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待機児童数は7年連続で減少|最新の「保育所等関連状況」を解説【2024年】

積み木の校舎と棒グラフのイメージ
こども家庭庁は毎年、保育所などの施設の定員や待機児童の状況を集計した「保育所等関連状況取りまとめ」を公表しています。令和6年4月1日分は8月30日に公表され、最新の情報を知ることができます。今回は、このデータを元に保育施設を取り巻く状況や近年の推移について解説します。

調査の概要

保育園と街の模型
「保育所等関連状況取りまとめ」は、こども家庭庁が毎年公表(以前は厚生労働省)しているデータで、4月1日時点での保育所などの数と定員・利用児童数・待機児童数の内訳が示されています。令和6年(2024年)4月1日時点の状況は、8月30日に公表されました。

この取りまとめは、もともと保育所の状況を把握するために実施されていましたが、「子ども・子育て支援新制度」が施行された平成27年度(2015年度)からは、保育所に加えて、幼保連携型認定こども園などの特定教育・保育施設と特定地域型保育事業の数値も含まれるようになりました。

長年、待機児童の問題が社会的な課題として注目を集めていたこともあり、毎年この調査結果が公表されると、待機児童数の状況がニュースに取り上げられています。

出典:保育所等関連状況取りまとめ(令和6年4月1日)及び「新子育て安心プラン」集計結果/こども家庭庁(令和6年8月30日) >>詳細はこちら

保育所等数の推移

ここからは、公表されたデータを一つひとつ見ていきましょう。

次のグラフは、保育所等の数の推移を示しています。
保育所の数の推移を示したグラフ
引用:保育所等関連状況取りまとめ(令和6年4月1日)/こども家庭庁 >>詳細はこちら
全体の施設数は、令和6年(2024年)で39,805カ所となっています。前年から216カ所の増加と現在でも増え続けていますが、令和5年(2023年)の345カ所増、令和4年(2022年)の578カ所増に比べると、増加の割合は緩やかになりつつあります。

施設別に見てみると、保育所は令和4年(2022年)の23,899カ所をピークに減少傾向に転じました。それに対して、認定こども園や特定地域保育事業は年々増加していることが分かります。

社会の変化に伴って、保育所と幼稚園の機能を併せ持つ認定こども園や、多様な保育ニーズに対応する特定地域型保育事業の需要が高くなってきていることが分かります。

定員と利用児童数の推移

次のグラフは保育所などの定員数と、利用児童数の推移を示しています。
保育所の利用児童数の推移を示したグラフ
引用:保育所等関連状況取りまとめ(令和6年4月1日)/こども家庭庁 >>詳細はこちら
全体の定員数は、令和5年(2023年)まで増加を続けてきましたが、令和6年(2024年)は3,044,678人となり、前年から6,250人減少しています。施設別に見てみると、保育所は2,127,660人となり、平成27年(2015年)からほぼ毎年連続して減少していることが分かります。その一方で、認定こども園や特定地域型保育事業は増加し続けています。

また、全体の利用児童数は2,705,058人となり、令和3年(2021年)の2,742,071人をピークに減少を続けています。施設別に見てみると、定員数と同様に、保育所は年々減少し、認定こども園や特定地域型保育事業は増加していることが分かります。

これらの結果、全体の定員充足率(利用児童数÷定員)は88.8%となり、前年と比べて0.3ポイント減となっています。

令和6年(2024年)現在は、認定こども園より保育所の方が定員数・利用児童数ともに約2.5倍となっていますが、いずれ逆転し、認定こども園の方が保育所よりも利用児童数が多くなる時代が来るかもしれません。

待機児童数と保育所等利用率の推移

次のグラフは、待機児童数と保育所などの利用率の推移を示しています。
待機児童数と保育所の利用率を示したグラフ
引用:保育所等関連状況取りまとめ(令和6年4月1日)/こども家庭庁 >>詳細はこちら

待機児童数

「待機児童」と書かれた積み木
令和6年(2024年)の待機児童は2,567人(前年比113人減)で、7年連続で減少となりました。待機児童数が最も多かった平成29年(2017年)の26,081人に比べると、10分の1になっていることが分かります。

また自治体別に見ると、約87.5%の市区町村で「待機児童なし」となっており、全体としては待機児童の問題も収束の方向へ進んでいると言えるでしょう。

調査のポイントを解説する資料によると、待機児童が減少してきている要因として「保育の受け皿拡大」と「就学前人口の減少」の2点が挙げられています。ただし、地域によっては、「申込者数の想定以上の増加による利用定員の不足」や「保育士を確保できなかったことによる利用定員の減」といった理由で待機児童を抱えているところもあるようです。

待機児童数は減少傾向ですが、女性就業率の上昇(令和4年の79.8%から令和5年の80.8%に)や、共働き世帯割合の増加(令和4年の73.7%から令和5年の75.6%に)という現状もあります。今後の保育ニーズの推移については、需要と供給のバランスに注目していく必要があります。

出典:令和6年4月の待機児童数調査のポイント/こども家庭庁 >>詳細はこちら
POINT

保留児童とは
待機児童がゼロになった市区町村でも、「保留児童」が存在している場合があります。保留児童は、要件を満たしているにも関わらず認可保育所へ入所できていない児童のことです。例えば、特定の保育所に入所を希望している児童や、認可外の保育所に入所している児童などが挙げられます。保留児童は待機児童にはカウントされないため、今回のデータには反映されていない数値もあると考えられます。

保育所等利用率の推移

保育士と会話を交わすワーキングマザー
「保育所等利用率」は、就学前児童数に対する保育所等利用児童数の割合を示したものです。上記のグラフから、利用率は全体(0歳〜就学前)、1・2歳児共に年々増加していることが読み取れます。

年齢区分別の利用率を次の表で見てみましょう。
年齢別の保育所利用児童数を示した調査結果表
引用:保育所等関連状況取りまとめ(令和6年4月1日)/こども家庭庁 >>詳細はこちら
令和6年(2024年)は、全体(0歳〜就学前)で54.1%の児童が、保育所や認定こども園、特定地域型保育事業を利用していることが分かります。令和5年(2023年)と比べると人数は減少していますが、利用率は1.7ポイント増加しています。

0歳児の利用率は17.3%と他の年齢区分に比べると少ないですが、1・2歳児になると59.3%と利用率が高まります。育休取得後に仕事復帰をする女性も多く、3歳未満児の保育の需要はますます高くなってくると言えるでしょう。

保育の現状を把握しよう

今回のデータから、認定こども園の需要が増え、定員・利用者数ともに増加している現状が分かりました。また、待機児童数は減少の傾向にありますが、保育所などの利用率は年々上昇しています。

今後の保育ニーズを予測するためにも、「保育所等関連状況取りまとめ」のデータをチェックして、現状の把握をしておきたいですね。

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佐野 きこ(さの きこ)

この記事を書いた人

佐野 きこ(さの きこ)

現役保育士。
現在は子どもだけでなく、保育士や保護者など、子どもに関わる人をサポートする仕事がメイン。子どもも保護者も保育士も、みんなが笑顔になれる保育を目指している。
座右の銘は「保育士は、保育のプロである」
保育の専門家として、わかりやすく保育を語れるよう奮闘中。
家庭では、2人の息子のお母さん。

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