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こども誰でも通園制度とは?いつ始まる?現状・モデル事業・現場の声 を解説

こども誰でも通園制度とは?いつ始まる?現状・モデル事業・現場の声
「こども誰でも通園制度」とは親の就労を問わず保育園を利用できる制度で、令和8年度(2026年)から全国での実施が予定されていますが一部では取り組みが始まっています。制度の具体的な内容や現在の状況や課題、アンケートから見えてきた現場の保育士が感じていることなどをご紹介します。 

こども誰でも通園制度とは? 

こども誰でも通園制度とは保護者の就労状況にかかわらず、0〜2歳児の子どもを保育園に預けることができる給付制度です。2023年6月の「こども未来戦略方針」において政府により発表されました。 

この制度の大きな目的は、家庭で育てられている0〜2歳児の良質な成育環境の整備や、孤立した育児で疲弊している保護者への支援です。 

また、こども家庭庁から示されている制度の具体的な指針は以下の通りです。 
こども誰でも支援制度とは
対象年齢は、0歳6ヶ月から3歳未満、保育所・認定こども園・幼稚園 、地域子育て支援拠点、児童発達支援センターなどで預かり、利用時間としては1人あたり「月10時間」上限としています。 

この制度が全国で実施されれば、在宅で子育てをする保護者や子どもも保育所とつながりやすくなり、保護者は子どもの発達や子育ての悩みを保育士に相談することもできます。 

また、人口減少を見据え、保育所などが就園児だけでなく、地域の子どもの育ちの拠点になることも期待されて制度が設計されています。 

参考1:こども誰でも通園制度(仮称)の本格実施を見据えた試行的事業実施の在り方に関する検討会における中間取りまとめ(案)について >>詳細はこちら 

「こども誰でも通園制度」開始までの3ステップ 

令和8年度(2026年)にこども誰でも通園制度が全国で本格的に実施されますが、その取り組みはすでに始まっています。 

STEP1 令和6年度(2024年):150程度の自治体で試験的に導入 
STEP2 令和7年度(2025年):制度化して実施する自治体を増加させる 
STEP3 令和8年度(2026年):全国の自治体において実施予定 


令和6年度は、試験的な導入を希望した自治体で通園制度を行い、その実施状況などを踏まえながらより良い制度になるように検討されています。 

こども誰でも通園制度のモデル事業と課題 

令和6年1月17日時点で全国108の自治体でモデル事業が進められており、年度内には150程度の自治体まで、試験導入を広げることが予定されています。 

実際にモデル事業を行っている自治体の実施状況を例に挙げます。 

【千葉県松戸市の事例】 

名称 「すまいるすまいる事業」 
対象 3歳未満の未就園児 
利用料金 最初の4時間まで1時間当たり350円、それ以降は1時間当たり400円(給食の提供は別途250円) 
預かり日時 週1~2回の定期的な通所を想定し、月、火、木、金の9時~16時に実施
<ポイント>
  • 公立園の認可保育所3園で実施しており、待機児童対策で増設したプレハブの保育室を使用。 
  • 専任保育士が対応。 
  • 市のホームページに情報を掲載し、保健師や子育て支援拠点等でチラシを配布 
>>松戸市すまいるすまいる事業についての詳細はこちら 

 【東京都文京区の事例】 

対象 文京区在住で保育園・幼稚園等へ通っていない生後4か月から小学校就学前までの児童 
利用料金 週1回利用    月額5,000円、週2回利用    月額8,000円
預かり日時 月曜日から金曜日の午前9時から午後5時まで(年末年始除く) 
<ポイント>
  • 認可外保育施設の空き教室を活用。区報やHPで募集したところ、開始5分で定員超えとなり100名以上の人がキャンセル待ちが発生。
  • 利用者からは「料金が安く使いやすい」との声があるが、一時預かり事業との料金バランスが課題 
>>文京区未就園児の定期的な預かりモデル事業の詳細はこちら 

こども誰でも通園制度の課題 

こども誰でも通園制度の検討会(第4回)の資料からは、以下のような課題も挙げられています。 
  • アレルギーなど子どもの安全をいかに確保すべきか 
  • 保育園に慣れるのに時間がかかる子をどのようにフォローするか 
  • 保育者のやりがいや一時預かりの緊張感に留意した検証が必要 
  • 専任の保育士配置が望ましいので、人員配置についてさらに検討する 
  • 本事業実施のために、保育者にどのような専門性が必要なのかさらに検討する 
現時点では多くの課題がある本制度ですが、モデル園の職員が日々の実践の中でより良いやり方を模索し、現場と自治体、政府が一体となって制度を前進させています。 

参考1:こども誰でも通園制度の検討会|子ども家庭庁 詳細はこちら 
参考2:実施自治体一覧(令和6年1月17日時点)詳細はこちら
参考3:令和5年度モデル事業の状況調査 詳細はこちら 

こども誰でも通園制度を保育士はどう考えているか? 

国を挙げて進められているこども誰でも通園制度ですが、現場の保育士はどのように考えているのでしょうか。 

こども誰でも通園制度は必要なのか? 

制度の必要性についてほいくisの読者にアンケートを行うと、以下のような結果になりました。 
こども誰でも通園制度の導入に関するアンケート結果の円グラフ
制度を必要だと思う人は全体の1割ほどで、「どちらかと言うと必要だと思う」という人と合わせても3割ほどでした。 その一方で、5割の人は「必要だと思わない」「どちらかと言うと必要だと思わない」と答えました。 
「必要ではない」と考える人の理由は以下の通りです。 
  • 保育現場の人員体制が整っていないから 
  • 安全面の管理が不十分になるから 
  • 保育者へ十分な処遇が与えられないから 
  • 利用する保護者・子どもとのコミュニケーションが不足するから 
ほいくisで行ったアンケートの詳細についてはこちらの記事も参考にしてみてください。

正直、今の保育現場でやるのは難しい 

アンケートで「必要ではない」と答えた人も、こども誰でも通園制度が目的とする「子育てで孤立する保護者の支援」や「子どもの健全な育成」には賛成のはずです。ただ、それを「今の保育現場でやるのは難しい」と感じているのではないでしょうか。 

筆者も以前保育園で勤務していましたが、職員数や保育スペースの不足は常に感じていました。しかも、年を追うごとに新しい事業が始まり、職員の業務負担は増える一方でした。 

「目的はわかるけど、仕事がさらに増えるのはきつい… 」と現場の保育士が考えてしまうのも、無理はないと思います。 

保育士不足や保育室の狭さ、業務量の多さに対しての賃金の安さなど、現場の保育士にとっては見直してほしいことがたくさんあります。こども誰でも通園制度を成功させるためにも、まずは働きやすい職場環境の改善を優先してほしいというのが本音ではないでしょうか。 

こども誰でも支援制度の動向を見守ろう

こども誰でも通園制度はモデル事業などを通して、検討の真っ最中です。現場の保育士1人1人が自分のこととして捉え、子どもにも保護者にも、そして保育士にもより良い制度になるように考えることが大切なのではないでしょうか。 

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織部 悟

この記事を書いた人

織部 悟

保育士歴16年のライター。都内の公立保育園に15年勤務して主任を務め、0歳~5歳児のクラス担任からフリーまで、全てのポジションを経験。1男1女の父でもあり、保育・子ども・遊び・子育てなど、豊富な経験を元にした記事をお届けします。

執筆歴・経歴等はこちら
https://gonta-web.com/

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