ドイツの保育記録を見せて!
日本の保育園や幼稚園では、子ども一人ひとりの成長を記録する「個人記録」や「保育経過記録(児童票)」など、保育記録の書類がありますよね。クラス全体の活動を振り返る「保育日誌」とは別に、「個人記録」は子ども一人ひとりの成長を個別に記すことで「保育者がその子へどのようなアプローチをし、どのような変化があったか」を振り返り「今後どのような援助が必要か」を考えるために有効なツールだと感じます。
ドイツの保育園にも「個人記録」と同じような書類があり「観察記録」と呼んでいます。
今回は、私の働く保育園で活用している「観察記録」をご紹介します。
「観察記録」を記入する頻度
私の働く保育園では、月齢10か月〜3歳になるまでの子どもたちを保育しています。※ドイツでは満3歳~5歳専門の保育施設があり、3歳の誕生日を迎えると卒園していきます。
実際の「観察記録」のフォーマット
子どもが月齢10か月で保育園に入園し3歳の誕生日を迎えて退園するまでに、保育士が記入する「観察記録」の用紙がこちらです。記録の頻度は?
2〜4か月ごとに記入する日本の個人記録と比べると、ドイツの観察記録は記入頻度が少ないのが特徴です。主に下記の4回にわたって記録します。
ドイツの観察記録のタイミング
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記録自体は大きく4回のタイミングではあるものの、これとは別に、週に一度1時間の「クラスミーティング」の時間を設けており、そこでクラスの子どもたち一人ひとりの1週間の様子を振り返っています。
私のクラスは子ども10名に対し、クラスミーティングに参加する保育士は3名です。
一人で書類を振り返るのではなく、クラスの先生同士で話しながら一緒に子どもの様子を振り返る…というのが、ドイツの保育園ならではのポイントと言えるかも知れません。
「観察記録」の中身は?
それでは「観察記録」の中身をご覧いただきたいと思います!国で決められたフォーマットがあるわけではなく、園ごとに様式や項目が少しずつ異なります。
私の働く園では下の写真のように、チェック項目が箇条書きに連なった様式を使っています。
どんな内容をチェックするの?
保育士は普段の観察をもとに、項目に記載されている姿が見られたかどうかを「はい」「いいえ」「未観察」の3種類から選んでチェックします。気になることがあった際は備考欄に記入します。私が日本で働いていた保育園も、チェックマーク欄と備考欄のある個人記録用紙を使っていました。この点は、日本とドイツの保育園の共通点とも言えそうですね。
そして、テーマは大きく分けると以下の通りです。
「観察記録」の項目(テーマ)
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後者に関しては、近年ドイツに移民が増えていることにより、保育園にドイツ語の基盤づくりの役割が求められるようになっている背景もあります。
「観察記録」どう活用する?
私の働く園では、年に一度の保護者面談の際にこの「観察記録」を活用しています。保育士は記入した観察記録をもとに、その子の成長を振り返り、保護者面談で伝えたい事柄を紙にまとめます。ちなみに私の園では、観察記録のチェック項目を踏まえて、以下のようなテーマを話すことが多いです。
保護者面談で「観察記録」を活用する項目
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この観察記録のフォーマットを使うようになってから、その子の長所・援助が必要な事柄などを、より具体的に話せるようになったと感じています。 たとえば運動面に関して保護者から聞かれた際のこと。
「全身運動が得意で、後ろ向きに歩いたり、ジャンプをして両足で着地したりすることができます。一方で、手指の運動は援助が必要で、3cmほどの大きさの積み木を3つ以上積むのはまだ難しそうです」
こんな風に、観察記録のチェック項目をもとに具体的に答えることができています。
日本の「個人記録」とドイツの「観察記録」の違いは?
今回はドイツの保育園の書類「観察記録」について、ご紹介しました。日本の「個人記録」とドイツの「観察記録」を比較すると…? 最後に私なりの考察をお伝えしたいと思います。
日本の場合
高頻度で個人記録を作成するため、書類の作成者自身が子どもの成長を振り返る機会が多くあります。また、書類として残すため、第三者も記録を読むことで、その子の成長過程を知ることができます。ドイツの場合
観察記録の作成頻度は全4回と少ないですが、一人ひとりのこどもの様子をクラスの先生たちと一緒に振り返り、共有する機会がしっかりと設けられています。また、観察記録をもとに保護者面談を行い、作成した記録を大いに活用している点も特徴的です。
クラスの先生たちと日頃から子どもたちを一緒に見守り・振り返り・共有する。この時間を十分に確保した上で、観察記録という記録を残し、保護者とのコミュニケーションに活かすことができます。
ドイツでは「観察記録」という書類一つを通して、
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