父親の育児の現在地

阿川先生は現在、ファザーリング・ジャパン(※1)関西の理事を務めていらっしゃいます。まずは、国内における父親の育児に関する状況について教えていただけますか?
海外との比較という点では、欧米に比べて日本の父親の育児時間が少ないというのは事実としてあります。ただし、社会構造が国によって全然違うので単純には比較できません。また、文化的な背景の違いもあります。例えば、「韓国や中国どうなんだ?」という比較はあまり出てこないですが、実はアジア圏で見ると、それほど日本と変わりません。そういったアジア文化の影響は、日本も同じように受けているんです。ただし、父親の育児時間が少ないのは事実。「じゃあどれだけ増やせるのか?」と考える上で、面白い調査研究の結果があります。日本の男性は、仕事時間と通勤時間を除いた残りの時間の中で、家族に割いている時間が世界の中でほぼ1位です。海外では趣味や個人の時間があったりする一方で、日本の場合は家族に割いている時間がすごく大きい。また、実は母親も同じなんです。自由時間のほとんどを家族に使っている。だからストレスを家族の外で発散することが苦手というのは、どちらの側にも言えることです。
一方で、日本の男性の労働時間と通勤時間が長いというデータがある。その中で「育児時間を増やそう」「家事時間を増やそう」と言っても、余白がないんです。これから働き方改革といったことが十分に進まないと、絶対的に増やせない。ここは社会全体として変わらないといけないところだと思います。
| ※1 「Fathering=父親であることを楽しもう」を掲げて父親支援事業に取り組むソーシャル・ビジネス・プロジェクトのこと。 |
過去に比べてという観点ではいかがでしょうか?
生活基本調査の2016年(平成28年)と2021年(令和3年)との比較で言うと、30分ほど家事関連時間は増えています。少しずつ右肩上がりにはなっていますが、劇的には増えていない。さきほど言った「余白がない」というのが背景にあります。ここで押さえておかないといけないのは、お母さんの家事関連時間がまったく減っていない点。「母親に家事育児の負担がかかっているから、父親が頑張ってやれば負担は減る」という文脈でよく言われますが、父親の育児・家事時間が増えても、母親の方は減らないどころかむしろ増えていたりする。結局、「夫婦で育児をする時間」が増えているんですね。
時間だけで論ずるとこうなりますが、本当はどういう風にやっているのかまで聞かなければいけない。二人で分担して上手くいっていれば負担は軽減しているだろうし、逆に二人でやって上手くいかずに負担が増してるかもしれない。そういう観点も必要かなと思います。
量だけでなく、質を見ないと見誤ってしまう訳ですね。
最近の典型例は育休です。男性の育休取得率は右肩上がりで、2023年(令和5年)時点で30.1%(※2)と、前年の17.1%から大きく伸びています。しかし、私が行っている地域の家庭や子育て支援の現場では、「育休を取ってしんどくなった」ということをよく聞きます。「パパが育休を取ってくれたけど、家で何もしない」「パパが育休で家のことやり始めたら、いろいろと口を出し始めて面倒くさくなった」とか。また、パパの方からしたら育休を取って「さあやるぞ」と思ったら、毎日ママに怒られてしんどいとか、育休を取ったら「こういう風にしたい」と思っていたことが全部否定されるとか。
結局、育休を取ったがために夫婦関係が悪化している例も実際あります。「何のために育休を取るか?」もそうですし、育休中の過ごし方にも目を向けないといけないんです。
| ※2 参考:令和5年度育児休業取得率の調査結果公表、改正育児・介護休業法等の概要について/厚生労働省 >>詳細はこちら |
育休の仕組みを作って利用が進んだけど、どう過ごしたら良いか?ということについてはこれからしっかりと考えていかないといけない訳ですね?
そうですね。育休を取ることや父親の育児時間を増やすことがゴールではなくて、家族としてどうしていくのかという視点で考えていくことが大事かなと思います。父親の保育参加の調査結果

ここからは保育との関わりについてお聞きします。父親と母親で保育への関わり方の違いというのはあるのでしょうか?
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