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トイレに向かう子どもの『困った行動』にどう対応する?【保育者の関わり講座】

夕焼け空
言語聴覚士として長年児童発達支援に携わってきた原 哲也さんのコラム。保育士であれば知っておきたい「気になる子」への関わり方について解説していきます。今回は「困った行動」のなかでも、保育士さんのお悩みとして挙がった“トイレに行くときの困った行動”の対処法をご紹介します。

今回のテーマ

今回から、再び「困った行動」の具体的な事例を取り上げます。

加配保育士を対象に行った「お悩み」アンケートで挙がった質問から、「トイレへの移動時、他児を押す・ふざける」事例についてご紹介します。

この子の「他児を押す、ふざける」行動の理由について、どんな仮説が考えられるか? 「困った行動」を構成する4つの要素を考えてみます。

4つの要素のおさらい

  1.  これまでの経験(直近の経験も含め「困った行動に至るまでの全ての経験を含みます):その子は、さまざまな経験を経て、今、ここにいて、
  2.  きっかけ: その行動が起こるきっかけがあり
  3.  行動の理由(要求、注目、拒否・回避、感覚刺激):その行動の理由やその行動によって得ようとするものがあり
  4.  得られるもの:行動の結果、得られる具体的な結果がある
この要素を思い出しながら、考えてみて下さい。私は次のような4つの仮説を考えました。

「他児を押す、ふざける」行動の理由、考えられる仮説とは?

仮説1

直前の部屋遊びの時間に苦手な製作活動で友だちにバカにされた。
廊下に並んだとき、その友だちがすぐ前だったので叩いた。
これを4つの要素に沿って分析すると、
  1.  これまでの経験:直前の部屋遊びの時間に友だちにバカにされた。廊下に出たときはイライラしていた。
  2.  きっかけ:廊下でバカにした友だちの後ろに並び、その子の背中が目の前にあった。
  3.  行動の理由(要求、注目、拒否・回避、感覚刺激):イライラの「拒否・回避」。加えて突き飛ばしたときの「感覚刺激」を求める。
  4.  得られるもの:バカにした友だちを突き飛ばすことでイライラから逃れる、叩いて気持ちよい感覚を得る。
対応:並ぶときや製作活動のときに、衝突しやすい友だちとの席順を検討する。

仮説2

直前の部屋遊びの時間に、部屋で静かにしていることでストレスを感じていた。友だちを突き飛ばすことで解放感を感じたくて、突き飛ばした。
  1.  これまでの経験:直前の部屋遊びの時間に室内で静かにしていることでストレスや緊張感を感じていた。
  2.  きっかけ:廊下に並んだことで場面が変わって、静かにしていなくてもいいと感じた。
  3.  行動の理由(要求、注目、拒否・回避、感覚刺激):緊張感の「拒否・回避」、さらに、突き飛ばしたときの「感覚刺激」を求める。
  4.  得られるもの:突き飛ばすことで緊張感が減る、叩いて気持ちよい感覚を得られる
対応:活動の難易度を下げる、リラックスできる活動をはさむなどの工夫をして部屋遊びでのストレス、緊張を緩和する。

仮説3

トイレの時間は遊んでいいと思っていたから、友だちにじゃれつくつもりで突き飛ばした。
  1.  これまでの経験:特別なことはなく、通常の心理状態で廊下にでた。トイレに行く時間を「遊び」の時間、じゃれついていい時間だと思っている。
  2.  きっかけ:廊下に並んだことで「遊び」をしていい時間になったと思った。よくじゃれあう友だちが近くにいた。
  3.  行動の理由(要求、注目、拒否・回避、感覚刺激):相手の「注目」、突き飛ばしたときの「感覚刺激」を求める。
  4.  得られるもの :相手からの注目あり、楽しい時間あり、気持ちいい刺激あり
対応:今は遊ぶ時間でないことを「トイレに行く前に」繰り返し伝える。移動時の人数を減らす、並び順を刺激し合わないメンバーにするなど、廊下に並んだときに行動の「②きっかけ」ができないような工夫をする。

仮説4

廊下に並んだとき、友だちが近づいたのが怖くて、友だちから離れるために突き飛ばした。
  1.  これまでの経験:特別なことはなく、通常の心理状態で廊下にでる。感覚過敏があり、他児の接近が嫌、怖い。
  2.  きっかけ:廊下に並んだとき、「他児が近づく」という本人にとって「怖い、嫌だ」と思うできごとがあった。
  3.  行動の理由(要求、注目、拒否・回避、感覚刺激):不快や不安、不快な感覚刺激からの「回避」、「拒否」を求める。
  4.  得られるもの:友だちが自分から離れる。距離がとれることによる安心感。
対応:フラフープやテープを活用して、友だちとの距離感を保てるようにする。
青空


具体的な解決方法

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原 哲也(はら てつや)

この記事を書いた人

原 哲也(はら てつや)

言語聴覚士・社会福祉士 一般社団法人WAKUWAKU PROJECT JAPAN代表理事。児童発達支援事業所「WAKUWAKUすたじお」代表。1966年生まれ、千葉県出身。大学卒業後にカナダの障害者グループホーム勤務、東京の障害者施設職員勤務を経て、29歳から小児障害児リハビリテーション専門職として、長野県の病院や市区町で発達相談や障害児の巡回相談業務に携わる。『発達障害児の家族を幸せにする』を志に、全国を駆け回り、乳幼児期から青年期までの発達障害児と家族の応援をおこなっている
<WAKUWAKUすたじおHP>
http://www.waku-project.com/

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