きっかけは科学絵本『ちいさなかがくのとも』
いきなりですが読者の皆さまへ質問です。「安息角(あんそくかく)」という用語をご存知ですか?
スマホで調べれば何でもわかってしまう時代ですが、そもそもの言葉を知らなければ調べようがありません。俺がこの言葉とどのように出会ったのか綴ります。
福音館書店から刊行されている月刊誌のうちのひとつ『ちいさなかがくのとも』略して『ちいかが』。科学絵本ですが、全く難しいことはなく、ほんのり漂う科学臭がとても心地よい絵本で、毎年年間購読しています。
令和3年度(2021年度)6月号は
『すなやまトンネルできるかな?』
こさか まさみ ぶん
岡本よしろう え
2021年
福音館書店
>>本の紹介はこちら
海に行った子どもが砂浜でトンネルを作るお話。クラスで読み終えた後、「よっしゃー!トンネル作ろう!」と意気込んでみんなで砂場に直行!!となりました。
盛り上がる砂山遊び
砂場に大量の水を投入し湿らせたら山を高くする。そして4方向から手で穴を掘っていきました。無事に砂山トンネルが完成したら、頂上から水を流したり、周りを水浸しにしたりして楽しみました♪ こんな日は時間を忘れて「もうご飯?」となってしまいます。そして、子どもたちがこの遊びが心から楽しかったのかどうかを知るのは後日。自分たちで道具を持ってきて作り始めたり、「また作ろう」と誘ってきたりする。そしてバージョンアップしていく。こんなうれしいかわいい子どもたちの姿を見られることが、保育士をしている喜びのうちのひとつです。そして「安息角」との出合い
「今月の『ちいかが』もおもしろかったな~」と思いながら、子どもたちが降園した後、毎月付いてくる、解説などが載っている小冊子を読んでいました。何度も「へ~」と呟き続ける俺に、「何が書いてあった?」と聞いてくる同僚。理由は絵本を読めばよくわかりますが、表紙を見ただけでもわかります。表紙には乾いた砂を乗せた手と湿った砂を乗せた手が描いてありました。乾いた砂で作った砂山では、トンネルが作れないのは容易に想像できます。その乾いた砂の山に関する解説で、俺は何度も「へ~」と連発していたのでした。
要するに、「乾いた砂は山を作ろうと思っても、滑り落ちてしまってなかなか大きくならない。その山の斜面の角度は一定で変わらない。トラック一杯の砂を降ろしても同じ角度。だから山を高くしようと思ったら底面を広げていくしか方法がない。その一定の角度のことを“安息角”という。」と書いてありました。
はい!出てきました安息角(あんそくかく)。ご存知の方はおられましたか? 俺は知りませんでした。地質力学などの工学用語なんですって。知ってしまったら試さずにはいられない。探さずにはいられない。
これが
こうなった 本当だ!!
アリジゴクの巣、砂時計etc. 探せば世の中は安息角で溢れている!…わけではありませんが、子どもたちとこの知識を共有しておけば、「先生みつけた!」という日が来るかもしれません。楽しみだな~♪
「へ~」と感じるセンス・オブ・ワンダー
正直なところ、これは直接的には日常生活に役に立たない知識です。また、「安息角」を知ってほしいという意味でこの文章を綴ったのではありません。大人も子どもも「へ~」と感じる。「センス・オブ・ワンダー」が心の成長には必須です。特に子どもたちは、知的好奇心を刺激することで感性が豊かになっていきます。その一役を絵本も担うことができます。地質力学書を読めなくても、絵本や、保育園の先生が絵本を通してきっかけを与えることができます。絵本で広がる保育の世界はなんて楽しいんだ♪
最後に
では最後にひとつお話をします。『ちいさなかがくのとも』令和3年度(2021年度)11月号。『あなほり くまさん』
あかし のぶこ さく
2021年
福音館書店
>>本の紹介はこちら
母熊と子熊の冬眠物語。ファンタジーとリアルの融合で、どんどん次のページが捲りたくなります!この本付録の小冊子も読みました。また「へ~」の連発。
「ヒグマの冬眠穴ってけっこうデカい! 冬眠しながら出産、子育て!?」
どういうことか知りたくなった方はぜひ手に取って読んでみてくださいませ。
▼ほかおすすめの絵本コラムはこちら