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研修を受けることはなぜ大切?園長視点で見た学びの重要性|保育園園長の役割と業務(3)

研修を受けることはなぜ大切?園長視点で見た学びの重要性
前回までは園外との連携や業務について中心にお話をしていましたが、今回は保育の質を考える上で必要な研修や、先生たちへの思いなどをお伝えできればと「保育の質の向上を園長の立場で考える」と題し園内の勉強会や研修会、そして外部の研修についてお話をさせていただきます。あくまで私の経験が中心になりますので参考としてください。 

先生たちに学びの機会を提供したい

園の運営をしていく中で、「先生たちに気持ちよく保育をしてほしい。」というのは園長はじめ理事長や主任など運営に関わる全ての人の願いでもあります。その中で保育の質をどう高めてくのか? というのも大きな課題の一つになります。 

一緒に働く先生たちの中には経験豊かなベテランの先生、新卒・新入職の先生、経験はあってもブランクが長い先生、免許は取ったけど他業種をしていて保育をしたことがない先生などがチームとなり園の保育目標の達成や、より良い保育の提供をしていくために園長は何ができるのか? を考え試行錯誤をしています。その一つが「学びの提供」だと考えます。 

園の中で毎日保育をする中、「講師の話を聞く」だけではなく他園の取り組みや普段関わることのできないたくさんの保育者の皆さんの声を聞いたり、熱を浴びたりするだけでも「保育っていいな」と感じる機会になってほしいと思い外部研修への提案などをしていました。 

「先生たちが行きたい研修」に行かせてあげたい気持ち、「次に挑戦して欲しいからあえて提案する研修」なども考えながらの提案でした。あまり興味のない内容の研修を勧められた時、園長や主任は色々な事にチャレンジして欲しいと思っているかもしれません。 

研修に参加してもらうためには下記のような手続きも必要になり、主任や事務等の協力も必要になります。 

研修に参加の流れ

先生たちが研修に参加するまでの流れを一例としてご紹介します。
  1. 情報の提供
  2. 参加希望者の調整
  3. 参加者登録や申し込み
  4. 勤務の調整
  5. 必要であれば法人への申請
  6. 研修当日の保育現場のフォロー
  7. 交通費・受講費の精算
  8. 研修報告の確認
そしてそこから園内研修や次の研修へ繋げていく。 

主任や園長に「この研修行きたいです!」と伝えた後、申し込みされているか? 勤務は大丈夫か? などちょっと気にしてみてください。

メールは送ったのに参加券が送られてきていない、業務が多くて対応が遅れてしまった。などということが私にも経験があり、参加する先生が声をかけてくれたことで「ギリギリ参加できた」ということもありました。 

「行かなきゃいけない」「言われたから」という場合でも行くことが決まれば学びを得るのは自分自身です。せっかく学びに出る機会を十分に活用して欲しいと思います。 

研修の特徴と注意点 

セミナーを受ける保育士

園長時代に園の先生方に参加を案内していた研修をいくつかご紹介します。園長としての選び方のポイントや受講の際の注意点も併せてご紹介します。 

行政主催の研修 

行政によっての違いはあると思いますが、3月下旬から4月上旬にかけて1年間の研修一覧が送られてきます。 

日程や時間帯、内容も多岐に渡り、経験が浅い先生から経験が長い先生、主任や園長、栄養士や調理師等様々な研修が用意されています。 

場合によっては申し込みが4月から5月に終わってしまう場合もあるので、締め切りに気をつけておかなければいけません。研修費用もほぼ無料で行われていますし、会場も交通の弁の良いところや公共施設や公立園などの場合もあります。 

 対象人数が多いため、集合研修で主に「聞く研修」である場合が多く、「実践」や「公開保育」「往還的な研究」などは募集人数が少ないという場合もありますので、どの先生に行ってもらいたいか?を園長・主任で考え声をかけることもあります。 

民間の研修会 

民間の研修会といえば、各月刊誌を出版している会社の夏の研修を中心に、バラエティー豊かな研修が目を引きます。

月刊誌を持ってきていただいた時に担当の方が、「今年の研修のコンセプト」など熱く語ってくださることもあるので、チラシとともに先生たちに伝えることもあります。また、郵送されてくる研修会の案内についても先生たちに回覧等して周知します。

民間の場合には受講料がかかるものがあり、公立の場合と私立の場合では若干違うかもしれませんが所属していた学校法人の園では、担当部署に申請し条件を満たせば受講料や交通費も支給されていました。

日曜日や祝日の研修の場合「自分の学び」とするのか「園の業務の一環とするのか」という部分も各法人、各園の取り決めがあると思いますので、ぜひ聞いてみてください。 

保育学会・大学等の研究会等 

民間の研修会とは違い、情報の入手が保育系の本やサイト、大学のHPなどの場合が多くアンテナを張っていなければ見落としてしまう協議会や研究会もあります。 

特に私は公開保育や保育実践を見せていただいた後に話し合いが持てるような研修会をよく探していました。「主体的な保育」や「ドキュメンテーションの実践」などは実際に取り入れ、実践している園を見て、実践者の先生の話を聞くことで「できるかも」という思いを持って帰ってきて、園でもやってみるという先生の姿もありました。 

