今回のお悩み:特定のものしか食べないお子さんとその保護者への対応に悩む
りんごさん(主任保育士/17年目)からの質問
給食が食べられない子(3歳6ヶ月)がいます。揚げ物やフライドポテトのようなカリカリとした食感のものや真っ白なご飯は食べられますが、サトイモやかぼちゃのような食材は苦手です。
ご飯が混ぜご飯であったり、うどんのメニューの日は給食に苦戦中。家ではまだ授乳をしていて、朝ご飯はシリアル(牛乳なし)のみ、晩御飯はおにぎり、フライといったメニューです。
保健士にも相談をし、検診などでも声をかけてもらっているが、なかなか改善の余地は見られない。保護者の方に食事の事を伝えても困った様子ではない。(サプリメントグミで対応しているから・・・。)とても困っています。
専門家からりんごさんへの回答
給食ならではの「偏食」の悩み。食べられないのには理由がある
今回のご質問のように食事に関するお悩みは、給食がある場所ならではの悩みだと思います。幼稚園などでお弁当を持参の場合には、本人が食べられるものを入れてくるため、このようなお悩みは少ないのではないでしょうか?このお子さんは、カリカリとした食感の物や白米は食べられて、里芋やかぼちゃなどの粘着性のある食材は食べられない。白米は食べられても、混ざり物が入ってしまうと食べられないということです。
食べられる食材の偏りをもつお子さんたちとは今まで沢山関わってきました。その上で理論上の理由と支援方法を、私の経験を踏まえてお伝えさせていただきます。
理由その1「見た目のこだわり」と予測の不安
食事は、食材を「見る」ことから始まっている
“食べる”ということは、食材を“見る”というところからすでに始まっています。まずは、食材を見たときにそれが“食べ物”だということを認識すること。そして、「一口で食べられそう」「かじり取ることが必要だな」など、食べ方を考えること。また、「甘そうだな、辛そうかな、○○の味に似ているかな」など、味覚に関すること。「固そうかな」「ドロドロしているかな」など、食感に関することなど、食材を見ただけで脳が今まで食べた食材の経験や誰かの感想を聞いた事柄、さまざまな触感覚の経験とつなぎ合わせて、食べていない物でも“おそらくこんな感じ”という予測をたてながら食事をしています。
この働きによって、梅干しやレモンを見たときに私たちは食べてもいないのに、口腔内に唾液がでて酸っぱいということを予想できているのです。また、柔らかそうなものは、思い切り噛むことはせずにそっと噛み、固そうなものは強い力でかじるという行動にうつすことができるのです。
つまり食材が目の前にきたときに“見る”段階で、この流れが上手くいかないと“食べる”ということに対して大きな不安と毎回向き合わないといけなくなります。
白米は食べられて、混ぜご飯が怖いのはなぜ?
このお子さんが白米は食べられるのは、この理由が大きいことが予想され、白米はどの白米もおおよそ同じ味です。(真っ白ということは、あの味だな)というのが見た段階で予想がつくでしょう。ところが混ぜご飯や具材の入っているうどんに関しては、混ざっている物がカットされていて、それ自体の味の予想が見た目では分からないこと、また混ざっていることでどんな味になるのかが予想できないことで食べることへの恐怖がわいていると考えられます。
粘着性のある食べ物に関しては、過去に食べた経験からこれは自分にとっては不快さを与える食材だということが分かっているのではないでしょうか?
揚げ物に関しては茶色の物が多く、茶色=カリカリしているなという予想がつき、またその味の経験も過去にしていて安心なおいしい食べ物と理解しているのではないかと考えられます。
大人に置き換えてみると…未知の料理を出されたときの心理
これらを大人で例えると、どのような状況になるかをお伝えします。例えば初めて旅行した国で、テレビやスマホの情報でも全く見たことのない、見た目からは味も食感も想像できない料理を提供されたとき、皆さんはどう感じどのような行動をとるでしょうか。
匂いを嗅ぐ、誰かに先に食べてもらう、味の感想を聞いてみる、何からできているのか、どんな調味料を使用しているのか。何の料理の味に似ているかを確認し、味の予測を立てる。
このような行動をするのではないでしょうか。つまり、今まで経験してきた自分の中のデータと照らし合わせながら、自分が食べられる物なのかをコミュニケーションを通じて確認しているのです。
では、子どもたちはどうでしょうか。これらのコミュニケーションスキルを身につけていなかったら、過去のデータと照らし合わせるほど食自体のデータがなかったら。
このような場合、子どもたちにとっては“食べる”ということ自体が毎回不安で仕方がないという時間になってしまいます。
理由その2「感覚の過敏さ」
口の中はとても繊細なセンサー
以前に多様な感覚をもつ子どもたちのことをお伝えしたこともありましたが、口の中にはさらに繊細なセンサーがあり、腕や足などの身体部位で感じる感覚よりもより繊細に感覚を捉えています。この感覚にも本人が好きな感覚と嫌いな感覚があり、粘着性の感覚には不快さを感じ、サクサクした物には心地よい感覚を得ているのでしょう。シリアルを牛乳なしで食べるのもこういった理由からと考えられます。
匂いや味覚の過敏さが影響することも
また、匂いの過敏さもある場合には口腔内に入れた瞬間、または食材が口に近づいただけで本人が感じる不快な臭いに反応し、食材を拒否する理由が考えられます。また、味覚にも敏感さをもっているのであれば、食材一つ一つの味が混ざることに不快さを感じて食べられないかもしれません。支援の方法!自ら「食べたい」と思える環境づくり
安心できる大人の姿と、食育からのアプローチ
今まで食べたことがないから、いつまでたっても食べられないんだと考え、嫌がる本人に無理やり食べさせてしまったら、これは虐待になってしまいます。それでは、どのように食を拡げていったらよいのでしょうか?
先ほど例に挙げた海外旅行の食事を思い出してみてください。自分の信頼できる人が、先に食べて「おいしい、おいしい」と食べていたら、食べても大丈夫だ。食べてみようと思いまずは一口という行動のスタートになります。
また、調理の場面を見る、または一緒に調理することでこのメニューがどんな食材からできていて、この調味料を使うならあの味になりそうだな。と想像することができるのではないでしょうか?これがまさに食育の活動で行う調理活動また食材栽培となります。
井上さんよりアドバイス
無理強いはNG。気長に待つ姿勢と専門機関への連携
大切にしたいことは、食べられないには食べられない理由があり、食べられるようにしたいのであれば、その理由にそった経験を支援し子ども自身が自ら「食べてみたいな」という気持ちを育てることなのではないでしょうか。あまりにも食事が偏り、心配な場合には医療機関に繋げることも良いでしょう。医療機関によっては偏食外来を行っている病院もあります。
私は、今までたくさんの偏食の子と出会ってきましたが、無理に食べさせようとすると逆に食べること自体が恐怖になり、全く食べられなくなってしまう子に何人も出会ってきました。
食べることは生きていく上で必須であり、楽しいものであってほしいですよね。子ども自身が食べたいと思える環境をつくり、自らその一歩を踏み出せるよう気長に待つ支援が拡がっていくことを期待しています。
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