こども誰でも通園制度とは?
こども誰でも通園制度とは保護者の就労状況にかかわらず、0〜2歳児の子どもを保育園に預けることができる給付制度です。2023年6月の「こども未来戦略方針」において政府により発表されました。この制度の大きな目的は、家庭で育てられている0〜2歳児の良質な成育環境の整備や、孤立した育児で疲弊している保護者への支援です。
また、こども家庭庁から示されている制度の具体的な指針は以下の通りです。
また、人口減少を見据え、保育所などが就園児だけでなく、地域の子どもの育ちの拠点になることも期待されて制度が設計されています。
参考1:こども誰でも通園制度(仮称)の本格実施を見据えた試行的事業実施の在り方に関する検討会における中間取りまとめ(案)について >>詳細はこちら
「こども誰でも通園制度」開始までの3ステップ
令和8年度(2026年)にこども誰でも通園制度が全国で本格的に実施されますが、その取り組みはすでに始まっています。STEP1 令和6年度(2024年):150程度の自治体で試験的に導入
STEP2 令和7年度(2025年):制度化して実施する自治体を増加させる
STEP3 令和8年度(2026年):全国の自治体において実施予定
令和6年度は、試験的な導入を希望した自治体で通園制度を行い、その実施状況などを踏まえながらより良い制度になるように検討されています。
こども誰でも通園制度のモデル事業と課題
令和6年1月17日時点で全国108の自治体でモデル事業が進められており、年度内には150程度の自治体まで、試験導入を広げることが予定されています。実際にモデル事業を行っている自治体の実施状況を例に挙げます。
【千葉県松戸市の事例】
名称 | 「すまいるすまいる事業」 |
対象 | 3歳未満の未就園児 |
利用料金 | 最初の4時間まで1時間当たり350円、それ以降は1時間当たり400円(給食の提供は別途250円) |
預かり日時 | 週1~2回の定期的な通所を想定し、月、火、木、金の9時~16時に実施 |
- 公立園の認可保育所3園で実施しており、待機児童対策で増設したプレハブの保育室を使用。
- 専任保育士が対応。
- 市のホームページに情報を掲載し、保健師や子育て支援拠点等でチラシを配布
【東京都文京区の事例】
対象 | 文京区在住で保育園・幼稚園等へ通っていない生後4か月から小学校就学前までの児童 |
利用料金 | 週1回利用 月額5,000円、週2回利用 月額8,000円 |
預かり日時 | 月曜日から金曜日の午前9時から午後5時まで(年末年始除く) |
- 認可外保育施設の空き教室を活用。区報やHPで募集したところ、開始5分で定員超えとなり100名以上の人がキャンセル待ちが発生。
- 利用者からは「料金が安く使いやすい」との声があるが、一時預かり事業との料金バランスが課題
こども誰でも通園制度の課題
こども誰でも通園制度の検討会(第4回)の資料からは、以下のような課題も挙げられています。- アレルギーなど子どもの安全をいかに確保すべきか
- 保育園に慣れるのに時間がかかる子をどのようにフォローするか
- 保育者のやりがいや一時預かりの緊張感に留意した検証が必要
- 専任の保育士配置が望ましいので、人員配置についてさらに検討する
- 本事業実施のために、保育者にどのような専門性が必要なのかさらに検討する
参考1:こども誰でも通園制度の検討会|子ども家庭庁 詳細はこちら
参考2:実施自治体一覧(令和6年1月17日時点)詳細はこちら
参考3:令和5年度モデル事業の状況調査 詳細はこちら
こども誰でも通園制度を保育士はどう考えているか?
国を挙げて進められているこども誰でも通園制度ですが、現場の保育士はどのように考えているのでしょうか。こども誰でも通園制度は必要なのか?
制度の必要性についてほいくisの読者にアンケートを行うと、以下のような結果になりました。 制度を必要だと思う人は全体の1割ほどで、「どちらかと言うと必要だと思う」という人と合わせても3割ほどでした。 その一方で、5割の人は「必要だと思わない」「どちらかと言うと必要だと思わない」と答えました。「必要ではない」と考える人の理由は以下の通りです。
- 保育現場の人員体制が整っていないから
- 安全面の管理が不十分になるから
- 保育者へ十分な処遇が与えられないから
- 利用する保護者・子どもとのコミュニケーションが不足するから
正直、今の保育現場でやるのは難しい
アンケートで「必要ではない」と答えた人も、こども誰でも通園制度が目的とする「子育てで孤立する保護者の支援」や「子どもの健全な育成」には賛成のはずです。ただ、それを「今の保育現場でやるのは難しい」と感じているのではないでしょうか。筆者も以前保育園で勤務していましたが、職員数や保育スペースの不足は常に感じていました。しかも、年を追うごとに新しい事業が始まり、職員の業務負担は増える一方でした。
「目的はわかるけど、仕事がさらに増えるのはきつい… 」と現場の保育士が考えてしまうのも、無理はないと思います。
保育士不足や保育室の狭さ、業務量の多さに対しての賃金の安さなど、現場の保育士にとっては見直してほしいことがたくさんあります。こども誰でも通園制度を成功させるためにも、まずは働きやすい職場環境の改善を優先してほしいというのが本音ではないでしょうか。
こども誰でも支援制度の動向を見守ろう
こども誰でも通園制度はモデル事業などを通して、検討の真っ最中です。現場の保育士1人1人が自分のこととして捉え、子どもにも保護者にも、そして保育士にもより良い制度になるように考えることが大切なのではないでしょうか。【関連記事】