保育士給与の全国平均
まずは、厚生労働省が発表した最新の統計データの数値から、保育士の平均給与を見ていきましょう。2024年に厚生労働省から公表された2023年度の保育士の平均給与は、月額271,400円でした。
ただし、これらの金額は「額面」であり、実際に受け取るのはここから税金や社会保険料が差し引かれた「手取り額」になります。
税金や社会保険料の金額は、給与の金額や扶養家族の有無などによって異なるため、単純に額面の何%といった形で一律に計算はできません。
出典:厚生労働省「令和5年度賃金構造基本統計調査/e-Stat」>>詳細はこちら しかも、上記は、統計的な全国の平均値ということで、年収の高い役職ありの人の給与、経験年数の長い人、短い人などさまざまな条件が混在しています。「自分のもらっている給与と違う!」と違和感がある場合は、これが理由かもしれません。
そこで今回は、ほいくisのお仕事サイト「ほいくisお仕事探し」で実際に紹介されている求人から、リアルな都道府県別の保育士の給与を紹介します。
実際の求人応募の給与ランキング
ここでは、ほいくisの姉妹サイト「ほいくisお仕事探し」で実際に掲載されている最低月給の平均を都道府県別にランキング形式でご紹介します。順位 | 都道府県 | 平均最低月給 |
---|---|---|
1位 | 東京都 | 230,513円 |
2位 | 千葉県 | 225,039円 |
3位 | 神奈川県 | 219,716円 |
4位 | 埼玉県 | 215,068円 |
5位 | 大阪府 | 211,408円 |
6位 | 奈良県 | 208,761円 |
7位 | 兵庫県 | 205,278円 |
8位 | 愛知県 | 202,196円 |
9位 | 福岡県 | 200,181円 |
10位 | 栃木県 | 199,688円 |
11位 | 滋賀県 | 198,327円 |
12位 | 茨城県 | 197,247円 |
13位 | 京都府 | 196,783円 |
14位 | 岐阜県 | 195,693円 |
15位 | 三重県 | 195,602円 |
16位 | 山梨県 | 194,623円 |
17位 | 北海道 | 194,623円 |
18位 | 広島県 | 193,051円 |
19位 | 長崎県 | 192,761円 |
20位 | 静岡県 | 192,430円 |
21位 | 鳥取県 | 191,602円 |
22位 | 岡山県 | 191,372円 |
23位 | 和歌山県 | 190,900円 |
24位 | 宮崎県 | 190,744円 |
25位 | 長野県 | 190,667円 |
26位 | 沖縄県 | 190,625円 |
27位 | 佐賀県 | 189,659円 |
28位 | 鹿児島県 | 189,432円 |
29位 | 熊本県 | 189,204円 |
30位 | 大分県 | 189,154円 |
31位 | 富山県 | 188,857円 |
32位 | 石川県 | 187,695円 |
33位 | 群馬県 | 187,475円 |
34位 | 徳島県 | 187,459円 |
35位 | 福井県 | 186,788円 |
36位 | 山口県 | 186,362円 |
37位 | 宮城県 | 186,169円 |
38位 | 香川県 | 185,584円 |
39位 | 島根県 | 184,419円 |
40位 | 愛媛県 | 183,212円 |
41位 | 福島県 | 181,223円 |
42位 | 新潟県 | 179,459円 |
43位 | 青森県 | 178,749円 |
44位 | 山形県 | 178,687円 |
45位 | 高知県 | 177,720円 |
46位 | 秋田県 | 172,256円 |
47位 | 岩手県 | 171,459円 |
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ランキングから見える特徴
このランキングから見えてくる特徴は、地域による給与格差です。トップの東京都と最下位の岩手県では、約6万円もの差があります。これは、単に物価の違いだけでなく、保育士の需要供給バランスや自治体ごとの政策の違いも影響しています。 都市部では、保育士の需要に応じて高給与が設定されている一方、地方では給与が低く抑えられる傾向があるでしょう。
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給与の違いはどこから生まれる?
