運営事業者が受講のポイントを解説
2023年度(令和5年度)から処遇改善の加算要件が段階的に引き上げられていくため、受講者の増加が見込まれている「保育士等キャリアアップ研修」制度。皆さんの周りでも受けている人が増えているのではないでしょうか。そこで今回は、実際に受講をする際の注意点や心構え、また研修をどうスキルアップに繋げていけば良いのかについて深掘りしたいと思います。引き続き、保育士等キャリアアップ研修の運営を手掛ける「家庭ラボ」の上田 瑛さんにお話を伺いました。
オンライン学習の注意点とコツ
まずは、現在主流となっているオンライン学習(eラーニング) 形式について、注意すべき点と上手に対応していくためのコツについてお聞きしました。オンライン学習の構成
前提としてお聞きしたいですが、研修形式の中でオンライン学習の割合は多いのでしょうか?
はい、多いですね。コロナ禍をきっかけに各自治体でオンライン学習形式での実施要件が緩和されて以降はかなり増えました。今年度、東京都が指定したキャリアアップ研修の7割強がオンライン形式となっていますので、現在は主流の実施形式と言って良いと思います。
前回のおさらいも兼ねてになりますが、主にどんな形式で実施されているのでしょうか?
東京都の実施例で言うと、以下の4パターンですね。
①12時間分が講義形式のオンデマンド配信/3時間分がTV会議システム(Zoomなど)による双方向でのオンライン演習・グループ討議
②12時間分が講義形式のオンデマンド配信/3時間分が会場での演習・グループワーク
③15時間分すべてが会場での集合型研修
④15時間分すべてがTV会議システム(Zoomなど)によるライブ型研修
この例で言うと、パターン③以外は一部もしくは全部にオンライン学習が組み込まれた形式となっています。
オンデマンド動画視聴の注意点
オンライン学習での受講では、どんな点に気を付ければ良いでしょうか?
前出の①②のパターンで言うと、12時間のオンデマンド配信の動画を視聴する必要があります。多くは1カ月程度の期間が設定されるのですが、期間終了ぎりぎりのタイミングで積み残した動画をたくさん見なければいけないケースがよく見受けられます。中には、翌日がTV会議によるグループ研修なのに、12時間のうち8時間残っているという方もいらっしゃいました。
なかなか厳しい状況ですね。そのような場合、実施機関としてはどう対応していますか?
我々の場合で言うと、視聴を促すためのリマインドメールを定期的に送信したり、視聴が進んでいないと分かった方にピンポイントで電話連絡をするなどのサポートを実施しています。
対策として期間を延ばすことも考えられますが、いかがでしょうか?
現在、期間は1~2ヶ月に設定されるケースが一般的です。それより長くもできますが、あまり長すぎると演習までの期間が開いてしまい、学習したことを忘れてしまうといった弊害も出てきます。
なるほど、期間と分量のバランスはなかなか難しいですね。受講者が期間中にきちんと動画を視聴していくにはどうすれば良いでしょうか?
基本的なアドバイスにはなりますが、まずは計画を立てて、少しずつでも見ていくようにするのが良いと思います。オンデマンド学習は好きな時間に取り組める分、学習ペースの自己管理が重要になります。ラボのオンデマンド動画には各単元に目安の学習時間を表示しておりますので、それを参考に学習ペースの計画を立てると、無理なく受講を進められると思います。
オンデマンド動画視聴のポイント
オンデマンド動画の見方についてはいかがでしょうか?
まずは心構えとして、オンデマンド配信とは別に3時間分の実施が予定されている双方向の演習を意識することをおすすめします。
具体的にはどういうことでしょうか?
ただ単に12時間の動画を見るだけでなく、重要なポイントはメモを取るなどして、その後に続く演習の準備をしてほしいですね。受け身の姿勢ではなく、主体的・能動的な意識を持って取り組むことが重要です。結果的に、その準備が後の演習時に生きてきます。
ラボの顧問をしていただいている汐見稔幸からも「受け身ではなく、ここだけはぜひ深めたいという姿勢で参加して頂けたら」という応援メッセージをいただいております。我々は、受講者の方が主体的に取り組み、明日の保育に活かせる研修となるようサポートさせていただきますので、積極的にご参加いただきたいと考えております。
演習参加時のポイント
続いては、双方向形式での演習に参加する際に気を付ける点についてお伺いしました。研修には必ず組み込まれるプログラムですが、どのように取り組めば良いのでしょうか。双方向演習の実施形式
まずは、双方向の演習がどういった形式で行われているかについて教えてください。
一例として東京都のケースを挙げると、実施ガイドラインには「eラーニングでの学習内容を踏まえたグループ討議等の演習を、集合型研修※で実施すること。(15時間研修のうち、3時間以上)」とあります。これに従い、3時間の双方向型の演習が実施されているケースが一般的です。
※3時間以上の集合型研修について、東京都ではコロナ禍以降、双方向のオンライン通信(Zoom等)で実施することが認められている。
オンライン・オフラインなど、どのような形式が多いのでしょうか。
以前は、準備した会場に集まって実施するオフライン開催が前提となっていました。しかしコロナ禍による実施要件の緩和もあり、Zoomなど双方向のオンライン会議ツールで実施するケースが増え、現在では主流となっています。
確かに場所の制約が無くなるのは、受講者の負担も軽くなるのでメリットですね。
演習参加の心構え
双方向の演習に参加する際、受講生はどのような準備をしておけば良いのでしょうか?
前のパートでもお話しましたが、オンデマンド動画を視聴する際にポイントをメモしておくといった準備をしておくと、スムーズに演習に入れるだけでなく、その時間を有効に活用することにも繋がります。
心の準備というか、心構えについてはいかがでしょうか?
受講後に取っているアンケートには、「他園で働いている方との情報交換ができて良かった」「働いている園のことしか知らなかったけど、よその園のやり方を知って刺激を受けた」といったコメントもよく見られます。演習は、普段なかなかできない、他園の方との交流ができる貴重な機会でもあります。そういう意識で参加いただけると、より充実した時間になると思います。
なるほど。もう少し詳しく教えていただけますか?
常々受講者の皆さんに伝えているのは、「選択肢をたくさん持てるように学びましょう」ということ。よく「保育には正解が無い」と言われますが、あるシチュエーションでは上手くいったことも、違うタイミングでは通用しないということがよくあります。どの分野でも、自分の中の選択肢をたくさん持てた方が、良い保育ができることに繋がります。もちろん動画視聴を通して選択肢は増やせますし、3時間の演習でいろいろな施設の話を聞くことから選択肢を増やすこともできます。
そういった意識で研修に臨んでほしいということですね。
そうです。自分の中の選択肢が増えてくると、「保育士としてやれる」という自信にも繋がってきます。