朝ドラ『あんぱん』に心揺さぶられて
久しぶりに朝の連続テレビ小説を見ています。やなせたかし氏と妻小松暢氏をモデルとした『あんぱん』です。放送決定した時から心待ちにしていました。出勤前に見て泣いて出勤。早番で見られない時は帰ってから見逃し配信で見て泣いて就寝。心動かされています。脚本と役者、演技が素晴らしいのはもちろんのことですが、やなせたかし氏を40年以上愛してきた俺は、いろいろな思いを持ちながら視聴しています。
というわけで、今回のコラムは愛する絵本作家シリーズ~やなせたかし編~をお送りいたします。まずはやなせたかし絵本と俺の歴史を綴ります。
やなせたかし略歴と代表作
やなせたかし(1919年~2013年)高知生まれ東京高等工芸学校工芸図案科卒業後、東京田辺製薬(宣伝部)に入社。その後出征し、中国で終戦を迎える。終戦後は高知新聞社、三越百貨店等に勤務しフリーとなる。
漫画家、絵本作家、詩人、作曲家など活動は多岐にわたる。
絵本の代表作として『やさしいライオン』、『あんぱんまん』、『てのひらをたいように』(フレーベル館)がある。
アンパンマンとの出会いと記憶

テレビアニメが始まったのが1988年なので筋金入りのアンパンマン読者と認識して頂ければ幸いです。各地のアンパンマンミュージアムには行ったことありませんが、やなせたかし氏の原画や歴史などを見ることができる『香美市立やなせたかし記念館』には何度も訪れています。
再びアンパンマンと出会った日
でも、筋金入りのアンパンマン読者と言ってもずっとアンパンマンを読んできた人生ではありません。小中高生は全く読むことなく過ごし、再開したのは保育士になってから数年後のことでした。今から20年前ですが、その時のことを鮮明に覚えています。絵本『やさしいライオン』との出会い

やなせたかし 作・絵
フレーベル館 1975年
みなしごライオンのブルブルと親代わり犬のムクムクの物語。ライオンと犬という種族を超えた絆を描き、「良い・悪い」「こわい・やさしい」のテーマを伝えてくれます。
子どもとともに感じた絵本の力
保育士4年目、年少クラス担任。園の絵本棚から子どもが持ってきました。俺はそのとき、この絵本のことを知りませんでした。子どもと一緒に読んで衝撃を受けました。3歳児の子どもがひとり泣いていました。残酷ともとれるシーンがあるのですが、そこが怖くて泣いているのかと思ったらそうではなく、やさしいライオンムクムクの運命に感情移入して泣いていたのでした。その証拠に「もう一回読んで」「ムクムクはやさしいのに(この結末は変)」と言ってきました。怖かったのなら「もう読まないで」と言っていたと思います。『やさしいライオン』は、そのクラスの大好きで大切な絵本となりました。アンパンマン絵本も実家から持ってきて読むようになりました。
勧善懲悪を超えて――アンパンマン再考
保育士になりたての頃はあまり考えていなかった”『アンパンマン』や『ヒーローもの』などの勧善懲悪について根強い議論が昔からされている”ことを知ったのは、このときからでした。自分はただただ楽しんできただけの人生でしたから。表面的には『アンパンマン』も意地悪なバイキンマンがやってきてアンパンマンが「アンパンチ」でやっつける話かもしれません。しかし、俺はやなせたかし氏のことを知れば知るほど違う考えを持つようになりました。今では自分の言葉で確信を持って言うことができます。「そうじゃないよ」と。

やなせたかし 作・絵
フレーベル館 1976年
絵本の形で世の中にはじめて出版された『あんぱんまん』を全国で読んでいます。

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