都道府県別に見た保育士の最低月給ランキングは、地域ごとの給与差が明確に表れていますが、これはあくまでも統計上の平均値であり、実際の給与とは異なる場合があります。しかし、この給与の差は、裏を返せばスキルやキャリアアップのヒントにもなるでしょう。 ここでは、給与の違いが生じる理由や今後の給与アップにつながる方法を解説します。
理由①経験値による違い
経験値とは単に保育士としての勤務年数だけでなく、学歴や前職の経歴、役職なども含まれます。 まず、学歴は保育士の給与に影響を与える要因の一つです。たとえば、短大や専門学校を卒業した保育士と四年制大学や大学院を卒業した保育士とでは、初任給が異なる場合があります。また、主任保育士としての経験、教育や福祉の分野での経験を持つ人は、子どもの成長に関する専門知識を活かせるため、即戦力として評価されやすいでしょう。保育園によっては、前職で得たスキルや知識が現場で役立つことを評価し、給与に反映することがあります。
こうして保育士の給与は、経験値が重視される傾向があります。長くキャリアを積み、専門知識やスキルを磨くことが最終的には安定した収入につながるといえるでしょう。
理由②手当による違い
まず、自治体や施設ごとに導入されている「加算制度」は、保育士の給与に大きく影響します。国や自治体の補助金に基づいて給与に加算されるため、地域によっては給与に差が生じることもあるでしょう。また、保育士はシフト制の勤務が多いため、「シフト手当」や「早出手当」が支給されることがあります。これらの手当は地域や保育園によって支給額が異なるため、確認が必要です。
さらに、主任保育士やリーダー的な役割を担う保育士に対して支給される「役付き手当」、保育士の労働環境や待遇改善を目的とした「処遇改善手当」、特定の条件を満たした保育士に支給される「扶養手当」や「住宅手当」などもあります。
保育士の給与は基本給だけでなく、さまざまな手当が別途支給されるため、実際の月給は基本給よりも高くなることが一般的です。
理由③運営形態の違い
保育施設が公立か私立かによって、保育士の給与水準が異なる場合があります。公立の保育園は自治体が運営しているため、給与は公務員の給与体系に準じることがほとんどです。このため、公立保育士の給与は安定しており、定期的な昇給や退職金制度が充実しているといえます。
一方、私立の保育園では、運営する法人や団体の方針によって給与体系が異なります。地域や園の規模によっても給与に幅が出やすく、一般的には公立よりもやや低めの給与が設定されることもあるでしょう。
安定した給与を望むのであれば、公立や認可保育園が有利です。しかし、私立や認可外保育園でも運営方針によっては、高い給与や柔軟な働き方が期待できる場合もあります。
一般的には、公立と私立との間に大幅な給与の差はありませんが、長く働いて役職を得た場合は公立保育士の方が大幅な給与アップを見込めるでしょう。
理由④地域差による違い
保育士の給与に地域差が生じる理由の一つに、各地域の最低賃金があります。都道府県ごとに最低賃金が設定されており、特に都市部と地方ではこの最低賃金の差が顕著です。例えば、東京都の最低賃金は1,163円。上記ランキングで47位だった岩手県だと952円ですので、地方よりも200円以上高く設定されているため、保育士の給与もそれに準じて高くなる傾向があります。 (執筆時点での数値)
また、保育士の給与は、地域ごとの労働需要によって変わる場合があります。
都市部では保育施設の数が多く、保育士の需要も高いことから、人材を確保するために給与を高めに設定する傾向があるでしょう。特に、待機児童が多い地域では保育士不足が深刻なため、求人の際に給与を上乗せして募集するケースもあります。
一方で保育施設の数が限られており、労働需要が都市部ほど高くない地域では、給与水準が低めに設定されることがあります。こうした地域差における需要の違いも、保育士の給与に影響しているといえるでしょう。
理由⑤性別による違い
保育士は女性が多く活躍する職種として知られていますが、性別によって給与やポジション、働き方に違いが生じることも少なくありません。特に、女性保育士よりも男性保育士の方が主任保育士や管理職などの上位ポジションに就く割合が高い傾向があります。そのため、男性保育士の方が高い給与を得やすくなるといえます。
女性保育士の多くは結婚や出産を経て、パートタイムや時短勤務に切り替えるケースが多く見られます。こうしたライフステージの変化によって、女性保育士はフルタイムで働く期間が短くなるため、給与も比例して下がる傾向があるでしょう。
一方で、男性保育士はフルタイムで働き続けるケースが多く、男性だから給与が高いというわけではなく、昇給や昇格のチャンスが女性よりも多くなることが、給与差に影響を与えているといえます。
給与アップを目指すためのアドバイス
保育士として働く中で給与を上げるためには、工夫や努力が必要です。ここでは、給与アップを目指すためのアドバイスをご紹介します。スキルアップや資格取得
保育士が給与アップを目指すためには、日常業務だけでなく、積極的にさまざまな研修を受けてスキルを磨くことも必要です。さらに、スキルアップに加えて、発達支援系などの専門資格を取得するのもよいでしょう。たとえば、発達障害児支援や児童福祉に関連する資格を取得することで、発達支援に強い保育士として特別支援を必要とする子どもたちが多く通う施設や、特化型の保育園などで重宝されます。
保育士資格以外にも子ども一人ひとりに合わせた支援ができる資格を持つことで、現場での活躍の幅が広がり、給与面でも評価されやすくなるでしょう。
保育士宿舎借り上げ支援事業による補助
保育士宿舎借り上げ支援事業とは、自治体が一定額の家賃を補助することで、保育士の家賃負担を軽減し、居住環境をサポートするものです。補助の上限額は地域によって異なりますが、多くの地域では月額8万円程度の家賃補助を受けることができます。しかし、この制度は、採用された日から起算して8年以内の常勤保育士が対象です。この期間が過ぎれば退去もしくは自己負担となります。さらに、同じ自治体内での転職だと制度が適用されないこともあるため、その場合は働く環境を変えることも検討しましょう。
自分の市場価値を知る
自分の市場価値を理解することで、自分が現在どのような評価を受けているのか、また、今後どのようなスキルや経験を積むべきかが明確になります。この評価を知る手段としておすすめなのは、転職エージェントの利用です。第三者目線での客観的な評価を受けることにより、自分では気づかない強みや改善点を発見できるでしょう。
また、転職エージェントは求人市場の動向を熟知しているため、現在のニーズに合わせたアドバイスが期待できます。たとえば、エージェントからの評価をもとに、転職のタイミングを図る、さらなるスキルアップのための研修や資格取得を考えるなどの計画が立てやすくなるでしょう。
自分の市場価値を知り自分らしい働き方を
保育士の給与は都道府県別で異なりますが、実際の求人応募からわかるリアルな月給や手当の違いを知ることで、将来のキャリア選択がより明確になるでしょう。まずは、自分の市場価値を把握して、より良い条件で働くための一歩を踏み出してみてくださいね。
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