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スウェーデン在住の絵本翻訳家に聞く「保育現場での絵本の活用アイデア」とは?

果実が描かれた紙の穴に指をいれているところ
スウェーデン在住で2児の母であり、プレスクールで保育士として働くよしざわたかこです。この連載ではスウェーデンの幼児教育を中心として、保護者の目線と働く目線とを織り交ぜながら、現地のリアルな情報をお伝えしていきます。

世界で愛されるスウェーデンの絵本の魅力とは?

絵本翻訳家の高橋麻里子さん

スウェーデン在住の絵本翻訳家でプレスクール教師の高橋麻里子さんへのインタビュー企画、第二弾。スウェーデンの絵本と教育の魅力についてお届けしています。インタビュー後半は、スウェーデンの絵本の特徴と保育現場での活用方法をご紹介頂きます。

【前回記事はこちら↓】

スウェーデンの絵本の特徴はどんなところにあると思われますか?
 

“森や自然が描かれた絵本”が長い間愛されていますね。スウェーデンは森と水の国で、首都のストックホルムでも緑が至るところにあります。人々は自然を身近に感じながら幼少時代を過ごすので、大人になってからも自然への愛着心が強いのが理由だと感じます。

プレスクールでも自然環境への取り組みや森での活動は積極的に取り込まれ、副教材として“自然をテーマにした絵本”を取り上げたり、挿絵を額に飾ったりしているんですよ。

自然をテーマにした絵本



>>ごきげんななめ

“自然をテーマにした絵本”には、具体的にどんな作品がありますか?


私の初の翻訳絵本『ピーレットのやさいづくり』(2016年/ 岩波書店)は、ピーレットという名前の女の子が犬のピフと一緒に野菜作りをするお話です。

土を耕すところから悪天候で畑が水浸しになるなどの苦労を経て、収穫までの道のりを丁寧に描いています。原作は1947年と随分前に出版されましたが、自分で野菜を育てるというテーマ、「長くつ下のピッピ」の絵で知られるイングリッド・ニイマンの可愛らしい挿絵は今でも違和感なく楽しめる往年の名作です。

他には、日本でも広く知られている、エルサ・ベスコフの絵本『もりのこびとたち』(1981年/ 福音館書店)や『ペレのあたらしいふく』(1976年/福音館書店)、レーナ・アンデションの『リネアの12ヶ月』(1994年/ 世界文化社)や『マーヤの植物だより』(1995年/ 小峰書店)などでしょうか。





 

絵本で見るスウェーデンの“多様性”とは?

インタビュー前半でも伺ったスウェーデン教育の「多様性」や「ジェンダーフリー」は、絵本の世界でどのように描かれていますか?


動物を擬人化して性別や肌の色などを識別できないものが、最近特に増えたように感じます。

人間の登場人物にしても、肌や髪の色が違うさまざまな人種、それぞれ異なる体型の人物を描いたり、活発で強い女の子や家事育児を率先してする父親など、これまでの男女のイメージとは違う姿を描いています。

 

>>アストンの石

出版されてから随分経っていますが『アストンの石』(2006年/ 小峰書店)はいい例だと思います。登場人物を犬にすることで、人種を特定しないし、編み物をしているのはアストンのパパで、ママはギターに夢中。今までのジェンダーの役割を覆しています。

日本ではなかなか見かけない設定ですね。なぜそこまで「多様性」や「ジェンダーフリー」の意識が浸透していると思われますか?
 

スウェーデンでは、人間は家族構成、民族、性役割など無意識に「当たり前」を作っていると考えています。そこから外れる人を疎外するなど、差別をしないようにと、社会全体が意識を高く持っています。

それは、“Normkritik(普通を批判する)“ という言葉によく現れていると思います。絵本もその影響が現れていて、無意識に「当たり前」となっていた、性別役割、家族構成、肌の色を変えた内容や描写のものが増えました。日本の子どもたち達にもこのような絵本を積極的に読んでもらいたいです。

日本の保育でスウェーデンの絵本を活用するには?

