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子どもたちの個性が一つに調和!いま求められるグループワークの形とは

野外で遊ぶ子どもたち
自然の中での保育を専門にしている野村直子さんによる、「子ども」と「自然」をテーマにした連載。今回は、子どもたちが集まって活動するグループワークの形について。事例をもとに、一人ひとりが個性を発揮しながら調和していく姿を解説してくれました。

以前、5歳児のグループにこんな姿が見られました。

公園の端に大きな柿の木がありました。枝の上の方には、いくつか柿の実がなっていました。

一人の男の子が柿の実を採りたいと言って、ジャンプしてみたり、木によじ登ろうとしたりしていました。その子の姿を見て2〜3人の子どもたちが集まり、その子たちも「わたしもやってみる!」「ぼくも!」と言いながら、木に登ろうとしたり、登ろうとしている子のお尻を押し上げたり、棒を持って来たり…と、試行錯誤が始まりました。

そのうち、一人の男の子が木の横にあった大きな岩に登ると手が届きそうだということに気づきました。代わる代わるその岩の上に立って、ちょっとだけ手が届いた枝を引っ張るけれど、柿の実は落ちてきません。その間に他の子どもたちも集まってきて、ああでもない、こうでもないと口々に言いながら、みんなの意識が柿の実を採ることに向いていきました。





少しすると、みんなの頭の中に浮かんで来たのが、ガキ大将のような存在の“だいちゃん”です。

「だいちゃんならとってくれるはず!だれかよんできて!」

と言う声で、見ていた子が「わたしよんでくる!」と走り、呼びに行きました。

呼ばれただいちゃんは、「よし!おれにまかせろ!」と意気揚々と岩に登り、枝をゆさゆさと揺らしました。確かに他の子よりは大きく揺れて、みんなの中に“落ちてくるかも”という期待が広がりました。

すると、自分では直接手を出さないで遠巻きにいろいろと言っていた女の子が、「おちてくるかもしれないからだれかとって!」と言いました。その声を聞いた2~3人の子が、木の下でキャッチできるように「オッケー!」と言いながら構えました。

でも、だいちゃんは「おれだけじゃダメだ!みんなでゆらして!」とみんなに助けを求めました。それを合図に周りのみんなが加勢して、ほとんどビクともしない木の幹を代わる代わる押しました。だいちゃんと一緒に岩の上に立ち、枝を揺らす子が現れ、その二人が落ちないように足を押さえる子も現れました。

そのうち、

「せがたかいSくんをよんでこよう!」とか
「ながいぼうをAちゃんがもっていたよ。かりてこよう!」

などとさまざまな意見が飛び交い、呼ばれてきた子も加勢しますが、なかなか実は採れません。この柿採りに総勢15人くらいの子どもたちが入れ代わり立ち代わりで加わっていました。
結局、柿の実は採れませんでしたが、子どもたちにはやりきったという達成感と、次に来る時は“あれを持ってこよう”という、次への期待の表情が浮かんでいました。

この間、大人のアイデアは一切ありません。

子ども同士でアイデアを出し合いながら、“今、目の前に見えている”一つの目標、“柿の実を採る”に向かって、個々の力を出しながら取り組んでいました。

これが、今の時代に必要なグループワークの形です。

個々の個性を発揮しながら、自然に役割が生まれ、一つの力へと調和していくというグループワーク。子どもたち同士で表現し、発揮される力なのです。単なる「柿を採りたい」という思いつきから、グループワークの体験へと繋がる…それは計画の中では出てこない体験です。

その体験の機会を“大人が止めずに、保つことができるか?”が私たち保育者にかかっているのです。
野村直子

この記事を書いた人

野村直子

「子ども」と「自然」をキーワードに国内外での保育と自然体験活動などの経験を重ね、 “森のようちえん”という自然保育の活動に関わる。小規模保育室園長を経て、現在は新しい視点で子育ての質を伝えて行くため『new education LittleTree』代表として研修事業をメインに活動中。
<ホームページ>
https://www.new-edulittletree.com/

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