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保育園の監査は何をする?目的・調査内容・必要な準備を解説

チェックリストと虫眼鏡
平成27年(2015年)4月から「子ども・子育て支援新制度」がスタートし、保育園は特定教育・保育施設として施設型給付を受けるようになりました。それに伴い「確認監査」という新たな指導監査も始まっています。今回は監査について解説します。

保育園の監査

保育園で実施される監査(指導監査)は、関連する各種法令に基づいて、適正な運営がされているかを検査するために行われます。まずは、監査の概要について見てみましょう。

監査の対象施設

保育園の園舎とプール
平成27年(2015年)からスタートした「子ども・子育て支援新制度」により、保育園は特定教育・保育施設として施設型給付を受けるようになりました。この「特定教育・保育施設等」と呼ばれる区分には、以下の4種類の施設形態・事業が含まれています。
特定教育・保育施設等
特定教育・保育施設 特定地域型保育事業
  • 保育園(保育所)
  • 幼稚園
  • 認定こども園(幼保連携型・保育所型・幼稚園型・地方裁量型)
  • 地域型保育事業(家庭的保育・小規模保育・事業所内保育・居宅訪問型保育)
保育園・幼稚園・認定こども園は「施設型給付」、地域型保育事業は「地域型保育給付」の支給を市町村から受けているため、運営の状況について定期的に指導監査などが行われます。

出典:子ども・子育て支援新制度における指導監査等の実施について/子ども家庭庁

監査の種類

「種類」と書いてある木のブロック
続いては、監査(指導監査)の種類について見てみましょう。「特定教育・保育施設等」の指導監査には、大きく分けて「施設監査」と「確認監査」の2種類があります。それぞれについて解説します。

(1)施設監査
「施設監査」は従来から行われている指導監査で、職員配置や面積など認可基準の観点から行われます。

保育園では、1年に1回以上、​​都道府県が主体となって「一般監査」が行われます。もし一般監査で不正や違反などが見つかった場合には、「特別監査」が実施されます。

(2)確認監査
「確認監査」は、子ども・子育て支援法に基づいた指導監査で、利用定員や運営に関する基準の遵守や、施設型給付に関する適正な業務の実施などの観点から行われます。

市町村が主体となり、まずは監査の前に「集団指導」と「実地指導」が行われます。実地指導やその他の情報を踏まえて、運営基準の違反や施設型給付費等の不正などの疑いがあり、確認が必要だと認められた場合には「監査」が実施されることになります。

またこれらの指導監査に加えて、業務管理体制の整備について、法令遵守の観点から検査が行われる場合もあります。

確認監査とは

前の項目で触れた確認監査は、「子ども・子育て支援新制度」の施行により実施されるようになりましたが、もう少し詳しく見てみましょう。

施設型給付を受けるようになった保育園は、子ども・子育て支援法に基づき、市町村からの確認を受けます。また、市町村は確認した保育園に対して指導監査(確認に係る指導監査/確認監査)を実施することになっています。

確認監査の目的

「CHECK」の文字と虫眼鏡
「特定子ども・子育て支援施設等監査指針」には、以下のように書かれています。
特定子ども・子育て支援施設等に運営基準を遵守させ、市町村における施設等利用費の支給事務の適正性を確保することを目的とする。
出典:特定子ども・子育て支援施設等の指導監査について/子ども家庭庁

ここには、監査の目的が「保育園が適切に運営されているか」を確認することであると明記されています。子どもたちの最善の利益を確保するためには、国や自治体が定めた職員配置や設備などの運営基準が満たされていなければなりません。また保育園は特定教育・保育施設として「施設型給付」という財政支援を受けているので、運用の適正を確認するためにも監査が必要なのです。

