声かけの認識が変わってきているが…

支援の必要なお子さんに対しての声かけは肯定的に行うことが必要です。
例えば「走らないでね」と「歩いてね」。どちらも同じ意味を伝えていますが、「走らないでね」は“走る”にNOを付けた、○○しないという否定語として伝えた言葉です。
それに対して「歩いてね」は何をしたら良いのかをストレートで肯定的に伝えた、言葉から“歩く”というイメージがそのままわかりやすく伝わる言葉です。
この「○○しない」から「○○する」という言葉への変換は最近では社会全体に広まりつつあり、SNS等の情報でも多く見られるようになりました。今日は、声かけについてさらにもう一歩深く、肯定的な声かけについて、皆さんにお伝えしようと思います。
子どもを罰で動かさない

具体的な例を挙げると「ご飯食べないと動画見られないよ」「お片付けしないと、公園行けないよ」といった様子です。
このような声かけは、否定的な言葉かけであり、さらには大人の指示を守らないなら子どもにとってマイナスなことが起きる罰が与えられるという表現を使用していることになります。
子どもたちにとって、大人は信頼できる大好きな存在です。その大人との関わりは乳幼児期から「人は安心出来る存在なんだ」という愛着関係を育てるのにとても大切な時期です。
また、乳幼児期の1日の流れは大人がスケジュールを決めていることも多くあり、子どもたちは自分の意思が通らないことも多くあるでしょう。そのようなときに、大人と子どもの間にやりたいことの方向性が別方向になることで、子どもが思い通りに動いてくれない、子どもを思い通りに動かしたいという気持ちからこのような罰を使用した声かけになりがちです。
同じ意味合いでも肯定的な声かけで

では、どのような声かけがよいのでしょうか。
先ほど例に挙げた
「ご飯を食べないと動画みられないよ」 は 「ご飯を食べたら、動画見ようね」
「お片付けしないと、公園行けないよ」 は 「お片付けしたら、公園にいこうね」
という表現になります。
伝えている内容は、お片付けをして、公園に行くという内容に変わりはないのですが、うれしいことがなくなるという恐怖感を伝えるのではなく、少し頑張ることで良いことが起きるぞ!! という期待感をもつことができます。
子どもとの関係性だけでなく、人間同士の関係性として相手を恐怖で脅して行動を促すことは、信頼関係で行動を決定しているのではなく、恐怖に怯えて行動に移しているだけなのです。
このような関係性は、子ども自身が自ら考え行動する自主性ではなく、「この人は怖いからの言うことを聞かないといけない、この人は優しいから言うことを聞かなくても大丈夫。」という大人によって態度を変えるような人間性を育てることになると私は考えています。
支援が必要な子どもたちの中には切り替えることの難しさから、このような声かけをすることで、子ども自身が慌てて切り替えることもあるでしょう。
しかし、子どもが切り替えられたからオッケーではなく、果たしてこの声かけでよかったのだろうかと、再度大人側が自分の行動や声かけを振り返る習慣を付けられるとよいでしょう。
井上さんからアドバイス
子どもたちに関わるときには、発達支援の学びで得た知識を使いながら、これでよかったのか、もっとよい関わりがあったのではないかと常にもう一人の自分が自分自身をモニタリングすることが必要です。そうすることが、さらに今の自分を次のステップにスキルアップさせてくれるでしょう。
今、目の前の子どもをどうするかではなく、その子が大人になったときを常にイメージしながら関わっていく視点が大人側に求められていると考えます。
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