企業内保育所・病院内保育所とは
企業内保育所や病院内保育所は、それぞれ企業・病院の中や、その敷地内もしくは近隣の施設などに設置された保育施設のこと。その企業で働く従業員や、病院で働く医師や看護師、職員などの医療関係者が利用することができます。また従業員だけでなく、地域の子どもを受け入れるための定員枠も設けられている園もあります。これらの保育所は一見するとどれも同じように見えますが、実は運営の根拠となる制度が複数あり、利用している制度による違いがあります。中でも主要な制度が、「事業所内保育事業」と「企業主導型保育事業」の二つ。制度名から、企業内保育所はすべて「企業主導型保育事業」に含まれるように思われがちですが、実際は病院内保育所が利用している場合もあります。企業内・病院内いずれの場合も、どちらの制度を利用しているかは園により異なります。
それでは、簡単にそれぞれの内容を確認しておきましょう。
事業所内保育事業とは
「事業所内保育事業」は、平成27年(2015年)に施行された「子ども・子育て支援新制度」における地域型保育事業の一つとして運用されている制度です。企業や病院などの事業主が事業所内に設置する保育園で、従業員の子どもと合わせて地域住民の子どもを預かります。事業所内保育事業で開設されている保育園は、自治体の認可を受けて運営されていることから、認可保育所に分類されます。ただし、一般的な認可保育所や認定こども園とは異なり、預かる子どもの対象年齢が0~2歳児となっていたり、保育従事者における保育士資格保持者の割合が園の規模によって異なっていたりするなど、制度上の違いがあります。
また、もともと地域の保育ニーズに対応するために作られた制度ということもあり、定員の1/4は地域枠として開放することが義務付けられています。事業所内保育事業の特徴をまとめると以下の通りです。
【事業所内保育園の特徴】
- 認可保育園に分類される
- 運営している事業所内や職場の近くに設置
- 運営企業が開園時間や休園日を設定
- 0~2歳の子どもが対象(3歳児以降は連携園に入園)
- 定員の1/4は地域の子どもたちを預かる枠になっている
- 比較的小規模な園が多く、保育士の数は少なめ
企業主導型保育事業とは
「企業主導型保育事業」は、もともと内閣府が2016年(平成28年)に始めた制度で、企業が従業員の仕事と育児の両立を支援することを目的に導入されました。2023年(令和5年)4月からは、新設された「こども家庭庁」に管轄が移管されています。企業主導型保育事業で開設されている保育園は、「認可外保育園」に分類されますが、国から運営費や設置費(設備費)の助成金を受けて運営しています。一般的に認可外保育園は保育料が高額になりますが、企業主導型保育園の場合は、平均的な認可保育園と同じくらいの保育料で利用することができます。
また、企業主導型保育園は休園日や開園時間を企業側が設定しています。従業員の働き方に合わせて日曜・祝日も開園していたり、24時間開園していたりする園もあります。企業主導型保育園の特徴をまとめると以下の通りです。
【企業主導型保育園の特徴】
- 認可外保育園に分類される
- 認可保育園とほぼ同等の助成金を受けている
- 運営している企業内や職場の近くに設置
- 運営企業が開園時間や休園日を設定
- 保育料は事業者が設定している(水準額に応じて設定)
- 0~5歳の子どもが対象(0~2歳児を対象とする園が多い)
- 比較的小規模な園が多く、保育士の数は少なめ
企業内保育所・病院内保育所で働くメリット
企業内保育所や病院内保育所は、認可保育園やその他の認可外保育園と異なる特徴があります。まずは保育士として働くときにメリットになる内容について紹介します。運営企業が給料や福利厚生を決めている
企業内保育所・病院内保育所の給料や福利厚生は、運営する企業が決めています。運営している企業が大企業などの場合、給料や福利厚生が充実していることも多いです。転職するときに条件面を重視している場合には、企業内保育所や病院内保育所の求人も検討してみてはいかがでしょうか。保護者の勤務先と保育所が近い
企業内保育所・病院内保育所は、運営事業者の職場内や職場の近くに設置されていることが多く、保護者が保育所の近くで働いていることが多いのが特徴です。子どもが体調不良のときなどに連絡が取りやすい、保護者の仕事の状況が把握しやすいところは、保育士にとっても安心できる点ではないでしょうか。保護者同士が同じ職場で働いていることが多いため、アットホームな雰囲気の保育所も多いようです。保育士も保育施設を利用できる
企業内保育所・病院内保育所は運営する企業や病院の従業員が利用できるため、保育士も自分の子どもを預けることができます。保育士自身が自分の子どもを保育園に預けられない場合や、きょうだいが別々の保育園に通っていて送迎が大変という場合、自分も保育施設を利用できるのはうれしい点ではないでしょうか。企業内保育所・病院内保育所で働くデメリット
続いて保育士が企業内保育所や病院内保育所で働くときのデメリットを紹介します。保育士の数が少ない
企業内保育所や病院内保育所は、比較的小規模な場合が少なくありません。また、企業主導型保育事業における保育従事者の職員資格基準は「半数以上が保育士」とされており保育士資格を持つ人の割合が少なくなります。そのため、保育士資格を持っている人に業務が集中することも。事業所内保育事業の場合も、定員が19人以下の小規模園の場合は、同じく「保育従事者の半数以上が保育士」という職員資格条件となります。シフトが不規則になるケースがある
企業内保育所・病院内保育所は、従業員の仕事内容に合わせて休園日や開園時間を柔軟に設定していることがあります。日曜・祝日がお休みではなかったり、24時間体制で子どもを受け入れていたりするケースも少なくありません。保育施設を利用する従業員にとってはうれしい点ですが、保育士として働くことを考えるとシフトが不規則になるというデメリットがあります。シフトについては運営企業に準ずることが多く、一律ではありません。運営企業によっては、大型連休や年末年始休暇の間に長期間休みがとれるなど、働きやすいシフトの職場もありますので、自分のライフスタイルに合った求人をじっくり探してください。