事故報告集計の概要
令和6年(2024年)8月2日、こども家庭庁が「教育・保育施設等における事故報告集計」の令和5年板を公表しました。このデータに載っている重大事故の報告件数は2,772件。前年比で311件の増加となっており、8年連続で増加し続けています。事故報告集計とは
この事故報告集計は、保育施設や放課後児童クラブなどで発生した重大事故の報告を集計したデータで、平成27年分(2015年分)から毎年公表されています。この報告で取り上げている事故の定義は以下の通り。- 死亡事故
- 治療に要する期間が30日以上の負傷や疾病を伴う重篤な事故
事故報告制度の経緯
事故を報告する制度自体は以前からありましたが、現行の制度については以下のような経緯で見直しが行われて現在に至ります。2014年(平成26年)9月 | 子ども・子育て支援新制度の施行に向けて、重大事故再発防止の検討会を設置 |
2015年(平成27年)4月 | 事故報告制度の見直し
|
2017年(平成29年)11月 | 認可外保育施設等にも事故報告が義務化 |
参考:教育・保育施設等における事故報告集計/こども家庭庁 >>詳細はこちら
事故報告の集計結果
ここからは事故報告の集計結果を見ていきましょう。令和5年の事故報告の総数
次の表は、令和5年の事故報告件数を示しています。負傷の内訳を見ると、「意識不明」「骨折」「火傷」「その他」に分かれており、最も多かったのは「骨折」の2,189件(保育施設1,638件、放課後児童クラブ551件)で、全体の約8割(79.0%)を占めました。
子どもは活発に身体を動かして遊ぶことが多いため、転んだり、遊具などから転落したりすることも。衝撃の大きさや手のつき方によっては、骨折してしまうケースも見られます。
事故報告数の推移
続いて、過去9年間の事故報告数(死亡事故と負傷などを伴う事故の総数)の推移を見てみましょう。年 | 保育施設 | 放課後児童クラブ | 合計 |
---|---|---|---|
平成27年 | 399 | 228 | 627 |
平成28年 | 587 | 288 | 875 |
平成29年 | 880 | 362 | 1,242 |
平成30年 | 1,221 | 420 | 1,641 |
令和元年 | 1,299 | 445 | 1,744 |
令和2年 | 1,586 | 429 | 2,015 |
令和3年 | 1,872 | 475 | 2,347 |
令和4年 | 1,896 | 565 | 2,461 |
令和5年 | 2,121 | 651 | 2,772 |
事故報告の対象施設の拡大や保育利用者の増加などが要因として考えられる一方で、各施設での事故報告体制の整備が促進されたことも、報告される数が増えている要因の一部として挙げられています。
年齢別・場所別の発生件数
令和5年の事故の発生状況について、年齢と場所に焦点を当てて見てみましょう。年齢別の発生件数
次の表は、事故発生時の年齢を示しています。満5歳といえば、4歳児クラスや5歳児クラスに属していることになります。身体機能が高まり、スピード感のある遊びや自分の能力を超えた遊びに挑戦したくなる年頃であることが、事故やケガが多くなる一因として考えられます。
死亡事故の年齢に着目して見ると、0歳が4名で、1歳と2歳が各1名となっており、0歳が最も多いことが分かります。
0歳児は身体機能や免疫が未発達である上に、自分で危険を回避したり、助けを求めたりする力が不十分です。乳児は複数の理由が重なり合うことで、死亡事故リスクが高くなっていると考えられます。
場所別の発生件数
次の表は、事故の発生場所の数を示しています。屋外では開放的になり、子どもの動きもより活発になります。また、大型遊具があったり、地面の状態に変化があったりすることで、事故に繋がる可能性が高まります。
空間が広いことで保育者の目が行き届きにくくなることも要因の1つとして挙げられるでしょう。
死亡事故の状況
令和5年には、保育施設などで死亡事故が9件発生しました。ここからは、死亡事故発生時の状況について見ていきましょう。死亡事故における主な死因
次の表は、死亡事故における主な死因を示しています。死亡事故の死因として、窒息と病死、溺死、急性硬膜下血腫が1件ずつありました。さらに死因不明が5件あり、保育士がいち早く子どもの異変に気付き、対応することの重要性が感じられます。
死亡事故発生時の状況
次の表は、死亡事故発生時の状況を示しています。子どもの動きが少ない睡眠中こそ、保育士は注意深い観察が必要だと言えます。
また、水遊びや食事中にも1件ずつ死亡事故が起きています。溺れたり、食べ物が喉に詰まったりすると、声を出すことができません。子どもの危機にいち早く気付くための見守りが重要です。
重大事故を防ぐために
子どもの育ちを保障する場である保育施設。子どものケガを完全に無くすことは難しいですが、適切に見守り、不測の事態に素早く対応できるよう準備をしておきたいですね。こども家庭庁では、毎年の統計公表と合わせて「教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン」を公開しています。園で事故防止について話し合う際には参考にしてみてください。
出典:教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン(平成28年3月)/こども家庭庁
>>詳細はこちら
【関連記事】