手作りおもちゃにもモンテッソーリ教育のアイデアをプラスしませんか?
前回のコラムでは、「日々の保育にモンテッソーリ教育のアイデアをプラスしてみませんか?」と、ご提案させていただきました。どうでしょう、みなさんやってみましたか? もし良かったら、「書いてある通りにやったのに上手くいかなかった!」というクレームも含め、感想を聞かせていただけたら嬉しいです。さて、今回は、“手作りおもちゃにもモンテッソーリ教育のアイデアを活用してみましょう”というご提案です。
いつもスタートは子どもを観察することから
法人の研修を担当していた時、「研修当日までに一人一つおもちゃを作ってくる」という事前課題を出すことがありました。こういった課題を出すと、すぐに取り掛かれるタイプの先生と、何を作ったら良いか分からず手を付けられないタイプの先生に分かれます。皆さんが子どもたちにおもちゃを作ってあげたいと思う時って、どんな時ですか? 今あるおもちゃに飽きてきているなと感じた時や、こういうものがあったら遊びが展開しそうと思った時、こういう動きをやりたいんだなと気づいた時などなど…いろいろな答えがあると思います。
これらの答えに共通する点は、「子どもを観察して感じた時」ということですよね。つまり、事前課題が出た時にすぐに取り掛かれる先生は、普段から子どもたちを「観察」することができているということになります。なかなか手を付けられない先生は、そこがちょっと苦手な場合が多いなと思います。
おもちゃを作るという課題を通して、自分の日々の保育を振り返ってほしい、自分が作ったものを子どもが喜んでくれた時の嬉しさを感じてほしいという思いで、私はこんな面倒な事前課題を出したりしていました。
モンテッソーリ教育の教具が持つ“性質の孤立化”の考え方
さて、モンテッソーリ教育のおしごとを初めて見た方は「シンプル」「素っ気ない」と感じる方もいます。ここだけの話、私も最初に見た時は「これの何が面白いんだろう?」と思ってしまいました(笑)。実際、モンテッソーリ教育専用で作られている教具はどのようなものかについて、代表的な教具で私のアイコンにもなっている“ピンクタワー”を例にご紹介します。 このピンクタワーは、10個の立方体でできている積み木のようなものです。一辺が1cmから10cmまで10段階のサイズ別に10個あり、色は全てピンク色。こんな形のおもちゃ、皆さんも見たことがありませんか? 中には10個全て色や柄が違うものや、木と布でできているもの、音が鳴るものなど、似た形のものはさまざま売られています。では、ピンクタワーはなぜすべて同じ色で同じ材質なのでしょうか。それは、モンテッソーリ教育の“性質の孤立化”という考え方を採用しているからです。子どもに感じてほしい一つの性質だけに興味が集中するよう、その他全ての要素は同じに作られているのです。ピンクタワーの目的は、“大きさの違いに気付くこと”です。だから、大きさ(サイズ)以外の「色」「形」「材質」については全て同じになっていて、そうすることで大きさの違いだけに興味を持ってもらうことができるという考え方なのです。
もちろん、玩具として売られている似たようなものでも大きさの違いは感じられると思います。しかし、他のさまざまな要素も含まれているので、大きさ以外のことにも興味が向いてしまい、それだけに集中するのが難しいということです。
目的が明確ならシンプルなものでOK
私が手作りでおしごと(おもちゃ)を作る時も、“性質の孤立化”を意識しているので「要素を絞る」「目的を明確にする」ことを大事にしています。そうすると、必然的にシンプルなものができあがります。例えば、「タッパーに穴を空けて中に何かを入れる」というおもちゃを作る時。私だったら、ただタッパーに穴を空けたものと入れるものだけをトレーにのせて用意します。それは、子どもの目と手の協応動作の発達を助けるために、目的のものを掴んで目的の場所に入れる動きをたくさんしてほしいという明確な目的で作っているからです。
一方で、例えば「食育を目的として“好き嫌いせずに食べる”ことを子どもに知らせたい」という目的だったら、タッパーの穴を動物のお口に見立てて、入れるものは魚や野菜など食べ物に見立てたものを入れるようにしても良いですよね。