今はHPやFacebookやInstagram等で発信している情報もありますので視野を広くもち、その情報を先生たちに繋げることも園長として必要だと感じました。 

キャリアアップ研修 

キャリアアップ研修は平成29年に厚生労働省によって新設された制度です。保育士のキャリアや処遇改善がスムーズに進むことをも目指して導入されました。6つの分野とマネジメントからなる研修は行政での導入も進み無償で受けることができる研修と、研修費が必要な研修があります。 

同じ分野でも主催しているところや講師によって内容も変わってくるので、私としては、「この先生のお話が聞きたい」という視点で選ぶと面白いと感じています。集合研修やZoomなどのオンラインなど様々な形があるので、選ぶときの参考にしてください。 

園内研修や勉強会 

園内での研修を考えるときに私は2つの側面から組み立てていました。1つ目は、それぞれ先生たちが学んできた研修内容を園全体にシェアするための勉強会。そしてもう一つは、「今、この時に必要な学び」です。 

保護者からのクレーム、子どもの怪我、世間を騒がせている保育関連のニュース。そこから私たちは何を学んでいくのか?というような内容で勉強会や研修会を組み立てていました。 

先生たちの様子から、「保育観がすれ違っている」「環境設定や時間の使い方でちょっとギクシャクしている」そんな雰囲気を感じ取った時に、話し合いではなく、研修会や勉強会とし本や過去の講演会などの話から研修資料を作ることもあります。 

例えば「保育でよく使う曖昧な言葉」という研修をした時には「寄り添う」「丁寧な保育」などよく使う言葉ですが実は保育士一人一人の捉え方や基準が違うという点の気づき、誰もがわかりやすい言葉で伝えることで円滑なコミュニケーションにつながるという結論を導き出しました。 

「主体的な保育」「ドキュメンテーション」「不適切保育とは?」など今は様々な企業が有名講師の動画も無料配信しているのでテーマを絞って利用するのも一つの方法です。 

ほいくisの無料配信動画も利用されるといいでしょう。

研修・勉強会後の取り組み 

研修会に参加するというのは、そこでの学びを持ち帰り園でシェアをし保育の質を高めてく、という目的ももちろんあります。 

そのために、研修報告を提出したり、報告会をしたり、受講者が講師となり勉強会を行う場合も多いです。それと同じくらい感じて欲しいのは「保育って楽しいな」「まだまだ知らないことあるな」「自分の保育に生かしてみよう」という思いを研修で受け取ってくる。ということです。 

私は「熱を浴びる」という言葉をよく使います。園の中では気づかなかったことが研修で外に出ると感じることがある。その部分を大切にしていただきたいと思います。 

保育の質の向上は研修に行ったり勉強会に参加したりするだけでは向上しません。保育を提供する先生たちが主体的に園の課題に気付き取り組んだり、自分を振り返ったり、研修会で熱を浴びて元気になったりすることで叶うのかもしれません。 

「研修」「勉強会」という機会を利用して先生たちにもっと保育を好きになってもらう。もっと元気になってもらう。やりたい保育を見つけてもらう。その姿を見ることが園長をしていた時の喜びでした。 

ユダヤ人の諺に「学びは誰からも略奪されない」というものがあると聞いたことがあります。保育について考えたり悩んだり学ぶことは自分の中に蓄積されて、自分の保育、自分自身を作り上げていく一つの方法だと私は思います。ぜひ、研修・勉強会を活用してください。 

園長として“研修を受講すること”への素直な想い 

園長の立場で「どの先生にどの研修に出てもらいたいか?」という思いと先生たちの「私はこの研修に行きたい」という思いがすれ違うこともありました。「障がい児保育は前に受けたから」や「食育にはあまり興味がなくて」などの声も聞こえてきます。 

講師によって視点が違ったり、取り上げる内容が違ったりしますし、今は講習型の研修から往還型(学んだことを園で実践しその実践報告をまた学びの中で発表するなど)やワークショップ型など私たち保育士の世界でも「主体的・対話的で深い学び」が広がっています。 

時代や生活、保護者の取り巻く環境などが目まぐるしく変わる中、保育内容や子どもや保護者への対応も柔軟性が求められるからこそ学びに出てみましょう。いまではスマホやパソコンで受講でいるオンラインの研修というのも増えています。 

「学び続けること」は私も含め経験豊かで管理者である園長や主任にも同じこととが言えると私は思います。園の保育の質の向上を考えるなら、園長含め全ての職員の楽しい学びを! を提案します。 

次回は、外国籍の子どもたちや保護者対応についての事例を交えたお話しをお送りします。お楽しみに! 
 
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Tommy(トミー)

この記事を書いた人

Tommy(トミー)

公立保育園・児童養護施設・民間私立認可保育園等での保育歴25年、園長・主任経験あり。、絵本専門士、心療カウンセラー、認定ファシリテーター講師。現在なごや環境大学SDGsアソシエイト講師養成講座受講中。保育に関わる全ての学びを楽しんでいます。任意団体「チャイルドケアプラス」代表。外国籍の子どもたちの日本語・学習支援や外部から保育園や先生たちを支える活動を行っています。

<チャイルドケアプラス>
https://childcareplusnagoy.wixsite.com/childcare

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