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ADHDの子どもが集団活動に参加できないとき、どうする?|発達支援のお悩み相談室

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ADHDの子どもが集団活動に参加できないとき、どうする?
「発達支援の現場から」のコラムで好評の児童発達支援管理責任者/保育士/発達支援専門士である井上さんが、皆さんの悩みにお答えします。今回は、ADHDの特性を持つお子さんがなかなか集団活動に参加できない場合の言葉かけや工夫について、ベテラン保育士さんからのご相談です。

今回のお悩み:ADHDの4歳児、遊びに集中すると集団活動に参加できない

samiさん(一般保育士/30年目)からの質問

ADHDの4歳児の男児ですがお片付けの時間に部屋に戻れずおあつまりの時間に部屋に戻れても部屋の隅で好きな遊びをしていてあまり参加しません。

遊びに夢中になると給食の時間も大幅に過ぎてしまう事があります。視覚支援カードを使ったりしながら声かけをするのですがなかなか上手くいきません。

効果的な言葉がけや方法がありましたら教えて頂きたいです。



専門家からsamiさんへの回答

興味優先で行動する子どもへの理解と支援

ざっくりとした情報ですが、私の経験から出来るだけ想像力を働かせながら支援の方策をお伝えしたいと思います。

このお子さんは集団のルールとして行動を決めているのではなく、自分の興味やタイミングで行動している様子が見られます。それが悪いということではなく、この子の発達がその段階であるという理解で良いと思います。

発達段階を尊重しながら、今できることを大切にする

では、どのように支援したら良いかというと、「今できていることを大切にして発達を下支えすること」を意識すると良いと思います。

例えば、あつまりの時間に部屋の隅で好きな遊びをしているのであれば、周囲の子どもたちが行っている活動には今は興味がもてないと評価して、部屋の隅でその子の大好きな遊びをたっぷりと行うと良いと思います。

いつも一緒にいる先生が、その子の興味を理解出来ていれば一斉活動の内容によっては、“今日は出来そうかもしれない”と予測を立てて、誘いかけても良いと思います。

活動の見える化で興味を引き出す

活動内容を見せずに誘っても、本人の中でイメージが湧かず、参加につながらないことがあります。
  • 製作であれば出来上がりのものを見せる
  • 紙芝居であればその物を見せる
こうした具体的な視覚提示を通して、何をするのかを「見て理解できる」ようにし、子どもの興味や参加の意思を確認できるようにしましょう。
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給食への切り替えが難しい背景を探る 

遊びに夢中になりすぎて給食の時間を大幅に過ぎてしまうということですが、声かけやカード提示はどのように行っていますか? 言葉や絵、写真の読み取りはどれくらい理解できていますか?

まず確認してほしいことは、このお子さんが食への興味があるかどうかです。

毎日何が出てくるか予想のつかない給食でも、何でも食べられるという理由から期待することができる状態でしょうか。偏食がある等の理由から給食は食べられるものが少なくてその時間に期待をもてないとしたら、遊びから切り替えることは難しいと思います。

また、食への興味は育っていても「給食」という言葉から実際の給食シーンをイメージできなければ言葉の理解はまだ未熟で「給食だよ」という声かけは意味がありません。絵カードで給食のイラストを見せても、そのイラストから実際の給食シーンをイメージ出来ていなければこれもまた、カードから情報を読み取る力は育っていないと考えられます。

【支援方法①】食への興味はあるが、言葉やカードの理解が難しい場合

お皿やスプーンなど、本人がそれを見たら給食だと分かる具体物を提示しましょう。それでも難しい場合には、そのお子さんが好きな食材が入った状態のお皿を提示しても良いと思います。

私が以前に保育園に行ったアドバイスとして海苔が好きなお子さんだったため、先生が毎回給食の時間に海苔を見せることで給食だと気がつき、切り替えられるようになったお子さんがいました。

このように、お子さんが給食の時間なんだと気がつくためのシンボルと食べたいと思える意欲を支援に使うと良いでしょう。

【支援方法②】食への興味が育っていない場合

もし食に対する興味そのものが乏しい場合は、無理に切り替えを促すのではなく、まずはその子が好きな食材をたくさん食べられるよう配慮してあげてください。そうすることで、給食の時間が楽しい時間となり、食への興味が少しずつ高まっていくでしょう。

給食=安心できる時間であることが、遊びから給食への切り替えのきっかけとなるでしょう。

井上さんよりアドバイス

支援をする際にいつも私が考えることは、その子の立場になって深く考えてみるということです。

フランス語が読めない私に「フランス語で書いてあるからわかるでしょ。」と言われたらどれだけ混乱するでしょうか。また、見知らぬ国の食べたことのない料理を突然「完食しなさい」と言われたら、きっとそのレストランにはもう行かなくなるでしょう。

このように、相手の立場を深く理解しようとする相手に寄り添ったイメージする力が子どもに関わる大人には必要だと考えます。これがまさに支援だと思っています。

先生がご質問してくださったということは、この子を深く知りたいと思ったからだと思います。微力ではありますが、この文章を読んでくださり支援に繋げてくださることを期待しています。応援しています。

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井上 綾乃(いのうえ あやの)

この記事を書いた人

井上 綾乃(いのうえ あやの)

一般社団法人プライムシャイン代表理事
管理者兼児童発達支援管理責任者/保育士/発達支援専門士

発達支援センターでの実践や短大非常勤講師の経験を積み、自ら法人を立ち上げ、児童発達支援管理責任者(保育士と)して療育の現場で活動中。子どもをプログラムに合わせるのではなく、子どもに合わせた療育プログラムを行いながら、「楽しい」と感じる事で発達する支援を実践。現在では自治体の保育園巡回相談、保育ゼミ講師、依頼を受けての保育園、幼稚園研修講師等人材育成も行っている。

<シャインキッズホームページ>
https://shine-kids.com/
<遊んで発達 シャインキッズ井上チャンネル>
http://www.youtube.com/@user-nt6dp8ji5c/

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