市町村は保育園の実態を把握し、問題があれば改善を促すために監査を行います。

監査の内容

ここからは、「施設監査」と「確認監査」それぞれの内容について解説します。

施設監査の内容

施設監査は環境と内容、そして健康・安全・給食に関して認可基準が満たされているかの確認が行われます。内容は以下の通りです。
教育・保育環境の整備に関する事項
  1. 学級編成及び職員配置の状況
  2. 認可定員の遵守状況
  3. 園舎に備えるべき設備や定期的な修繕改善等
  4. 教育・保育を行う期間・時間
  5. 職員の確保・定着促進及び資質向上の取組(労働条件の改善、研修の計画的実施等)
教育・保育内容に関する事項
  1. 教育及び保育の内容に関する全体的な計画の作成
  2. 指導計画の作成
  3. 小学校教育との円滑な接続
  4. 子育て支援の内容及び家庭・地域社会との連携
健康・安全・給食に関する事項
  1. 健康の保持増進に関する取組状況
  2. 事故防止・安全対策に関する取組状況
  3. 給食の適切かつ衛生的な提供に関する取組状況

確認監査の内容

確認監査では、利用定員と運営に関する基準について確認されます。また、保育園の場合は施設型給付に関する観点から監査が行われます。内容は以下の通りです。
利用定員に関する基準  
運営に関する基準
  1. 内容及び手続きの説明及び同意
  2. 応諾義務・選考
  3. 小学校との連携、教育・保育の提供、評価、質の向上
  4. 利用者負担の徴収
  5. 事故防止及び事故発生時の対応、再発防止
  6. 利用定員の厳守
  7. 地域との連携
  8. 会計の区分
  9. 各種記録(職員、設備及び会計、教育・保育の提供計画等)の整備
給付に関する事項
  1. 地域区分、定員区分、認定区分、年齢区分
  2. 基本分単価
  3. 各種加算事項
  4. 各種加減・乗除調整事項
出典:子ども・子育て支援新制度における指導監査等の実施について/子ども家庭庁

監査の流れ

STEP1・STEP2・STEP3に進んでいくイメージ写真
施設監査は都道府県、確認監査は市町村が主体となって行われますが、都道府県と市区町村が連携し、同時に監査を実施する場合もあります。ここからは、監査の一般的な流れを解説します。

(1)実施通知
監査の実施にあたり、日時や目的などが書かれた実施通知が保育園に送られます。

(2)監査の実施
保育園にて書類の確認や設備の検査などが行われます。

(3)監査結果の通知
監査の後、指摘事項の有無に関わらず、結果についての通知があります。

(4)改善報告書の提出
監査で指摘事項があった場合は、60日以内に改善報告書を市町村へ提出します。

適正な運営をしていない場合は、市町村から行うべきことの「勧告」があり、勧告に対して措置を取らなければ、従うよう「命令」があります。

不正や違反があり、適切な運営が行えない場合には「確認の取り消し」が行われ、5年が経過するまで確認申請ができなくなります。

事前の準備

保育園の園舎の模型とチェックリスト
監査では確認する内容がたくさんあります。円滑に進むよう、園の方でできる準備はしておきましょう。

必要な書類を揃えておく

監査に必要な種類は揃えておきましょう。監査は年度途中で行われることが多いため、当年度分だけでなく、前年度分の書類も必要になる場合があります。保育や給食、運営に関する書類など膨大な量になりますが、きちんと仕分けして、すぐに取り出せるようにしておきましょう。

環境を確認しておく

保育室内の様子
保育園の環境の検査もあります。危険な箇所はないか、衛生面で問題はないか、事前にチェックしておきましょう。普段は適切にできていても、監査の時にできていなければ指摘事項となってしまいます。前年度の指摘事項が改善されているか確認しながら、環境を整えておきましょう。

準備をして監査に臨もう

「特に問題はない」とわかっていても、監査は緊張を伴うイベントです。監査の内容を理解し、事前に準備をしておけば、心にゆとりをもって対応をすることができますよ。監査を控えている園の担当者は参考にしてみてくださいね。

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佐野 きこ(さの きこ)

この記事を書いた人

佐野 きこ(さの きこ)

現役保育士。
現在は子どもだけでなく、保育士や保護者など、子どもに関わる人をサポートする仕事がメイン。子どもも保護者も保育士も、みんなが笑顔になれる保育を目指している。
座右の銘は「保育士は、保育のプロである」
保育の専門家として、わかりやすく保育を語れるよう奮闘中。
家庭では、2人の息子のお母さん。

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