年目)からの質問
気になる子が各クラス数名いる中で担任の先生が基本1人で学級経営をするのが年々しんどそうに感じている。
サポートの仕方や担任を支える方法など悩みである。
専門家からパタパタママさんへの回答
ご質問ありがとうございます。主任の先生が、担任の先生の頑張りを日々見ながらどうサポートしたら良いのかというお悩みです。同じ職場内の保育士さんを支えたいという温かい想いに私の考えをお届けさせていただきたいと思います。
発達はもともと多様である
保育園生活ではクラス内に、発達のアンバランスさをもつお子さんや、発達特性をもつ子どもたちが一定の割合でいることと思います。それが良いこととか悪いことではなく、発達は元々多様で、大人側も子どもたちの発達に合わせて幅広い関わり方をする必要があるということでもあります。
担任ひとりで抱え込まないために
しかし、その特性の様子次第では、集団生活という中でクラス担任ひとりでは対応しきれない現実も多々起きていることでしょう。私は、自治体の保育園・幼稚園巡回相談を月に5園程行っていることから、保育現場の様子は肌で感じています。さまざまな場所での発信には現場の先生方に向けて、机上の空論ではない、現場ですぐに活かせることをお伝えしようと心がけています。
主任ができる具体的なサポートとは
さて今回のご質問ですが、主任の先生ができることはたくさんあると思います。まずは、日々担任の先生が多様な発達の子どもたちと向き合いながら一生懸命に関わっていることに労いの言葉をかけ、成長の嬉しさ、学級経営の困難さを共有することです。きっとこれはすでに行われているかもしれませんね。
そして、学級経営の壁にぶつかった時にはヒューマンエラーにせず、システムエラーで考えることをいつも自分の中の基準にすると良いということをお伝えしてください。
負のスパイラルから抜け出すために必要な価値観
日々の保育や教育は子どもという“人”を育てる仕事です。多くの“人”に関わる仕事であることから、何か上手くいかないことがあると、“人のせい”にしたくなってしまいます。これが、自分を苦しめる基になってしまいます。学級経営が上手くいかないのは、「○○ちゃんがいるから」や「自分の関わり方がいけないのでは」等、負のスパイラルに入り込んでしまいますね。そんな時に自分を支える軸となる価値観をもつことはとても大切なことです。
私も、何か上手くいかないことが起きた場合に、この「ヒューマンエラーで考えず、システムエラーで考える」という言葉を大事にしています。
システムエラーとして捉えたときの支援の工夫
では、今回の場合システムエラーで考えると、どのような支援方法が考えられるのかいくつかのアイデアをお伝えしたいと思います。この文章では具体的にどのような場面でどの様な行動に困っているのかという情報がないので、ハード面でのアイデアとなりますがご了承ください。「皆で一緒という固定概念を捨て、発達以上の内容は求めない」
例えば、着脱を例にして挙げると、Aちゃんは自立しているのであれば見守りのみ、Bちゃんは感覚の過敏さから着替え自体に不安を感じ着脱時に癇癪を起こすことが多いのであれば、出来るだけ着脱の頻度を減らし、みんなと一緒の頻度で着替えなくてもオッケーにする。その他にも、一斉で活動するような製作場面や行事の練習等では、グループ分けをして自由遊びのグループと製作を行うグループなどにクラスを分割する。
自由遊びのグループは他クラスで自由遊びを行っているグループと合同で見てもらうなどクラスの壁を一時的になくすという方法です。
発達段階を尊重し、個に合わせた支援を
そして一番大切なことは、“○○歳児だから○○をしなくてはいけない”という、一般的な発達水準を求めないということです。人間には元々発達する力が備わっており、日々関わる先生はその手助けの一部でしかないのです。その手助けとなるのは、その子の成長に合わせることであり、みんなと一緒に出来るようにすることではないと私は考えています。
主任の先生という他の先生から信頼される立場として、担任の先生がもっと楽に子どもたちに接し、成長を見届けられる先生の中の価値観をお伝えできると良いのかなと思います。
井上さんよりアドバイス
子どもという存在はひとりで育てるものではありません。孤育てにならないようにという言葉があるように学級経営や保育が孤育にならないよう、保育士間、教育者間でも皆で協力しながらどのクラスの子も見ていくという考え方が現場で浸透できることを願っています。井上さんに直接聞いてみたい発達支援のお悩み募集中
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