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子どもたちの耳を育てる幼年童話のすゝめ|絵本で広がる保育の世界(1)

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子どもたちの耳を育てる幼年童話のすゝめ|絵本で広がる保育の世界(1)
絵本と子どもたちを取り巻く環境は、動画サイトなどの出現もあり大きく変わってきています。そんななかで絵が少ない「幼年童話」の読み聞かせをきっかけに、うっちー先生の勤務先の子どもたちに変化がみられています。「子どもたちの耳を育てる」をキーワードに絵本専門士であるうっちー先生が実践していることとは... >>連載一覧はこちら

絵本と子どもを取り巻く環境の変化

児童発達支援センター勤務が長かったため、昨年度、幼稚園に異動し、今年度は10年ぶりに5歳児クラスを担任しています。クラスの中で本を読みます。いや、そんなものじゃない。読みまくっています! 

少し複雑なおはなしの内容がよくわかるようになってきて、まだ文字がスラスラ読めない4歳、5歳、6歳が本を読んであげる黄金期。すなわちゴールデンエイジです。

「動画時代」における絵本の存在

10年という年月で、「子どもを取り巻く環境は大きく変わっているけども、子どもは変わってないなぁ」という実感があります。一方、ここ数年のデータを調べると、動画投稿サイトや動画サブスクリプションの再生時間がコロナ禍を経て激増しています。

楽しいことがどんどんと流れてくるから夢中になる気持ちはよくわかります。上手な付き合い方をしていくことが大切だと言われています。

考えていきたいのは、コロナ禍を経て成長してきた幼児に何が起こるのか!?ということです。

「目で【見る】ことで情報を得る」中心の生活になるのではないのだろうか。

目で見る動画、耳で聞く絵本

これにはデータがあるわけではなく、俺の実感ではありますが確信めいたものがあります。強く実感したのは昨年度、学童保育に本を読みに行ったときでした。
『5分で落語のよみきかせ』の書影

『5分で落語のよみきかせ』(PHP研究所/2005年)
小佐田 定雄 (著)
PHP研究所 2005年

この本を子どもたちと読みました。すると、さっきまで絵本をワイワイ楽しんでいたのに、急に退屈な様子。少しだけある挿絵を見せるとすごく食いついてきますが、それ以外はなんだか上の空。学童の先生も「絵がないとちょっと楽しくないかも」と。

私の語りが上手くなかったことも十分に考えられますが、10年前に年長児たちと楽しみながら読んでいた思い出とはちょっと違っていました。目で見てわかりやすくないと子どもたちは楽しむことができにくいんだろうなぁと。

担任している子どもたちも幼年童話などの挿絵が少ない本を読むと、視点の置き所がなくソワソワもじもじしていました。

長年、素話を実践してこられた絵本専門士養成講座の講師である図書館司書 伊藤明美氏の「子どもたちの耳を育てる」という言葉があります。今こそこの言葉が大切な時なのではないでしょうか!!
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今回の取り組みのスタートに選んだ本 『いやいやえん』

『いやいやえん』の書影

『いやいやえん』
中川李枝子 作/大村百合子 絵 
福音館書店 1962年

ちゅーりっぷほいくえんに通う主人公のしげるを取り巻く7つの話集。おはなしを通して主人公が成長していくわけではなく、ただただ元気いっぱいのしげるが元気いっぱいにやらかす内容に読者の子どもは、共感したりドキドキしたり笑ったり♪

クラスで一番初めに読んだ童話は『いやいやえん』でした。楽しんでいる子ども半分、絵が少ないから楽しみ切れてなさそうな子ども半分。

脳内でお話の世界に飛んでいくことができている子どもは、本当に楽しそうでした。表情でわかります。『いやいやえん』は名作中の名作ですが、家で読んでもらったことはないようでした。

「勉強のため」ではなく「楽しい!」から育つ力

保護者の方に「本を読むことは、『文章を読み取る力が上がる』ので、今から自分で本が読めるように童話を読んであげましょう。文章を読み取ることは、国語も算数もどの教科も文章を読み取ることができないと困ります。逆にそれができると勉強が楽しくなり点数がアップします♪」と伝えれば、使命感を持って読んであげ始めるかもしれません。

でも大切なのは、テストの点数が上がるための認知能力の向上ではなく、お話の世界を想像したり、一緒に読んでいる保護者や友だちと楽しさを共有したりする「楽しい♪」という気持ちから育つ非認知能力の向上の方を大切にしてほしいです。

読み聞かせが“自分で読む力”を生む

一度読んだ童話は子どもたちが自分で手に取り読み始めます。何度も何度も同じシーンを読み返す子どももいます。楽しさを実感すれば、シリーズを求めたり、同じ作家の本に興味を持ったりします。

しかし、読んだことない童話は… 残念ながら本棚にささったままなのです。手に取ってもらいにくいのです。本棚の中でほこりをかぶっていませんか?

今年度はまだ半分。前半でたくさんの幼年童話を読み、だんだんと耳が育ってきた実感があります。子どもたちの方から「続きはどうなったのか」と聞いてきます。かわいい。

このシリーズでは、今後、どのような本を読んで楽しんだのか?子どもたちはどうなっていったのか?をお伝えできればと思います。このコラムを読んでいただき、脳内で子どもたちの姿を想像していただければ幸いです。



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