今回のお悩み:特性か、それとも「甘やかし」か?
やーさん(一般保育士/23年目)からの質問
0歳〜2歳児の小規模園です。ここ数年気になるのは、2歳児でのイヤイヤ期に保護者がうまく対応出来ずに、こだわりやワガママになっているのではないかと感じるケースです。
特別支援が言われ始めた頃(20年ほど前)は子どもの困りどころは保護者のしつけのせいではないということを伝えていました。
もちろん、今もそれは変わりないのですが、ここ数年、保護者の子どもへのかかわり方を見ていると、泣き叫ぶから全て受け入れる→癇癪を起こせば思い通りになると子どもが学習し、ことあるごとに暴れる、泣きわめく子どもが増えているように思います。
知識のない保育士はそれを発達障害に結びつけがちです。
ただ、私の経験からの感覚では、保護者が子育てにけじめをつけていない事、子どもの気持ちを受け止めるのではなく、受け入れてばかりなことが原因のような気がします。
そうなると、20年前に言われていた、「保護者のしつけのせいではない」ということにズレが起きる点と、グレーゾーンの子が増えていることが課題になってくるのではと懸念しています。先生は、今の保育現場のグレーゾーンの子どもたちを見てどう思われますか?
専門家からやーさんさんへの回答
保護者と子どもの関わりに疑問を感じ、日々葛藤されている先生の視点は、子どもを深く観察しているからこそ生まれるものです。今、私たちが改めて大切にしたいのは、「その行動の意味(なぜ)を理解し、周囲の大人がどう支えるか」ということです。「その子の脳がどう世界を捉えているか」を理解の土台にする
障がいがあろうがなかろうが一人の子どもという存在は変わりません。しかし、発達障害(神経発達症)と言われる特性をもっている子どもたちは、保護者のしつけという後天的な理由ではなく、元々持って生まれた脳の特性があるのです。大切なのは、けじめやしつけなどこちら側の基準で判断するのではなく、「その子の脳がどう世界を捉えているか」を理解し、関わっていくことが大切です。
多数派のルールを押し付けるのではなく、一人ひとりに合わせた「理解しやすい伝え方」を大人が選択していく必要があります。
「気持ちの受容」が、行動を変える土台になる
もし、「泣き叫べば思い通りになる」と子どもが学習してしまっているように見えたとしても、それは保護者を責める理由にはなりません。そこにあるのは、「どう関われば良いか分からず、親子で困り果てている姿」です。まずは子どもの気持ちを丸ごと受容し、安心できる土台を作ること。その上で、恐怖や怒りではなく、「これなら伝わる」という環境を整えていくことが、その保護者と子どもにとって、保育者としてできることではないでしょうか。
保育士は、保護者と子どもの「通訳者」
大切なことは、どのようなタイプの子どもであっても「その子が理解しやすい伝え方を周囲の大人がする」こと。ここには、周囲の大人が一般的な子育て論ではなく、一人ひとりに合わせた多様な発達を理解しなくてはいけません。保護者の方は第一子であれば初めての子育て、第二子であっても第三子であっても一人ひとりの個性の違いに翻弄されるでしょう。子育てはすぐに答えが出るものではなく、果たしてこれで良かったのかと迷いながら進むものです。
保育者として目に余る子どもの行動があったとき、大切なことは、この行動の意味(なぜ)を理解し、そこからどうすればいいのかを考えます。
保育士という子どもの発達の専門家は、日々の実践から得たデータを持っています。その知識を使い、「この行動は〇〇が理由だから、〇〇すると上手くいきますよ」と保護者の方に優しく通訳してあげてください。
「恐怖」ではなく「安心」による変容を
発達障害(神経発達症)であろうがなかろうが、子育てに苦戦している保護者、または保育に苦戦している保育士さんが目の前にいるのであれば、その子の行動の意味を発達上の知識から紐付け、周囲がどうすると良いのかをぜひ、あたたかく伝え続けていっていただきたいと思います。この社会は、多数派の発達をしている人たちにとって生活しやすい基準でつくられています。つまり、発達特性をもつ人たちにとっては分かりにくく、生活しにくい環境です。多数派だから、そうじゃないから、といった枠を取り払い、どうしたらその子にとってわかりやすく安心出来る環境ができるのかを実践していっていただきたいと思います。
大人が怒りや恐怖で子どもを押さえつけることなく、理解しやすい環境とその子の発達をあたたかく待てる優しい社会であること。苦戦している保護者ごと支援できる横の関係性を拡げ、一緒に悩みながら共に成長できる時間を過ごすことが出来ると良いですね。
井上さんからアドバイス
発達障害(神経発達症)の特性をもつ子どもは、脳の特性であってもその子のペースで発達していきます。その発達を支えるのが理解しやすい環境であり、温かな人間関係です。では、子どもの気持ちは丸ごと受容しながら、その行動が変容するためにできることは何でしょうか。それは、恐怖で強制的な変容とならないよう、本人が読み取りやすい環境をつくり、子ども自らが変容していくことです。その「下支え」こそが保育者の役目だと思います。
そして、保護者の対応が、なぜそうなるのか。それは保護者の方自身も迷いながら導いた答えのはずです。何が正解かどうかわからないなか苦しんでいることを理解しながら、その子に合った受け止め方や脳の特性に合わせた関わり方をお伝えしていっていただきたいと思います。応援しています。
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