半年前に公開したえほんばなしのその後
年長クラスで絵本と一緒に幼年童話をたくさん読んでいきました。前回は、『いやいやえん』を読んだところで終わりました。その後、クラスがどのように楽しんでいったのか? 何を楽しんだのか? をお伝えいたします。 文字の少ない童話として『ふらいぱんじいさん』(神沢利子作/堀内誠一絵 あかね書房1969年)を読んでみたり、強弱はっきりしていたら楽しいかもしれない!?と思って、ひっそりと暮らす家族の中でとてつもなく声の大きい末っ子ねずみがでてくる『番ねずみのヤカちゃん』(R・ウィルバー作/大杜玲子絵/松岡享子訳 福音館書店1992年)を読んでみたりしました。やはり話に力があるので、「おもしろかった~」という言葉が子どもたちから出てきます。しかし、せっかくクラスで楽しんでいるというのにあまり一体感はなく、面白い人だけが面白いといった感じでした。
しかし、この本を読んだ時から潮目が変わりました。
クラスの空気を変えた一冊:『くまの子ウーフ』

神沢利子 作/井上洋介 絵
ポプラ社 1969年
クマの子どもウーフが身近で起こるさまざまなことに疑問を持つことから始まる9編からなる童話。一見疑問を抱かないようなことに疑問を感じることは、まさに哲学本と言っても過言ではありません。
この中のお話のひとつ『ウーフはおしっこでできているか??』のタイトルを聞くと…「おしっこ?」「おしっこって言った?」とそのワードにみんなが釘付けに。もちろん! その話が下品な話ではなく、本当に哲学的な考えさせられるような話です。
それを読み終わった後にはじめて、子どもたちの中で童話についての話題で盛り上がったのです。保育者が仕掛けたわけではないのに、子どもたちが自発的に主体的に自分の体が何で出来ているのかをワイワイ話していました。
そこからは、みんなでひとつのお話の世界へ飛んでいき、どんどん楽しむことができるようになっていきました。ここで、子どもたちと楽しんだおすすめ童話を紹介します。
子どもたちの想像力に火をつけた『オニタロウ』

こさかまみ 文/北村人 絵
福音館書店 2021年
鬼の子どもオニタロウが修行に出かけ、子分を作るために孤軍奮闘。やっとみつけた里の保育園の子どもたちを子分にするべく、相撲対決を申し込む手紙を出します。
鬼からの手紙を受け取った子どもたちは、恐れながらも協力して鬼に負けないために作戦を考えます。約束の日に現れたのは… 弱そうな鬼の子ども。対決の結果はどうなるのでしょうか?
巻末の奥付に「秋田県大館市の保育実践をもとに書いてある」旨が記してありました。「あぁ子どもたちの所に鬼の手紙が届いたんだろうなぁ。きっと喜んだだろうなぁ。大騒ぎしただろうなぁ」と想像するとうれしくなります。
結末はぜひ読んでいただきたいのですが、俺は… オニタロウと子どもの純粋さに泣きました。
童話が育む「語彙力」と「傾聴力」の真意
読んでいると「先生!「子分」って何?」と聞いてくる子どもがいました。わからない言葉が出てくるのは当たり前。聞いてくれたら答えます。でも聞かなくても話の流れでわかったり、後から「そういうことか」ってわかったりするのです。それが「語彙力」を高めることに繋がります。生活の中での「傾聴力」も格段にアップしています。保育者の声、友達の声に耳を傾けます。聴こうとする姿勢が育つと生活がスムーズになります。活動の取り組みも、いろいろなことにチャレンジできます。
しかし! 幼年童話本は子どもの「語彙力」「傾聴力」を高めるために読むのではないのです!!
複雑な物語がわかるようになってくる5歳くらいは、まだまだ文字は読めても文章の読み取りは未熟。大人に読んでもらうことで少ない絵を楽しみ、より想像の世界を楽しんでほしい♪ クラスみんなで同じ世界を旅してほしい。
そう願いながら読んでいます。俺自身も一緒に。
豊かな経験を糧に、次の一歩へ
まだまだ紹介したい本とエピソードがたくさん。エルマーとボリスも、へなそうるも、パインさんも、ピーターラビットも、あれもこれも子どもたちの心の中で楽しく過ごしてくれているといいなぁと思っております。たくさんの思い出を抱きながら、この園児は小学校へ旅立っていきました。
俺が若かった頃、我武者羅に年長クラス担任をしていた時も楽しかったのですが、おじさんになり、絵本や運動、音楽、発達支援の豊富な知識と経験が積み重なり、余裕をもって、子どもたちの意欲を形にする環境構成ができるようになりました。とても充実した一年間。みんなありがとう。
そして、今年も年長クラス担任です。同じ本を読んでも楽しみ方が全然違う。同じなんて二度とないんです!だから保育・幼児教育は面白い!!
生涯を捧げるに値する仕事です。
【関連記事】