ピーレットのやさいづくり

翻訳著書『ピーレットのやさいづくり』(岩波書店)、『ごきげんななめ』(ほるぷ出版)は日本の保育現場でどのように活用できるでしょうか?
 

『ピーレットのやさいづくり』は一緒に野菜を育てる時の導入として読むことができます。本作が見開き一ページに一つの絵というレイアウトなので、野菜が育つ様子を追いやすいと思います。畑の土に必要なミミズ、害虫のカタツムリを食べてくれるハリネズミ、カカシを怖がるカラスなど、身近な生き物の知識も描かれているので、生き物について話すきっかけにしてもいいかもしれません。

『ごきげんななめ』は読者参加型の絵本で、切り抜きの部分に指などをかざしながらお話を読み進めます。登場人物は果物たちで、機嫌の悪いレモンちゃんをその他の果物たちが、読者の体の一部を借りて楽しませるという物語です。

読むだけでも楽しいのですが、絵を描き、切り抜いてお話を作るという創作活動につなげることもできます。実物の果物を使って、お話をしたり、子ども達と新しいお話を作ったりしても楽しいです。
 
果実に顔が描かれた絵

子どもは聞くだけでなく実際に言葉を使うことで言語獲得をするので、絵本でもストーリーボックスでもなんらかの形で、子ども達が手に取り、お話しを自分で語ることができるよう配慮するのが大切だと私は考えます。

スウェーデンの絵本作家の活用アイデア

『ごきげんななめ』の作者、エンマ・ヴィルケさんもご自身の絵本でワークショップを開催されているそうですが、具体的にどんな内容なのでしょうか?
 

エンマさんは同作をメインにしたワークショップを、スウェーデン国内のプレスクールで開催されています。先日、そこでの活用例を伺ってきました。
 
子どもたちが物語をイメージして作った作品

紙や木で登場人物の果物や船、家などを作り、子どもたち達と一緒に物語を使ったそうです。また、果物が描かれた紙に子どもたち達が目を描いて、指を入れるための穴を切り抜く創作活動に繋げてみたとか。
 
果実が描かれた紙の穴に指をいれているところ

また、あるプレスクールからエンマさんに届いた活動報告では、絵本の読み聞かせの後にレモンや果物をテーマにして、果物の切り口でスタンプをしたり、レモンの形を観察して紙に書いたり、種を植えたり、水に浮かぶ実験をしたそうです。

髙橋さんのお話から、絵本からつながる保育の活動は無限だと、改めて感じました。これからも是非、たくさんのスウェーデンの絵本の魅力を日本に伝えていただきたいと思います

 

高橋さんはご自身のホームページで、スウェーデンの絵本を数多く丁寧に解説、ご紹介されています。ぜひ、そちらも覗いてみて下さいね。

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(高橋麻里子さんプロフィール)
山口県生まれ、東京育ち。日本女子大学大学院家政学研究科児童学専攻修了。スウェーデンプレスクール教師、絵本翻訳家。2008年にスウェーデン留学、2016年に「ピーレットのやさいづくり」(岩波書店)、2020年「ごきげんななめ」(ほるぷ出版)を翻訳出版。
【絵本の詳細はこちら↓】
>>「ピーレットのやさいづくり」(岩波書店)
>>「ごきげんななめ」(ほるぷ出版)
2017年からはスウェーデンストックホルムにて、日本語話者の子どもたちに向けて家庭文庫を月1 回開催。ホームページ(http://www.marikotakahashi.se)にてスウェーデンの絵本を紹介しています。
よしざわたかこ

この記事を書いた人

よしざわたかこ

スウェーデンの保育士。東京でOL(10年)→出産→退職→幼児教育を学ぶために再度大学生→2016年に家族でスウェーデン移住→スウェーデン語をゼロから学び、2019年5月からプレスクールに勤務中! 移住後は、スウェーデンの幼児教育事情をブログにて配信中。
<ブログ>
https://sweden-hoikublog.com/

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