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“いつも怒った顔”のジョナスが心を開いたきっかけ【カノア保育園の子どもたち】

カノア保育園の子どもジョナス
ブラジル・カノア保育園の設立ストーリーと並行してお届けするシリーズ「カノア保育園初めての子どもたち」。今回は、ジョナスという子のお話です。立ち上げたばかりの保育園に通い始めたものの、いつも “怒った顔”。そんな彼が心を開くようになるまでのエピソードです。
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複雑な家庭背景を持つ男の子

カノア保育園ができ、初めて通ってきた子どもの中にジョナスという男の子がいました。浅黒く、体も大きい。いつも怒っているような顔立ちをしている男の子でした。

彼には父親がいません。母親と2人の姉と一緒に暮らしていました。姉二人とジョナスは、三人とも父親が異なり、ジョナスの父親は誰なのか、母親さえも分からない状況でした。

ジョナスには、同じ年齢のいとこがいました。彼の名前はアイルトン。カノア保育園のあるエステーヴァン村では、母親の家族とのつながりが強く、幼い時は特に、母親の家族と一緒に過ごす時間が長いのです。そのため、彼らは双子のように、いつも一緒にいました。

私と一緒に保育園を立ち上げた「エヴァさん」の家に、近所のお母さんたちが集まっているとき、窓から顔を出している人がいました。それが、ジョナスとアイルトンの母親です。

彼女たちは積極的に家の中で話をすることはありませんでしたが、毎日必ずその窓から顔を出し、話を聞いていたのです。

アイルトンの母親と父親はいとこ同士です。エヴァさんの家にいつもおやつを持って訪れていたイレーニさん(第1回目でご紹介したアンジェリーナの母親)のお兄さんがアイルトンの父親ということもあり、アイルトンの母親は姉である、ジョナスの母親を連れて毎日、エヴァさんの家を訪れていたのです。

【アンジェリーナの記事はこちら】 カノア保育園をつくろうという話をした時、「いつでも声をかけてね」といってくれたのは、アイルトンの母親でした。そして、その姉であるジョナスの母親は怒鳴ったような声を出しながらも、一緒に頷いてくれていました。




笑顔のきっかけは?

保育園が始まり、子どもたちが通ってくるようになると、ジョナスも姉に連れられて保育園にやってきました。

興味津々に保育園を眺めるお姉さんたちに比べて、ジョナスは部屋には入りたくないと、頑固にもドアの前を動きませんでした。ようやく部屋の中に入ってきたときも、一日中怒ったような顔をしています。

いったいジョナスはどんなことが好きで、どんなことに興味を持っているのか…? 

何度も家庭訪問を繰り返し、家族や親せきに話を聞く日々が続きました。ある日、子どもたちと一緒に砂丘を超えて、森を探検することになりました。毎日この森を訪れている子どもたちは、私たちよりも森のことを把握していて、どんどん先に進んでいってしまいます。

子どもたちについていくのがやっとの私のそばを離れず、一緒に歩いてくれている子どもがいました。ジョナスです。

「先生が、ヘビにかまれたら大変だから」

と、照れたような顔を見せるジョナス。この日を境に、ジョナスは笑顔を見せてくれるようになったのです。
カノア保育園の子どもジョナス

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