要するに、目的を明確にしておもちゃを作りましょうということなんです。前者のように、あくまで“手を動かすこと”が目的だったら、わざわざ時間をかけなくても、シンプルなもので十分目的を達成できるおもちゃができるという訳です。
ネタの宝庫100円ショップ(100均)の歩き方
現在、私は、0~2歳児さんのいる園でモンテッソーリ教育を一から導入するお手伝いをしています。園で使うおしごと(おもちゃ)を用意し、環境を整えることが私のお仕事です。この月齢の子どもたちは、手を使うことが発達の課題でもあり、興味の対象でもあります。そのため、いかに子どもたちにさまざまな手の動きを経験してもらえるかということを考えておしごと(おもちゃ)作りをしています。そこで大活躍なのが、みんな大好き100円ショップ!! 何を隠そう、私の趣味の一つは「100円ショップパトロール」でして…。モンテッソーリ教育の環境を準備するために、大手100円ショップのダイソー(DAISO)、セリア(Seria)、キャンドゥ(Can Do)のそれぞれにどんなものが売っているかはだいたい把握しています。実は、保育に関係なさそうなエリアにお宝が眠っているので、入り口からすべての商品棚の間を練り歩きます。大型ショップだと、1時間は余裕で滞在してしまうんです…。
意外なものが使える!ゆかり先生いち押しの100均アイテム5選
ここからは、そんな100均ショップパトロールで見付けた、おすすめの商品をご紹介します! 0~2歳児クラスで“手を使うこと”を目的とした時に使えるものを紹介します。1.ゴルフ練習用ボール
ハイハイの子が転がして追いかけるのにもおすすめ。はじめての「落とす」おしごとにも。- 目的:「にぎる」
- 一緒に用意するもの:タッパーに丸い穴を空けたもの、ボールを入れるカゴ、トレー
2.爪楊枝ケース(プッシュ式)
カチッと音がして開いたり閉まったりするのが面白い、ボタンを押すのが好きな子のお気に入り。- 目的:「押す」
- 一緒に用意するもの:中に入れるもの、器、トレー
3.アクセサリートレー
隙間にものを入れたい子、指先を使いたい子におすすめ。深い溝なので、カード類も立ちます。- 目的:「刺す」
- 一緒に用意するもの:刺すもの(リングやコインなど薄いもの)
4.吸水コースター
吸水すると色が変わります。絵の具よりも手軽に色塗りを経験できます。筆を使いたい子にもおすすめ。- 目的:「塗る」
- 一緒に用意するもの:トレー、メイクブラシ(絵が短いので使いやすい)、水を入れる容器、お水少々
5.線香のくず取り
柄が短いので小さい子も扱いやすく、小さい器でも十分きんぎょすくいを楽しめます。- 目的:「すくう」
- 一緒に用意するもの:深めな器、お水、きんぎょ(水に浮くもの)、きんぎょを入れる器、トレー、台拭き
みなさんの保育にもプラスしてみてね
今回は、100均アイテムで作れるおもちゃのうち、1・2歳児におすすめのものを紹介させていただきました。前回のコラムでお話ししたように、3歳児以上になると興味の対象が「動き」よりも「ことば」や「かず」の方に向いていきます。子どもたちを観察して「ことば」に興味を持っているなと思ったら、存分に「ことば」に触れられるおもちゃを作ってあげてください。そのヒントは、モンテッソーリ教育にありますよ。このコラムでは、保育園や幼稚園、こども園で働く皆さんに、「モンテッソーリ教育を身近に感じてほしい」「特別なものではなくて誰にでもできるよ!」ということを知ってほしいという思いで、“モンテッソーリ教育のアイデア”をお伝えしてきました。これをきっかけに、モンテッソーリ教育って面白そう、もっと知りたい! と思う先生が増えてくれたら嬉しいです。
“子ども主体の保育をモンテッソーリ教育が助けます”が、「モンテッソーリほいくのたね」のキャッチフレーズ。このコラムが、お読みいただいたみなさんの日々の保育の助けになっていたら幸いです。
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