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明日からできる!モンテッソーリ教育の『やって見せる』のコツとは

モンテッソーリ教育の「やって見せる」を子どもに実践するゆかり先生
モンテッソーリ教師・ゆかり先生のコラム連載。今回は、明日の保育からでも実践できることとして、モンテッソーリ教育で「提示」と呼ばれる、「やって見せる」教え方について解説をしてもらいました。

明日からできるモンテッソーリ教育

環境設定をしているモンテッソーリ教師のゆかり先生
「モンテッソーリ教育をやってみよう」と思った時、何から始めようと思いますか? 多くの人は、個性的なモンテッソーリ教育の環境や、教具と呼ばれる専用の道具を「揃えなきゃ!」と考えるのではないでしょうか。

もちろん、モンテッソーリ教育は“環境”をとっても重要と考えていますので、環境が整った状態で実践できるのが理想的です。でも、「それをするにはお金も時間もかかるから諦めよう…」となりますよね。その前に、ぜひこのコラムを読んでください(笑)。

モンテッソーリ教育には教具がなくてもできることがたくさんあるんです。むしろ私が、環境よりも大事だと思っている「大人の関わり方」の一つを今回はお伝えしたいと思います。これを知るだけで、保育がちょっと楽しくなりますよ♪

『やって見せる』をやってみよう!

 
たこ焼きを移動させる幼児向けのおもちゃ
『子どもはできないのではありません。やり方を知らないだけ、見せてもらっていないだけなのです』という、マリア・モンテッソーリの言葉があります。

子どもと過ごす一日を思い浮かべてください。手を洗うのも、雑巾を絞るのも、なんだか頼りなくて手伝ってあげたくなったり、「先生やってくださ~い」と子どもに求められて、心の中では「自分でやって」と思いながらも、やってあげちゃった方が速いなと諦めるような場面はありませんか。

もちろん、発達の段階で難しいことも多くあります。でも、子どもにできないと思われることの7割が、“大人の教え方”を変えるだけでできるようになるんです(そこに、子どもサイズの道具や活動しやすい環境があれば最高)。

それが“やって見せる”という教え方です。モンテッソーリ教育では、『提示(ていじ)』と呼びます。

日常生活のさまざまな場面で、この“やって見せる”という教え方はとっても有効なんです。身支度や食事の準備、挨拶の仕方だって、この方法でやり方を知らせることで、子どもの“できた”を増やすお手伝いができます。

“やって見せる”教え方のポイント

乳幼児期の子どもたちは「模倣期」という、まねっこが上手な時期。保育士の真似をして絵本を読む姿や、お友だちがやっていることを真似して楽しむ場面も可愛いですよね。そうやって人がやっている動きを注意深く見て、見た通りに正確に真似したい、いつでも大人と同じようにやりたいと願っています。この模倣期を利用して、無理なく教える方法が“やって見せる”なんです。

では、“やって見せる”ポイントを3つご紹介します。

1.ゆっくり見せる

子どもにモンテッソーリ教育の「やって見せる」を実践するゆかり先生
大人はすでにさまざまな動きを獲得し、いつでも効率良く事を済ませたいと思っています。そんな大人の動きは、子どもには7倍速くらいで見えているそうですよ。それを見て真似すると、子どもはただ手をパタパタ動かすことしかできません。だから、ゆっくり動いて見せましょう。

2.動きを分析する“分析行動”

ただスピードを遅くすれば良い訳ではありません。 一つひとつの動きを分けて(止めて)見せます。動きを言葉に変えるとわかりやすいです。例えばペットボトルのキャップを空ける場合は、「キャップを持つ」「回す」「持つ」「回す」というような感じです。そうすると、子どもが一つひとつの動きを見て真似しやすくなります。

3.「言葉」と「動き」を別々にする

もう一つのポイントは、「聞く」と「見る」を同時に与えないということです。大人はついつい、「あぁやってこうやって…」と、説明したくなりますが、説明されたことを理解して実行するのは、小さい子どもたちにはなかなか難しいことです。「聞く」と「見る」を同時に行うのも難しいので、動きと言葉を分けてあげることで、集中して見たり聞いたりすることができます。
ワークショップで子どもと触れ合うモンテッソーリ教師のゆかり先生


やって見せる”の効果を実感したエピソード

私がモンテッソーリ教育の教師養成コースを受講し、初めて「提示」を学んだ日、保育園に戻って実践してみました。その園では、2歳半くらいになるとおやつで使う口拭きタオルを自分で濡らして絞って用意していました。

濡らしたタオルをおにぎりのように丸めてぎゅっとして、ポタポタ水を垂らしながら席まで運んでいたAちゃん。私は、「まだ難しいよね~」と思っていました。そんなAちゃんに、初めて「絞る」をやって見せてみました。すると、絞り方が確実に変わったのです。私がやった通りに、タオルを畳み、両手で持ってひねるように絞ることができるようになりました。

「私の関わり方一つで子どもの姿が変わる!」という事実を目の当たりにし、その面白さを知りました。なにか教具を作って用意した訳ではありません。日常生活の中で、“やって見せる”という教え方を実践しただけです。

子どもの「できた」を助ける

モンテッソーリ教具で遊ぶ子どもたち
この“やって見せる”という教え方を大人が習得すると、子どもにとって良い見本になることができ、結果的に子どもができることの幅が広がります。

子どもは、生まれながらに自立に向かっていますから、「一人でやりたい」「わかるようになりたい」と願っています。だから、“やって見せる”ことで、子どもが一人でできることが増え、結果的に子どもの自立を助けることになります。そして、子どもができることが増えるということは…子どもに任せられる部分が増えて、大人もちょっと楽になる(笑)。

ぜひ、一日の中で子どもが難しいと感じている部分を見つけて「やって見せる」を実践してみてください。もし見つけるのが難しければ、子どもにやって欲しいように大人がやるだけでも効果的です。上手くいったエピソードがあれば、ぜひ教えてくださいね。

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新子由香里(あらこ ゆかり)

この記事を書いた人

新子由香里(あらこ ゆかり)

専門学校卒業後、保育士として13年勤務。クラス担任はもちろん、主任保育士や人材育成部門を担当。二つ目の園でモンテッソーリ教育に出会い、日本モンテッソーリ教育綜合研究所にて3~6歳教師資格、0~3歳教師資格を取得。現在は、保育に活かせるモンテッソーリ教育をテーマにした保育士向けオンラインサロンや、モンテッソーリ教育導入支援、先生方への研修等を行っています。「モンテッソーリ教育をするのではなく、モンテッソーリになる」という言葉を理念に、子どもから学ぶことを大事にしています。

<ホームページ>
『モンテッソーリほいくのたね』
https://montessori-hoikunotane.com/

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